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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

双子姉妹はテレパシーに挑戦する

作者: ピッチョン

【登場人物】

空韻(そらおと)朝陽(あさひ):高校一年生。双子の姉。妹よりは冷静で要領がいい、と思っている。

空韻(そらおと)小夜(さよ):高校一年生。双子の妹。姉よりは周りが見えて気配りができる、と思っている。

 私と小夜(さよ)は一卵性双生児というだけで色んな人から好奇の目線を向けられてきた。

 その気持ちは分からないでもない。姿も声も瓜二つの人間が一緒に歩いているのだから注目もされるだろう。

 だからって無茶ぶりをするのはやめてほしい。

『双子ってお互いの考えてること分かるってホント?』

『じゃんけんもあいこがずっと続くんでしょ?』

『どっちかがケガしたらもう一人もそこが腫れるんだよね?』

 んなわけあるか!

 考えが分かったりあいこが続いたりするのは、赤ちゃんのときからずっと隣にいて思考回路が似てるだけ。

 ケガが伝播するのは、まぁそういう不思議なことが起きた話を聞いたことはあるけど私達の間ではなったことはない。

「みんな双子ってことに期待しすぎだと思うんだよねー」

「ほんとほんと」

 夜寝る前、私と小夜(さよ)は二段ベッドの上と下で話をしていた。

「ちょっと私達の返事がハモったりするだけで『さすが双子』みたいに言われるし」

「同じ時期に体調を崩したら『やっぱりシンクロしてるんだ』って言われるし」

 それが双子に起因していないとは言わないけど、このくらい兄弟姉妹だってよくあることだと思う。

「双子だって違うとこ結構あんのにね」

「そうそう。テストで間違えるところとかね」

「この前『テレパシーか何かで教えられないの?』とか言われたときは大きな声出そうになった」

「あはは。テレパシー使えたら有効活用してるよね」

「当然。お互い別の範囲覚えてテスト中に教え合ってるよ」

「そしたら学年でダブル一位とれちゃうかも」

「そこまで簡単にはいかないんじゃない? 二人とも分からない問題はお手上げだし」

「たしかに」

「まぁ本当にテレパシーが使えるならそれをネタに食べていく方が楽かもしれないけどね」

「いいねー。テレビに出て美人双子姉妹テレパシストとしてお茶の間の話題をかっさらおう」

「今ならネット配信とかもアリ」

「あ、私あれやりたい! ヴァーチャルなんとかってやつ!」

「実写じゃなかったらテレパシー見せる意味ないでしょうが」

「そうだった」

 小夜と笑いながら話を続ける。ネットで配信をするならゲーム実況がしたいとか、テレパシーが使えるなら操作する方を目隠ししてプレイさせてみようとか、だったらトランプを二組用意してせーので同じカードをずっと出し合うとか……。

 ただの会話の延長でしかなかったけど、話しているうちに試してみたくなった。

「……小夜、ちょっと思ったんだけどさ」

「なに?」

「双子だったら頑張ればテレパシーくらい使えないかな?」

「は? さっき否定したの朝陽(あさひ)の方じゃん」

「だから頑張ればって言ってるでしょ」

「頑張るって、テレパシーを?」

「うん」

 自分でもバカなことを言ってるのは分かってる。でも私には小夜が了承してくれる自信があった。何故なら私達は双子だから。相手が考えてること、望んでることくらいすぐ分かる。それはテレパシーみたいにはっきりとじゃないけどなんとなく伝わってくるのだ。

「……まぁ試すくらいならいいけど」

 小夜からの了承を得て、私は枕元に置いてあったファッション雑誌を取り、二段ベッドの上からひょいと下へ降りた。

「試すのにちょうどいいのがあってさ」

 ベッドの縁の柵に腰掛けて、横になっている小夜にページを開いて見せる。

 そこには『以心伝心度チェック☆』という見出しとともにいくつかの項目が載ってあった。

 小夜が説明を読み上げる。

「えっと『お友達とどれだけ気持ちが通じ合っているかを調べてみよう』……なにこれ?」

「以心伝心度チェックだって」

「聞いてるのはそこじゃない」

「簡単な質問に答えて、二人の回答が合ってるかどうか確かめるだけだよ」

「テレパシーを試すって言うからてっきりトランプの数字当てとか絵を描いてそれが何かを当てるとかするかと思ったんだけど」

「いきなりは難しいよ。まずは簡単そうなのからやらないと。ちゃんと自分の答えを頭に思い浮かべて私に念を送ってよ?」

「はいはい」

「そんじゃやってみよっか」

 上から順番に質問をこなしていく。

『相手が一番好きな食べ物は何?』

『一緒に遊びに行くならどこに行きたい?』

『相手が自分の顔でチャームポイントだと思ってる場所は?』

「「チョコレートパフェ」」

「「ディズニーランド」」

「「二重まぶた」」

 …………。

 結果は全問正解。本来なら回答は相手によって変わったりするはずだけど、私達の場合はそれが全部一致した。

「小夜」

「うん」

「テレパシーとか関係なしにお互い何を答えるか分かるね」

「うん」

「ま、まぁこのくらいは予想してたし!」

 生まれたときから一緒にいるのだから相手が何を考えているか、次に何をしようとしているのかくらいは分かって当然だ。なのでこれはウォーミングアップ。

「次のページが本番だから!」

 ぺらっとページをめくって小夜に見せる。そこにも以心伝心度をチェックする項目が載っている。ただし。

「『以心伝心度チェック☆ ~恋愛編~ 気になるあの人や恋人の好みを知るのにもオススメ』って書いてるんだけど」

「細かいことはいいの。こっちのはそううまくいかないと思うんだよね」

「んー……『相手に触って欲しい場所は?』だって」

「こういう恋愛系ってあんまり話したことなかったし、さすがに何となくじゃ分からないでしょ」

「どうかなー」

「とりあえずやろ」

「はいはーい」

 あらためて質問について考える。触って欲しい場所。ぱっと思いつくだけで数カ所あるけど、やっぱり私としてはあそこしかない。

 思い浮かんだ場所を強く念じて小夜に送る。まぁこんなことをしても小夜に送れている気はしないし小夜からテレパシーを感じることもない。

 でも双子なら。双子になんらかの力が働いているのなら、この質問だって回答が一致するはずだ。

「決めた? じゃあせーので言うよ?」

 私の「せーの」を合図に同時に言葉を放つ。

「手!」

「頭!」

 違う答えを口にした小夜を驚いて見返す。

「頭もちょっとは思ったけど、なんでよ? 手を触ってもらう方が絶対いいじゃん」

「手は触るより繋ぐって言い方のほうが正しくない? 頭はほら、撫でてもらったりするし」

「小夜ってば子供っぽーい」

「うっさいなー。で、テレパシーなんてまったく感じなかったけど?」

「念が足りてないんだよ」

「そんなこと言われてもどうやればいいかわかんないって」

 正直私もどうすればいいかは分からない。思考を相手に伝えることなんてやっぱり無理なんだろうか。

「……ちなみに小夜は今さっきどんな風に念じてた?」

「どんな風って、普通に『頭、頭……』ってずっと声に出さずに呟いてただけだけど?」

「じゃあ今度は映像にしてみない?」

「映像?」

「念写ってのがあるくらいだし、声とか文字より映像の方が伝わると思うんだよ。だから次は答えをそれぞれ映像で思い浮かべてみよ?」

「それで朝陽が納得するならね」

「するする。えっとじゃあ次の質問は……『唇以外でキスされるならどこがいいか』」

「キス!? ど、どういう映像を思い浮かべたらいいの?」

「そりゃ自分がキスされてるところでしょ」

「……相手は?」

「好きな人とか」

「朝陽はいるの?」

「いない」

「じゃあ思い浮かべようないじゃん」

「好きな芸能人でも誰でもいいよ。あ、もしくは私にしとく?」

「誰が!」

「はいはい、それじゃ映像で思い浮かべて。目をつむった方が想像しやすいかも」

「……」

 私が手を叩くと小夜が渋々目をつむった。私も同じようにして想像してみる。

 キス。当然したことはない。だからどこがいいかと聞かれても困るし想像のしようがないんだけど。

 ぼんやりとその光景を思い浮かべ、首を横に振った。

 ……いや違う。私、キスしたことある。たしか幼稚園か小学校低学年くらいのとき、私に誰かがぎゅっと抱き着いてきてほっぺたに唇を当てて――それがすごく嬉しくて――。

 瞬間、抱き着いてきた誰かの顔を思い出した。鏡を見ているかのように私と瓜二つの容姿をした女の子。

 考えてみれば物心つく前から小夜とずっと一緒にいたのだ。そりゃキスのひとつやふたつくらいしていてもおかしくない。というか結構してた記憶がよみがえってきた。手を繋いで公園に遊びに行って、おままごとしたりお絵かきしたり。褒めてあげると嬉しそうに笑って私に抱き着いて『あさひおねえちゃんだいすき』ってキスされて。

 やばい。なんかめっちゃ恥ずかしくなってきた。さっさと終わらせよう。

「……小夜、もう大丈夫?」

「うん」

「じゃあ言うよ」

 せーの、と同時に口に出した。

「ほっぺた」

「おでこ」

 また違う答え。

「……小夜は何でおでこなの?」

「……小さいころ誰かさんがそこによくキスしてくれてたの思い出したから」

 照れた小夜の顔が幼いころとダブって見えた。そうだ。褒めるときに頭を撫でて、それからおでこにキスをしてあげてたんじゃなかったっけ。

「朝陽は何でほっぺた?」

「私は、その、小夜と同じっていうか……」

 小夜の顔が照れを通り越してどんどん赤くなっていく。多分今の私も同じ顔をしているだろう。

 …………。

 謎の沈黙で場に変な空気が流れた。なんとか元に戻そうと無理矢理笑ってみる。

「あ、あはは、これってある意味私達が通じ合ってる証拠だよね? 二人とも同じ光景を思い浮かべてたんだから。もしかしたらさっきの『触ってほしい場所』もさ、そのころの記憶が残ってたからかもしんないね!」

「そ、そうかもね!」

「うん、きっとそうだ。実験はうまくいったってことで、ほら、久しぶりにおねえちゃんが褒めてあげよう。よしよ~し」

 気恥ずかしさを隠すように小夜の頭を撫でた。撫でて――固まった。

 体を(すく)めた小夜が、自分の胸元に拳を当てて私を見返している。紅潮した頬、熱のこもった吐息、潤んで輝く瞳。

 私達は双子だ。相手の考えていることくらいなんとなく分かる。

 だから分かってしまった。小夜が私にどうして欲しいかを。

「…………」

 頭を撫でていた手でそっと前髪を上げる。小夜の唇にぐっと力が入ったのが見えた。でも抵抗はしない。やめての一言もない。

 私は体を乗り出して、小夜のおでこに口付けをした。

 確かに昔こうやってキスしてたな、と思い出したけど懐かしさにひたろうにも胸のドキドキがそれを邪魔する。まさか高校生にもなって双子の妹のおでこにキスするなんて。

 唇を離すときに、ちゅっ、と音が響き胸の鼓動が一層激しくなった。

「え、えっと、じゃあ私は――」

 ベッドから離れようとした私の腕が小夜に引き留められた。小夜の柔らかな手はそのまま腕を伝い降りて私の手をぎゅっと握る。

「……朝陽だけずるい」

 私から言わせてもらうとその表情がずるい。こんな顔でお願いされたら断れないじゃないか。

 居住まいを正し、ほっぺたを小夜の方に向けると、おそるおそる小夜が顔を寄せて私のほっぺたにキスをした。

 くすぐったくて嬉しくて、誇らしいような気持ちになれるキス。年月は経っても湧き上がってくる感情は変わらないみたいだ。

 小夜が唇を離した。

「…………」

「…………」

 お互い何も言わない。でも繋いだままの手が二人分のドキドキを伝えてくる。

 言葉にはしなくても今私達の気持ちは通じ合っている。相手が何を考え、これから何をしたいかが分かる。

 こういうとき先に話し始めるのはおねえちゃんである私の務めだ。たった数分の差しかないおねえちゃんだけど。

「……昔はよく一緒に寝てたよね。二段ベッドなのにひとつしか使ってないってお母さんに呆れられてたの覚えてる?」

「……うん。日替わりでお互いのベッドで寝てたんだよね」

「そうそう」

「…………」

「……今日、一緒に寝る?」

 返事は聞くまでもない。

 こくん、と頷いた小夜に笑顔を向けて、広げていた雑誌を勉強机の上に放り投げてからベッドに飛び込んだ。

「ちょっと! いきなり危ない!」

「いやー、まさか小夜がそんなに私のことが好きなんてねー」

「はぁ!? 朝陽が私のことをでしょ!?」

「それだけ顔を赤くしてちゃ説得力ないなぁ」

「まったくおんなじ顔してるから!」

「あはは」

「笑ってごまかすな!」

 怒られても全然怖くない。考えてることが分かるから。

 テレパシーを使えなくても相手が嫌がってるのか、喜んでるのか、恥ずかしがってるのかくらい読み取れる。

 だって私達は双子だから。

 これ以上の確かな絆なんて無いと思う。

 ただまぁ、言葉でも聞きたいなぁということで。

 小夜が落ち着くまでずっと頭を撫で続けてあげた。





<おまけ>


ほくろ


「朝陽と小夜ってホント見分けつかないよね。見分けるコツとかってあるの?」

 学校での休み時間、クラスメイトの友達が聞いてきた。

「あるよ」

「あるの!?」

「簡単なのはほくろの位置かな。さすがに違うから」

 私の言葉に小夜が続く。

「朝陽は首の後ろの根元に一個あるよね」

「小夜は鎖骨のとこと、あと腰のくびれのとこにもあったよね。ちょうどおへその横のライン」

「それ私も同じような場所にあるじゃん」

「あぁそうだったっけ」

「そういや朝陽、右胸の下のところにもほくろあったの知ってた?」

「え、ほんと? 気付いてなかった」

 私達がわいわい話すのを聞いていた友達が一言。

「……なんでそんな場所のほくろも把握してるの?」

「…………」

「…………」

 一瞬、小夜と目を合わせ。

「「双子だからね」」

 そのセリフは綺麗にハモったという。



     終

大変お待たせいたしました。

ちょっと短めですが。


一度は書かなければと思っていた双子姉妹百合です。

それまで無自覚だったのがあるきっかけで自分の感情に気付いて好意をあらわにする、っていうのいいですよね。


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