最後のひとくち
いつか来ると感じていた。
その日が今日だと。
最後に、と取っておいたおかゆ。
一口、食べる。
あの時に出会えた奇跡を思い出す。
二口、食べる。
逝ってしまった愛しい人を思い出す。
そして、最後のひとくち。
私だけしかいない、取り残された部屋。
私が知る人は、誰もいなかった。
私は孤独という寂しさすら感じなくなっていた。
ただ一瞬、流れ星のような一筋の人生。
世界が生きた証も終わり。
思いを馳せると胸が高鳴る。
走馬灯のように記憶に残る歴史が駆け巡った。
口に含んだおかゆが無くなったら、会いに行こう。
そして伝えよう。
ただいま、と。
最後は思い残す事なく。
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