初春の雨
初春の雨に
雨粒がいくつもいくつも水たまりに落ちて
いくつものいくつもの円を作り
それらが広がって別な円の中に円を作ったり
重なり合ったり
そんななんでもないことを私は
眺めている
杉の木が水をたっぷりとはらんだ枝を
天からの清めの式のように
目覚めた大地に
飛沫の洗礼を授ける
桜の蕾の先にぶら下がる雫がきらりと光る
一日がぼんやりと
雨になって水たまりを濁していく
空を映すこともせずに
乱れてかき消されていく空
不思議な安らぎは
渇いた胸の奥を潤す
ピンク色の思い出
雨の中 濡れながら
ゆるゆると紐とかれていく
霞がうっすらと
眠りから覚めたばかりの街を
愛おしそうに包み込む