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11話

 

 なんだよ精霊のスキルを使用できるとか、おかしいだろ。今後は更に強い精霊を手に入れるだろうし、それに付随して有用なスキルも使えるようになるかもしれない。俺は童貞とかいうスキルのせいで碌にレベルも上がらないのに毬だけズルいではないか。交換してほしい。


 この調子なら美波のスキルも凄いことになっていそうだ。やはりレイ。俺の仲間はレイただ一人だ。


 そう思いながら俺は心の友の元へと歩いていく。


「あ、コウいいところに」


 そう話しかけられた途端、俺は踵を返して美波の元へ歩いていく。


 これはだめなやつだ。直感的にそう思った。


「ねぇ待ってよ!なんで逃げるのさ」

「どうせお前も俺を置いて有用なスキルを手に入れるんだろ!この裏切り者!」


「えぇ、なになにどういうこと」

「さっき毬が超強いスキルを手に入れたんだ。俺は通常スキルしか手に入れることができなかったのに。どうせお前もそうなんだろ!」


「超強いかはわからないけど、コウの言う通り【技能:剣士見習い】のスキルをとったよ」

「なんだ。やはりお前は俺の味方じゃないか。それはなかなか強いスキルだぞ。一段階でもそれなりに強くなるが、特化させていくと最終的には大剣豪になれるんだ。そこまで行くと壁とか海もすっぱり切れるようになるぞ」


 レイが取得したスキルはゲーム内でもごく一般的なもの。そうとわかるや否や、態度を一変させて応対をする。


「急に優しくなるんだ。それにしても海をねぇ…」


「確かに馬鹿げた技能だが、そのスキルは剣士系のキャラを作るなら必須と言っていい強さをを誇る」


「技能だけで壁や海を切れるなら、技スキルってもしかしていらない子だったりする?」


「そんなことはない。確かに一部のスキルは技能スキルの取得によって腐ることもあるが、技スキルには本来できないことを可能にするスキルも多い。慣れないうちはお勧めしないというだけで、空中ジャンプとかできるようになるぞ。強さは想像に難くないだろ?」


「へぇ、でもコウが言っているのは特殊な強いスキルでしょ?技能の取得で腐るようなスキルって存在価値あるのかな?」


「スキルの取得に掛かるポイントは一律といっても、特化するのは別だ。ものによって消費量も変わる。例えば、リンゴを一つ買いに行っただけなのに、お中元のフルーツ詰め合わせセットを買うやつは少ないだろ?そういうことだ」


「ごめんあんまりピンとこなかった」

「今のは俺のたとえが悪かった」


「例えば


 俺が分かりやすいたとえを言おうとしたとき、声を遮られる。


「いや、それはいいんだけどさ、技能スキルの次に出てきたスキルが問題なのさ」


 おい、またこのパターンかよ。絶対ろくでもないスキルが現れたんだろ。


「技スキル…なのかな?【セイントセイバー】っていうのが出たんだけど」


 なにそれ強そう。ゲームの時にはなかったぞ


「これって強いのかな?」


「……あー、うん。取り敢えず、それをゲーム時代で取得した人はいなかったはずなんだけど、どんな効果だ?ていうか取得条件ってなに?」


「えっと、要約すると【セイントセイバー】聖なる力を宿した剣で相手を切りつける。攻撃力と魔法攻撃力を足した値×200パーセントで相手にダメージを与える。CTは…80秒だってさ」


「いや、200パーセントって…上昇値バグってんな」


「あ、続きあった。えっと、職業【勇者】を取得しました……」


 へ?ゆうしゃ?ユウシャ?なにその職業?


 勇者って物語とかで魔王を倒すとされるあの勇者?

 それが職業?


 いやいや、ないない。こいつはある意味勇者だが、世界を救うだとかそんな…ないよね?


「やったよコウ!僕も職業を手に入れたよ!」

「あぁうんよかったね」

「さっきと対応違くない?」


 職業には様々な特殊効果が付属する。その効果はまちまちであるが、上位職業である程に有用なスキルを所有していることが多い。

 ならばこの勇者のパッシブはどうだろうか?いや、パッシブだけではない。勇者が取得できるスキルはどれほど強力なことか。

 俺の童貞と比べて嫉妬しても仕方ないだろ。


「それで、取得条件はなんだったんだ?」

「えっとね。一つは剣聖スキルを所持している事。」

「まぁ普通だな」

「二つ目がパーティーに神話級以上の生物がいる事」

「フェンリル…」

「もう一つあるんだけど、文字化けしてて読めないや」

「おい、ここまで来てお預けかよ」


 条件がそれだけなら俺も勇者になれたのに…


「あ、セイントセイバーって特化したら補正値50も上がるんだ。」

「は?200%でもおかしいのに250?」

「みたいだね」


 このスキルのやばいところは物理攻撃と魔法攻撃の数値を足す点だ。単純に数が大きくなるだけではなく、物理、魔法、どちらのアタッカーになるとしても重宝し、何より両方のステータスを同じように育てる両刀タイプが現実的になる。


 まぁ、CTが80秒なら連発は出来ないだろうし、バランスは取れて…ないけど許せるレベルか。


「あ、スキルポイント無くなっちゃった」

「今回はこれで終わりだな…じゃあ後でレイの剣を買いに行くか」

 酷い疲れを感じながら、空中ジャンプしたかったなぁ。と呟くレイを置いて美波の元へ向かう。


「あら、良いところに来たわね」


 照らし合わせたかのように俺が近づくたび言われるセリフ。

 先の二人が主人公の如く超強いスキルを手に入れていた為か、その言葉を聞くと眩暈がする。


「うん。で、お前はどんなチート能力を手に入れたんだ」

「チート?」

「ゲーム用語だ。気にしなくて良い」


 訝しむようなを表情したまま、美波は俺にスキルの説明をする。


「その、【刀剣召喚:(しずく)】というのを手に入れたのだけど」


「知らん」

「無能ね」


 知らないものは知らないのでそう答えるしかないのだが。刀剣召喚ってなんだよ。しらねぇよ。ゲーム開発者に聞け。


「名前から察するに雫っていう剣か刀を召喚するんだろ?フォレストサーペントと戦った時も目の前に剣が現れたって言ってたから、その一種じゃねぇか?」


「そう言う事だったのね」


 まぁ、何でスキル発動が発声に頼らないのかは分からないのだが。SAMURAIという名前通りふざけた職業だ。


「で、それは説明になんて書いているんだ?」


「妖刀 雫を召喚する。使用中は1秒経過ごとに100%のMPを消費するらしいわ」


 いいぃやピーキーすぎないか?


「取り敢えず特化させてみろ。MP消費が減るかもしれん」


 それを聞くと美波はパネルを操作し始める。いつもこう素直なら良いのだが。


「1.1秒経過ごとに100%に変わったわよ」


 そっちかぁ。でも1.1秒後にMPが空になる事は確定なんだよな。そっちを軽減して欲しか……


 いや、()()ならばそれまでに使用を止めればMPは減らないんじゃないか?


 SAMURAIのスキルツリーにこれからも刀剣召喚スキルが出て、それのスキルが雫と同じようにMPが減るのならば、戦闘中に何度も武器を切り替える戦法を想定しているのかもしれない。


「美波の現在所持しているスキルと効果を教えてくれ」


「蛇と戦う時に使ったものしかないわよ?【刀剣召喚:太初(たいしょ)】効果は使用者と共に成長する。としか書かれていないの」


 いきなり予想が外れたぞ。

 MP消費どこに行ったんだよ。だがまぁ、1秒しか使えないのにボスモンスターと渡り合えるわけがないか。


「私は鞠の様に沢山のモンスターを倒していないからレベルは低いわ。スキルポイントもこれで最後よ」


 そう言って美波は笑いながらパネルに指を伸ばす。


「【刀剣召喚:(れき)】これも1秒でMPが全てなくなるのね。使い勝手が悪いわ」


 そう呟いた美波は邪悪な笑みをうかべていた。



「さてと、これで一応全員分のスキルが取得できたな」


「じゃあ次は僕の武器を買いに行くんだよね!」


 鞠とスキルの見せ合いをしていたレイが目を輝かせながら俺に詰め寄ってくる。


「どれだけ有用な職業やスキルを持っていても結局、剣を持っていなければ唯の雑魚だからな」

「最ザコ候補さんはよう吠えるなぁ?」

「小さい男ね」


 いや、ほんと。お前らも童貞スキルだけ渡されてみろ。俺と同じような気持ちになるから。


「大丈夫!剣さえ手に入れれば敵なんて僕が蹴散らしてあげるよ!コウはヒーラーでしょ?戦わなくて良いんだよ?」


「優しさに見せた言葉の暴力が刺さる刺さる」

「俺もメイスがあれば戦うからな!」

「あれ?コウも武器を買うのかい?高い宿に泊まったからお金ないんじゃないかな」


 ヤッベ…ワスレテタ……


「コウらしいなぁ?お金の使い方教えたろかぁ?」


 ハンバーガーを爆買いした奴に言われたくはないが、仕方ない。メイスがないと武器補正が貰えないが、こいつらの強さならここら辺の敵で遅れを取らないだろう。ヒールは最悪なくても良い。



 ◆◇◆◇◆


「いやだよぉぉ!」

「それしかないから我慢しろ!金がないから俺のメイスを諦めて買ってやったんだ。嫌ならモンスターの解体用に使うから俺に寄越せ!」

「この世界のモンスターは倒したらアイテムを残して消えちゃうから解体とかしないじゃないか!」


 いやだいやだと言いながら、絶対に武器を手放そうとしないレイは俺からその武器を庇うように背中を向ける。


「何が気に食わないっていうんだ!」

「ナイフだからだよ!」


 ナイフの何が気に食わないのか。軽くて安い。取り回しも良く、使用するのに筋肉も必要ないパーフェクトウェポンだぞ。


「仕方がねぇだろ!魔法伝導率が高くて剣としても使える金属は高いんだ!あのロングソードの値段見たか!金貨1枚だ!日本円で100万円だぞ?」

「でも僕は勇者だよ⁉︎嫌でしょ?ナイフ一本で魔王に飛びかかる勇者見たくないでしょ⁉︎」

「バッカお前、綺麗事だけじゃ魔王討伐なんて夢のまた夢なんだよ」


 なまじファンタジーの知識がある分、こうなった時、レイの面倒さは美波の比ではない


「だからってこんなのあんまりだよ」



「取り敢えず鞠のトリスバーガーを食い漁りながら口論すんのやめてくれへん?」


「とにかく明日は割のいいクエストを受けるからね!コウも参加だよ!」

「わーってるよ!」








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