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教科書見せて戦争【後攻】

【登場人物】


◆御勅使 美波(みだい みなみ)◆

高1。身長148センチ。背の高い男子に威圧的な態度をとる女子。赤坂君が好き。

◆赤坂 大(あかさか だい)◆

高1。身長148センチ。超ネガティブ思考の男子。御勅使さんが好きになった。

 秋雨前線の影響で毎日のように雨が続いている中、1週間ぶりにお日様を眺めることができた10月中旬の水曜日。釜無高校1年3組の《御勅使(みだい) 美波(みなみ)》はこの日の午前中、先生の一言によって突如クラス内で沸き起こったプチパニックを他人事のように眺めていた。そう、私のことだ。



「おーい、この時間は国語(総合)に変更だって昨日のホームルームで言ったじゃないか! 何で忘れてんだよ!」


 3組の担任で国語担当の西八幡先生から半分諦めにも似た怒号が飛んだ。というのも昨日の帰りのショートホームルームで、明日の数学Ⅰ担当の先生が研修のためお休みなので代わりに国語の授業に変更……という連絡があった……らしい。


 なぜ「らしい」なんて言い方をしているのか? それはこの連絡がショートホームルームの最後の最後にあったそうだ。それって……もうみんな帰ることしか頭にない時間だよ! 当然私も部活に行く準備をしていたので、そんな話を聞いているワケがない……それはそのタイミングで言ってきた先生が悪い! おかげで3組がプチパニックになっているけど、私には全く関係のない話だ。なぜなら……


 私は、教科書を持ち帰らない……いわゆる「置き勉」派だ!


 だって、私はいつも部活(陸上部)が終わってから走って帰るんだよ! 制服や弁当箱を背負うだけでも荷物が邪魔になってしまうのに、教科書なんか持って帰れるワケないじゃん! たまにトレーニングの一環で負荷をかけるため、ウエイトの代わりに教科書を持って帰ることがあるけど……。

 そんなワケで突然授業の変更があっても全然気にならないのだ! それよりも私が気になるのは……


 私の右隣にいる《赤坂(あかさか) (だい)》君が教科書を忘れたか否か……ということだ!


「何人忘れたんだ? 忘れたヤツは手を挙げろ……えぇっ! そんなにいるのか! しょーがねぇなぁ、じゃあ……」


 先生が教科書を忘れた人数を数えだした。赤坂君は手を……挙げている! やったぁ! だがまだ安心できない。先生の「あの言葉」を聞くまでは……


「忘れたヤツは隣の人に見せてもらいなさい!」


 よっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ心の中でガッツポーーズ!!






【開戦】






 これだよ! この言葉を待っていた!


 私の片思いの相手、赤坂君は普段忘れ物をすることがほとんどない。強いて言えば1学期のとき1度だけお弁当を忘れたくらいだ。

 そんな赤坂君が教科書を忘れた! 赤坂君は右隣の席、そして……私は教科書を持っている(正しくは教科書を持ち帰らない)!


 この条件がそろった……と、いうことは



 ――赤坂君と席をくっつけて同じ教科書で授業が受けられる!!



 いやぁああああああああああああああああああああああああああああああん!! もぉ~これって堂々とイチャイチャできるってやつぅううううううううううう!?


 ――千載一遇のチャンスじゃん!


 さーて、では机の中から教科書を出して……赤坂君を誘えばいいんだ。私は机の中に押し込まれた教科書を引っ張り出した。


 ええっと……国語総合の教科書は……



 あ……あれ?



 あれ?



 あ……れ?


 あれ? あれ……あれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれぇええええええええええええええええええええええええええええええええ!?



 おっかしいなぁ……見当たらないんだけど……



 えっ! ちょっと待って待って?



 無い!? そんなバカな?



 えっ……誰か私の教科書盗んだ? 自慢じゃないけど私の教科書には重要部分にメモとかアンダーラインとか一切してない新品同様だから盗っても何の役にも立たないんですけど!? (確かに自慢にならない)


 まさか私が学校から持ち出した? そんなことあるワケ…………あぁっ!!


 そういや一昨日の放課後、雨で部活中止だったから図書室で遊たちと勉強会したんだっけ!


 私の親友《玉幡(たまはた) (ゆう)》はああ見えてまぁまぁ頭が良い。甲州弁でしかしゃべらないヤツだから日本語知らないのでは!? と思いつつ実は国語の成績も良い。そこで中間テストも近いし遊を中心にみんなで勉強会をすることに……で、終わってから教室戻るのめんどくさいからと……そのまま家に帰って……


 うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ私はバカかぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああこんなチャンスを逃してしまうなんてぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!


 私は右隣の赤坂君の方を見た。



 ――!?



 うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああ! めっちゃ期待した目でこっちを見てるぅううううううううううううううううう!!


 それはもう拾ってくれとこっちを見ている捨て猫のような目だ! たっ……確かにさっき「忘れたヤツ」って聞かれたときに手を挙げなかったけどさぁ! そのときは持ってるって思ってたんだもんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ!


 私は指で×印をつくると小声でこう言った。


「ごめん、赤坂君……私も忘れたみたい」


 すると赤坂君はまるでこの世が終わるかのような絶望的な顔をして


「えっ、あっ……こっちもごめん」


 ううん、こっちこそごめんね赤坂君……そして、




 ――さようなら千載一遇のチャンス。




 さて困った……これは非常事態だ!


 右隣の赤坂君が教科書を持っていないとなると……必然的に左隣の人間から見せてもらうということになるのだが……

 正直、コイツからは見せてもらいたくない! っていうか、コイツに教科書を忘れたことがバレたくない!


「あれぇー? 御勅使ぃー、もしかして教科書忘れたのかぁー!?」


 うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! コイツにだけは知られたくなかったぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!


 左隣の席に座るのは《高砂(たかすな) (みのる)》。体育祭では私と同じクラス対抗リレーのメンバーだったが……


 私はコイツが嫌いだ! よく「好きの裏返し」とかいう言葉があるが、私はコイツに対してガチでそんな感情はない!

 コイツは身長が165センチくらい……正直自分だってビミョーなくせに私の低身長を執拗にイジッてくる。そんな高砂が完全にマウントを取ったような顔で 


「しょーがねぇなー、じゃあ教科書見せてやろうかぁ? あっでも御勅使の目線に合わせるんだったら(教科書を)床に置かなきゃダメかぁー」


 私はゴキブリじゃねぇぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおお! オマエから教科書見せてもらうくらいなら次の中間テストで赤点取って留年してやるぅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!


 いけないいけない! コイツの挑発に乗って反応すると付け上がるだけなので、目線を合わせないように無視した……コイツには塩対応が一番だ。



 というワケで……詰んだ。



 左右の席はムリだ。かと言って前後から借りるのも気が引ける……っていうか前の席の千塚さん、隣の大垈君と机をくっつけてんじゃん! 《大垈(おおぬた) 竜地(りゅうじ)》君は赤坂君の親友だ。あーあ、赤坂君もこのくらい積極性があればいいんだけどなぁー。

 そういえば赤坂君は? あっ……遊に見せてもらっているみたいだ。まぁ遊だったら大丈夫か。(アイツ)じゃ赤坂君に対して「無害」だからなぁ……でも他の女子と机を合わせられるのは気分が良くないなぁって……あれ?


 ――私、もしかして今「嫉妬」してた?


「はい、じゃあいいかー全員教科書見られるかー? それじゃ83ページ開いてー」


 うわぁ! 人の心配なんかしているヒマはないんだった! 私はどうすりゃいいんだぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!?


 最悪、高砂に見せてもら……いやイヤ嫌っ! それはダメ。絶対。私にとってその行為は人間をやめるかどうかのレベルだ。

 仕方ない、こうなったら先生に見つからないように……教科書を持っている(てい)で1時間やり過ごそう。まぁどうせ私のようなバカは教科書見ても見なくてもあまり変わらないし……そのとき


 〝トントンッ〟


 私の背中に何か硬いものが当たった。振り向くと教科書を持った手を突き出している子が……《西条(さいじょう) (あや)》ちゃん、私や遊の友だちだ。


「美波、使っていいよ」


 彩が私に教科書を貸してくれるようだ。


「えっ、何で?」


 彩は見た目がギャルっぽくて、勉強していなさそうに見えるが実はとても頭が良い子だ。1学期も中間と期末、いずれも成績上位者に名前を連ねている。

 なので教科書は私の何倍も必要だろう。すると彩は少し顔を赤らめて……


「美波…………察して!」


 ――え?


 私は彩の右隣を見た。そこに座るのは《押原(おしはら) (けい)》君……彩の「彼氏」だ。押原君は教科書を持っている…………あっ!


 そっかぁ! 彩は押原君と机をくっつけて同じ教科書で……うわぁ! 彩ったらカワイイィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!


 さて、私も教科書をゲットしたのはいいけど……肝心の赤坂君はすでに遊と机をくっつけちゃってるし……あーあ仕方ない、マジメに授業受けるか……そのとき、


「ぷっ……ぷはははははははは!」

「おいっ赤坂! 何笑ってるんだ!!」

「あっ! すっすみません!!」


 突然、赤坂君が笑い出した。えっ何で? 赤坂君、●●になっちゃった?


 私は赤坂君(と遊)の方を見た。すると遊の教科書がチラッと見えたが……


 あぁっ! きっとアレだ!



 ――遊の教科書の「落書き」だ!!



 ついに2組目の「被害者」が……


 あれは一昨日のこと……その日の放課後、図書室で勉強会をしていた釜無高校1年3組の女子生徒数名が、メンバーの1人・Yさん(16)の国語の教科書に書かれていた「パンクロッカー・正岡子規」の落書きを見て一斉に爆笑し、その場に駆けつけた司書教諭によって厳重注意を受けるという事件が発生した。事件の当事者の1人、Mさん(15)は……


 ……私だよ! ()さんのせいでえらい目に遭ったぞ! だから赤坂君が爆笑した理由がすぐにわかったよ!


 ちなみに赤坂君……森鷗外はリーゼントになってるよ。


 あっ、そのY……じゃなかった遊が私の持っている教科書に気付いたみたいだ。すると遊は、赤坂君の机に乗せてあった教科書をそそくさと自分の机に戻して机を離した……えっ?

 赤坂君が困ってオロオロしていたので、遊はシャーペンで私の方を指した。すると赤坂君がこっちを振り向いたので私は(彩から借りた)教科書を見せてこっちに手招きをした。


 赤坂君は「渡りに船」と言わんばかりに喜んだ顔でもなく、何か申し訳なさそうな顔……でもなくさっき持っていなかったのになぜ今、私が教科書を持っているんだろうという不思議そうな……とにかく複雑な顔をしてこちらに机を寄せてきた。


 でも……やったぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああこれで赤坂君と机をくっつけられる!


 ありがとう彩! そして遊……っておい! こっち見てサムズアップ(親指を立てるの)はやめろ! 周りから見られたら怪しまれるじゃないか!


 赤坂君と机をくっつけた。いつも隣に座ってる赤坂君とほんの少し距離が近付いただけなのに、何でこんなに緊張するんだろ?


「ねぇ、この教科書って……」

「あっこれ? 彩が貸してくれたの」


 くっつけた机の真ん中あたりで教科書を広げて、右端を赤坂君に押さえてもらおうとしたら頑なに拒否られた。えっ、何で?


 今日から授業の課題は夏目漱石の小説「こころ」だけど……正直どんな話なのかわかんない。ぶっちゃけ夏目漱石の小説なんて「吾輩は()()()()である」とかいうヤツしか知らないし、それすら読んだことがないよぉ!

 まぁこの前、図書室で遊の教科書の落書きにあった「V系(ヴィジュアル系)漱石」を見たついでに遊に内容を聞いてみたら、「私」と親友の「K」と「お嬢さん」が三角関係のもつれで最後にKが自殺するという高校生が読むのにふさわしくないドロドロな昼ドラ展開の小説だとアイツは言ってたけど……。


 とりあえず……真面目な赤坂君が真剣に授業受けていることだし、私もちゃんと授業受けよう。ええっと、83ページだっけ?

 赤坂君は……そうか、たぶん彩の教科書だからビビっているのかな? 教科書に触ろうとしないので私が教科書のページを開いた。するとそこには驚きの光景が!


 彩……メッチャ予習してるぅううううううううううううううううううううう!!


 何コレ? すごい! まだ授業ではやっていない部分まで重要だと思われる部分にメモやアンダーラインがしてある! しかもすごくわかりやすい!! 作者の写真をV系バンドやパンクロッカーにしていたYとは大違いだ。


「わっ、すごっ! 彩……予習してんだね」


 私は思わずつぶやいた。赤坂君も驚いている……きっと彼は彩のことをただの陽キャなギャルだと思っているのだろう。だが実は彼氏の押原君とクラスで1~2位を争うほど頭が良い子なんだよ! それにしても……


「えっすごっ……どこまでやってんのかなぁ?」


 ここまで丁寧だとは私も思っていなかった。興味が出てきた私は授業の進行を無視してページをめくった。赤坂君が「えっ?」と驚いて困った顔をしていたが……ゴメンね彩! ちょっとだけ先のページまで見せてもらうよ! すると、


「えっ、ちょ美波!」


 後ろの方から声が聞こえた。彩だ……何か焦っている感じだったけど何で? いいじゃん、彩の教科書のメモわかりやすいじゃん! そして、私が次のページをめくったとき……



 ――は?



 教科書の下側の余白に、予習とは一切関係なさそうな言葉が……えっ何だコレ?




『ダメッ!! Kは私だけを見て!!』




 え? 「K」ってこの小説の登場人物だよね? 「お嬢さん」を巡って「私」と()()の三角関係になるっていう……(個人の所見です)。彩はこのページの文章にアンダーラインを引いて「Kがお嬢さんに対する気持ちを私に自白した」とメモしてあるけど……。

 これって……要するにKはお嬢さんのことを好きっていう意味だよね? 何で彩は小説の登場人物に嫉妬してるの? 挿絵とかないけどKってイケメンなの? ダメじゃん、アンタには「押原()」っていうイケメンの彼氏がいるんだから例え架空のキャラでも浮気なんかしちゃ……あ……あれ?



 ――(けい)



 ――ケイ?



 (けい)(ケイ)




 まさか……彩は……



 Kを(押原)(けい)君に見立てて嫉妬してたのぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?


 あははっ! いくら名前が同じだからって架空のキャラに嫉妬するなんて……ププッ、彩ったら……かっ、かわいい……けどちょっと引くわ……あははっ!

 私はさすがにこれはヤバいモノを見たと感じて口元がヒクヒクと動いた。赤坂君もこのメモ書きを見ていたが、意味がわからないようでキョトンとしていた。

 すると私たちの背後から非常に強い殺気を感じた。私と赤坂君は同時にビクッとなって、そーっと後ろを振り向くとそこには……


 耳の先まで真っ赤になっている彩がプルプルと小刻みに震えながら、ものすごい形相で私たちを睨みつけていた。


 あっ……こりゃマジでやべーやつだぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!


 私と赤坂君はこのとき同じことを考えていただろう。それは……



 ――今、見たことは忘れよう!



 私は、そーっと教科書を元のページに戻して何ごともなかったかのように遠くを見つめた。赤坂君は顔が真っ青になって何やらブツブツと呪文を唱え続けていた。






【終戦】






 ※※※※※※※



(1年後)


 今、私はあの日の授業で机をくっつけた《赤坂(あかさか) (だい)》君と付き合っている。


 1学期の成績が芳しくなかった私は、赤坂君の提案で2学期の中間テスト前の勉強会を、テスト前で部活休みの放課後に学校の図書室でしている。ううっ、2人っきりなのはいいけど……勉強会はヤだなぁ!


「あら、こんにちは~」

「「こんにちは」」


 2人で並んで座っていた私たちに声を掛けてきた先生がいた。今年からウチの高校にやってきた国母先生だ。まだ若い先生で、まるで女子大生がそのまま教師になったような感じの人だ。

 先生は去年まで甲府市内の高校で常勤講師をしていたらしい。推理小説や脳トレが好きらしく、先日の文化祭で脳トレクイズのイベントが大好評だった。


「あなたたち2年生~? よく見かけるわね~? 特にそっちの彼は……」

「あっ、私はテスト前で勉強を……えっ、大くんよく来てるの?」


 うーん、やっぱり校内でイチャついてるのが目立っているのかなぁ……授業で関わっていない先生にまで顔を覚えられているなんて……ってか大くんは図書室にいつ来てるんだよ!? 今は放課後、私と一緒に部活行っているハズなのに……。


「読書好きなのねぇ~えらいえらい! それと、2人は仲いいのねぇ~!」

「あ、えぇ……はい」


 うっうわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアンタ何してんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?


 国母先生が大くんの頭をなでて……いい子いい子しやがった。だがそんなことよりも問題は大くんの視線の先だ!

 この先生……10月になって八百屋の店頭から消えているというのに、腕の付け根の下に西瓜(Hカップ)を2個もぶら下げている……そう、爆乳の持ち主だ!

 赴任当初からその「チート武器」は男子生徒を次々と倒しまくっている。学業に支障が出るし、女子にも目障りだからその「危険物」は持ち物検査で没収しろ!


 で……そんな「禁断の果実」が目の前にぶら下がっていて大くん(この男)が平常心でいられるわけがない。一見、平静を装っているが私にはバレバレだ……そう、この「おっぱい星人」は完全に鼻の下が伸びきっている。許さん!


 〝ガツッ〟


 私は大くんの足のすねを思いっきり蹴飛ばした。図書室では大声が出せないので大くんは声を押し殺して


(イテ)ッ!!」


 と少し声が漏れた状態で下を向いてしまった。


 国母先生が去った後、大くんは涙目になって私の方を見た。私は黙ってノートの隅にメモを書き大くんに見せた。



『ダメッ!! 大は私だけを見て!!』



 私は……胸は無いけど、大くんを想う「こころ」は誰にも負けないんだから!

最後までお読みいただきありがとうございました。次回もお楽しみに!

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