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メロンパン戦争【エキシビション】

番外編です。


御勅使さんが「メロンパン」を好きな理由です。

 まだまだ寒い日が続いているものの、それでも少しづつ春の気配を感じられる3月に入って最初の1週間が過ぎた火曜日。鳥ヶ池中学3年C組の《赤坂(あかさか) (だい)》は高校入試の後期試験を、隣町にある第一志望の釜無高校で受験していた……そう、ボクのことだ。



「はい、そこまでー! 答案用紙は名前を確認して、そのまま机の上に伏せておいてください! 試験官が回収しまーす!」


 3教科目の数学の試験が終わった。今のところ上出来だ。


「これから1時30分まで休憩に入ります。開始5分前には席についてください」


 やっとお昼休みだ! 今日は大事な入試の日なので、お母さんが気合入れて弁当を作ってくれ……るハズだったのだが。

 2日前からお母さんが風邪でダウンしている。なので弁当を作ってもらえなかった。「大、ゴメンね」とお母さんが何度も謝ってたけど、今までボクの受験勉強のためにいろいろ協力してくれたんだ……責めることはできないよ。


 代わりに今朝、お父さんがボクを車で送ってくれたときに、近くのコンビニに寄って菓子パンと紙パックのコーヒー(コーヒー牛乳)を買ってくれた。

 お父さんはお母さんの再婚相手だ……ボクとは血がつながっていない。でも、ボクに虐待を繰り返していた実の父親だった人とは正反対でとてもいい人だ。ボクのためにゲーム機を買ってくれて、趣味を持つことすら許されなかったボクに楽しみを与えてくれた(もちろん、受験勉強期間中は制限があったけど)、とても優しいお父さんだ。

 ただ、優し過ぎて時々サービス過剰になるときがある。今朝もパンを買ってくれたのはいいが、大きな菓子パンを3つも買ってきたのだ。

 ボクは小食なので、菓子パンは1個食べたら十分お腹が満たせる。でもお父さんは「腹が減っては戦ができないぞ」と言って、無理やりパンを持たせて試験会場まで送ってくれた。

 どうしよう……とりあえず頑張って2個は食べて、残りは家に帰ってからコッソリ食べるとしよう。



 ※※※※※※※



「竜地君!」

「おー赤坂殿! 試験の成果は如何ほどでござったか?」


 ボクは隣の教室に移動した。そこで待っていたのは、ボクが中学に入って初めてできた唯一の友だち、《大垈(おおぬた) 竜地(りゅうじ)》君だ。竜地君はゲームに興味を持ち始めたボクに最初に話しかけてくれた、共通の趣味を持つ大切な友だちだ。ただ、話し方が好きな漫画の影響で時代劇口調になっている。

 ボクが試験を受けた教室には知り合いが1人もいない。なのでボクが教室を移動して一緒にお昼を食べようと竜地君と事前に申し合わせていたのだ。

 竜地君が、前もって机を2つくっつけてボクの席を確保してくれた。ボクだったら、知らない人の席を借りるなんてとてもじゃないけどできない……竜地君、キミはすごい!!


 竜地君はすでにお弁当を広げていた。ボクもパンの入ったコンビニのレジ袋を開いて中からパンを取り出そうとした。

 入っていたのはチョココロネとクリームパンと……メロンパンか。うわぁ、これはちょっと……。

 ボクは、中にクリームのようなしっとりしたものが入ったパンが好きなので、正直メロンパンのような水分が少なそうなパンはあまり好きじゃない。ボクはチョココロネだけ袋から出した。


「赤坂殿、本日は焼麦餅(パン)でござるか!? 弁当はどうされたのじゃ?」

「うん……実は今日、お母さんが風邪で寝込んじゃって……お弁当作ってもらえなかったんだ」

「そうか、それは難儀でござったな……で、小食のお主にしてはずいぶんと量が多いように見受けられるのだが……」

「うん、今朝お父さんが買ってくれたんだけど……正直こんなに食べきれないよ! 1個で十分なんだけど……」

「まぁ午後からも二教科あるからのう、昔から『腹が減っては戦ができぬ』と言うではないか」

「うん、それお父さんからも言われた。でも全部はムリだな……持って帰るよ」

「そ、そうか……では時間も無いことだし、いただこうではないか」

「うん、いただきます」


 ボクはチョココロネが大好きだ! なのでこれを最初に選んだ。このしっとりしたチョコクリームが何とも言えないくらいおいしい! 色々な食べ方があると思うが、ボクは先端のクリームが入っていないパンだけを先に食べ、「クリームが欲しいなぁ~パンだけじゃ辛いなぁ~」っていう限界のところまでガマンしてから、手を付けていないたっぷり残ったクリームの部分を一気に食べるのが好きだ……あっごめん、あまりにも好きだから思わず熱く語ってしまった。


 だが、ボクがチョココロネの先端を食べ始めたところで『事件』が起こった。



「ふわぁっ!!」



 突然、教室内に大きな声が響いた。それまで話し声であふれかえっていた教室が一瞬シーンとなり、やがて「え? 何?」といった声で周囲がざわつき始めた。


 声の主は、ボクたちの近くで同じように机を向かい合わせにして座っていた、見たことのない制服を着た女子2人組のうちの1人だった。


「べ……弁当、忘れた」

「マジけ? 何やってるでおまんは」


 どうやらその女子が弁当を忘れたらしい。周りの人たちは「何だよ、そんなことかよ!」といった感じですぐにそれぞれの時間に戻った。中には「あの子、お弁当忘れたんだってぇ……バカじゃん」と陰口を叩いている女子もいた。


「うわぁ……どうしよう、午後の試験持たねぇよぉ~」

「ったく、ずでどうしようもねぇなぁおまんは! ほれ、アタシの唐揚げ1個だけならやるよ! 食えし」

「うぅ、恩に着りますぅ~」


 ボクは、弁当を忘れた女子が何か気の毒に感じて気になってしまった。ボクと同じくらいの身長だな。もう1人の背が高いポニーテールの女子と友だちみたいだけど……見たことがない制服だ。どこの中学だろう?


「あれは……六科(むじな)中の制服じゃな?」

「え? 竜地君、わかるの?」

「当然じゃ! 拙者はこの辺りの中高なら女子(おなご)の制服を見ただけで、どこの学校か瞬時にわかるでござる! (おとこ)は区別がつかぬが……」


 ――うわぁ……竜地君、さすがにそれは引くよ。


「うぅ~、唐揚げ1個じゃ足りないよぉ~、もうダメだぁ~私、試験落ちるぅ」

「だっちもねぇこん言っちょ! ま、普段から男子を押しのけて給食をおかわりするおまんにとっちゃ酷だろうけんど……」


 ――え? そんなに食べるのこの人、ボクと同じくらいの背丈なのに?


 ボクはさっきから弁当を忘れた女子の会話が気になってしょうがなかった。ボクはこのとき、頑張って2個目のパンをレジ袋から出して食べ始めていた。2個目に食べたのはクリームパン……あと1個はレジ袋から出さないでいた。

 すると、そのレジ袋を見た竜地君が、


「赤坂殿! お主、それは食わぬのか?」

「うん、さすがに3個はムリだよ! これは持って帰って家で……」


「ならば……そこにいる女子(おなご)にくれたら如何かな?」



 ――え?


 ――えぇっ?






 えぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?





【開戦】






 いやいやいやいやいや……それはムリだよ! だってボクは、同じクラスの男子にすら話しかけられない陰キャキモオタコミュ障なんだよ! 今日たまたま試験会場で見かけた他校の……しかも女子にいきなり話しかけてパンを渡すなんて……


 ムリだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!


「そっそんな! 竜地君、ボクがそんなことできるワケないじゃないか?」

「なっ、何と非情な! 自分は満腹になって万全の態勢で午後の試験に臨むというのに、目の前で困っている者を無視するというのか? それともお主は好敵手(ライバル)が自滅して一人減ったことで合格者の枠が増えて幸運(ラッキー)だという考えであろうか?」

「いっいやいや! そっそんなこと全然思っていないけど……」

「ならばなぜ出来ぬ?」

「えぇ!? だって竜地君だってボクの性格わかるじゃないか!? ボクにそんなこと……あっ、そうだ! 代わりに竜地君が渡してくれないかな? これを……」


「赤坂殿!」


 竜地君は小さくため息をつくと、続けてこう言った。


「これは……お主に対する『試練』でござる」

「試練? えっ、何で……?」

「お主! このままでは……例えこの高校に入学できたとしても……」

「しても……?」



「お主は……『孤独(ぼっち)』になるぞ!」



 えぇええええええええええええええええええええええええええええええなにその合格する前からすでに高校生活を終了させるような非情な宣告はぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?


「えぇっ、そんな! ボッチって……だって、ボクには竜地君がいるし……」

「甘いぞ赤坂殿! この高校、確か一学年が六(クラス)あるはずじゃ! 今はたまたま同じ組じゃが、高校に入ってからも拙者と同じ組になれると思っておるのか?」


 うわぁああそうか!? 竜地君と同じクラスになれるとは限らないってことか? 休み時間に会えたとしても授業中は……いや待てよ! 一番最悪なのは体育の時間に「はい、2人組になってー」とかいう陰キャに対する()()()()殺し文句(キラーワード)……



 高校生活……地獄だ。



 じゃあ思い切って午後の試験は、白紙答案を提出して不合格で……いや、そんなワケにはいかないよ! ボクの将来がかかっているんだから!


「赤坂殿……さぁ、いざ参られよ!」

「えっえぇええ~っ!?」


 うわぁ、これは……試験とは比べ物にならないくらいのプレッシャーだよ。



 ※※※※※※※



 渡すっていったって……一体どうやって?


 ボクは人に話しかけるなんて行為はムリ……無理ゲーだ。じゃあ話しかけないで無言で渡す? 絶対キモいヤツだと思われるよね? 周りにいる生徒からも「変なヤツがいた」って思われてしまって、入学するころにはすでに「あっ、アイツだよ入試のときに……」って言われてキモオタキャラが確定した高校生活の3年間がスタートしてしまう! 地獄だあぁあああああああああああああああああああああ!


 じゃあ直接渡さずに、あの女子たちの机の上にパンを放り投げてみようか? いや、ボクはコントロール悪いからおそらく床に落としてしまうだろう……そしたら食べられないじゃん!

 運よく机の上に落ちたとしても、いきなりそんなのが降ってきたら……絶対怪しいよね? 嫌がらせかテロ行為にしか思われない……間違いなくゴミ箱行きだ!


 ――やっぱ……話しかけるしか選択肢はないのか?


 初対面の人にどうやって話しかける? 「はじめまして! ()()()()は鳥ヶ池中学3年C組の赤坂大と申します。先ほどから貴女方のお話を聞いておりましたところ、どうやら弁当をお忘れになられたようで……実はワタクシ、パンが食べきれなくてちょうど1個余っておりまして……僭越ながら、こちらのパンでよろしければ貴殿にプレゼントしてもよろしいかと……」


 堅苦しすぎるぅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう何者だよボクは!?


 同級生なんだからもうちょっと気軽に、しかもイメージ悪く思われないように陽キャっぽく話しかけけた方がいいのかも? 「何だよオマエ、弁当忘れたのかよ? ()()のパンでよければひとつやってもいいぜ! おっと、カン違いすんなよ! 別にナンパしてるワケじゃねーぜ! オレに惚れんなよ……」


 ただしイケメンに限るぅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!! ボクがやったら「キモい」の一言で返されて終わりだぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!


 ――まぁここは普通に「よかったらどうぞ!」でいいよね?


 ただ、ボクみたいな陰キャキモオタコミュ障がそんなことで話しかけたらコイツ絶対「下心ある」って思われるだろう。あの女子たちの前に立っただけでも「えっ何コイツ、これを機会に友だちにでもなろうとしているのかしら……キモッ」って思われるに違いない。だいたい、女子なんてボクの顔見ただけでキモいと思うんだから、下手すりゃ目の前でパンを捨てられるかも……?


 うわっ、そう考えたら午後の試験はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したまま受けなければならない。とてもじゃないが合格する自信がない。


 とにかく……パンを渡したときにボクがそこに居てはいけないのだ! でも姿を見せずに放り投げたりしてもダメ……一体どうすれば?


 そうだ! 一言言って渡したら、すぐにその場を去ればいい! 幸い、ボクが受験しているのは隣の教室だ。この教室なら「アイツ、さっき女子にパン渡してたよな」ってウワサになりそうだけど、すぐに去ってしまえば誰が渡したかわからないだろう。あの女子に対しても、恩を売ったとか下心あるなんて思われなくて済む。

 それに「いや、お前キモいからいらない」って言われてもすぐに去ってしまえばその辛辣な一言を聞かずに済むし……まぁパンはゴミ箱に捨てられるだろうからもったいない気もするけど。


 よし、ダッシュで渡してダッシュでこの教室を去ろう! まだ休み時間はあるけど、ボクはパンを食べ終わったし残りの時間は……トイレかどこかで次の試験の対策でもして時間をつぶそう。

 じゃあ行くぞ……ボクはタイミングを見計らった。去ろうとしたときに動線がふさがれて立往生したらメチャクチャ恥ずかしいし、あの2人にも姿を見られ「陰キャじゃねーかよ、キモッ」って思われるだろう。できるだけあの2人の周囲に人がいなくなって入口の扉が開いているタイミングでパンを渡そう。


 タイミングを見計らっている間……心臓がバクバクしている。


 話しかけたとき、うっかり噛んで何言ってるのかわからなかったらやだなぁ。


 あの2人の席に向かう途中でコケたら恥ずかしいなぁ。


 目の前に立ってパンを渡そうとする前に「何アンタ? キモいんだけど」って言われたら……立ち直れないよなぁ。色々な考えが頭をよぎった。



 そうこうしているうちに、あの2人の女子がいる席の周りに人がいなくなった。速攻で渡して教室を去ることができる絶好のタイミングだ! 今なら行ける!!

 見ず知らずの女子に話しかけるなんてボクには命がけの行動だ。でも、これができなきゃ例え高校に入れたとしても3年間、暗黒(ボッチ)生活を送ることになるって竜地君が言っていた。それだけは避けたい!

 ボクは右手にパンが入った袋を持つと、女子たちがいる席に少し早歩きで向かった。ダッシュで向かったらそれだけで引かれるだろう。落ち着け、落ち着くんだ赤坂大! ボクならできる……根拠は全くないけど。


 ドクンドクン……心臓の音が耳から聞こえそうだ。試験のときだってこんなに緊張していなかったのに……1歩1歩がスローモーションになっている。

 ドクドクドクドク……確実に心拍数が上昇している! このまま5分くらい経ったら死ぬかもしれない……早く終わらせて楽になろう……そして、


 ――2人組の女子の席の前に立った!!


 心臓の音が聞こえなくなった……っていうか一瞬、周囲の全ての音が聞こえなくなった。このとき、ボクは自分を見失いそうになったが……そうだ! このまま黙っていたらただの不審者……キモいヤツだ! 「あの言葉」を言わないと……


「あっ、あの!」


 話しかけてしまったぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!


 2人の女子はボクの方を向いてしまった。もう後には引けない! ボクは手に持ったパンの入った袋を机の上に置くと


「よ、よかったらコレ食べてください! ボクもうお腹いっぱいなんで」


「えっ!? あっ…………あり……がと」


 やった! 噛まずに言えたぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! よし、このままダッシュでこの教室を脱出だぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!


 ちょうどよいタイミング! 扉付近に誰もいない! これで立ち止まらずに一気に教室を出られる!


 ボクはあの2人の女子の方を一度も振り返ることなく教室を出た。もしあの女子が、ボクのパンを親指と人差し指だけでつまんでゴミ箱に捨てる姿を見てしまったらPTSDを発症して午後の試験が受けられなくなるからだ。


 やったぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ大成功だ!!


 上手くいった! 自分でも信じられないくらい完璧だった。これでこの高校に入っても暗黒(ボッチ)生活を送ることなく薔薇色(リア充)の生活が待っている……ワケないか。

 さて、午後の試験も頑張ろう! 何だかわからないが、達成感に満ちたボクは俄然やる気がでてきた……あっ!



 竜地君に何も言わず教室を飛び出してしまった……まぁ、いっか。






【終戦】






 ※※※※※※※



 〈1年後〉


 高校に無事合格したボクは、もうすぐ2年生になろうとしていた。早いなぁ1年間って……。


 今ボクは、同じクラスで席が隣()()()御勅使(みだい) 美波(みなみ)》さんと付き合っている。生まれて初めてできた『彼女』だ。1年前、女子の前に立つのにあれだけ苦労したボクからは想像もできない……いや、今でも信じられない。


 今は春休み、今日は近くの公園でデートだ。来る途中でコンビニに寄ってお昼ごはんを買い、公園のベンチに座って話をしていた。


 高校に入ってもう1年たったんだねーって話から、ボクが受験のときに経験したこのエピソードを御勅使さんに話した。すると、御勅使さんが、


「へぇ、そうなんだ……で、()()()()()はどうなったの?」


 と聞いてきた。


「さぁ……ボク正直その人の顔をよく覚えてないんだ。だからその人が高校に入学したのかどうかもよくわからないよ」

「ふーん……そうなんだ!」


 御勅使さんからフツーに返された……あまり興味がないのかなこの話? ま、他の女子の話だし、これ以上話したらボクがその子に興味があるって思われて、御勅使さんに怒られそうだから止めておこう。ただ、この話を聞いていた御勅使さんがなぜかニヤニヤしている……え、何で?


 お腹が空いてきたのでお昼ごはんにした。ボクは袋の中から玉子サンドとチョココロネ、そしてブラックの缶コーヒーを……御勅使さんはお弁当とメロンパン、そしてコーラを取り出した。


「え、弁当とパン? 相変わらずよく食べるね」

「えっ悪い? それより……やっぱ好きなんだね、チョココロネ」

「う、うん……そういえば御勅使さん、よくメロンパン食べてる姿見るけど、好きなの?」

「うーん……前はそこまで好きってワケじゃなかったけど……()()()()がキッカケで好きになったんだよね」

「ふーん……」


 すると御勅使さんが、2人の間に置いていたコンビニのレジ袋を取り上げると、ボクのすぐ隣に座り直して寄り掛かってきた。


「えぇっ! 御勅使さん、ちょっと……」


 御勅使さんの予想外の行動にボクは驚いた。さらに……


「ありがとね、赤坂君」

「え?」

「私、赤坂君がいなかったら同じ高校に通って……こうして一緒にいることができなかったかも……だから、ありがと!」




 えぇっ、何で? 今日の御勅使さん……何かヘンだよ。




 公園の桜は七分咲きだった……ボクたちは来週、2年生になる。


最後までお読みいただきありがとうございました。次回もお楽しみに!

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