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桜坂高校新聞部の怪事件秘録~事件のオカルト事情は複雑怪異~  作者: 勿忘草
第1章 凄惨なる恨みの果てに ~ひとりかくれんぼ~
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第8話 いや、それはおかしいんじゃないか?

「――いや、それはおかしいんじゃないか?」


 俺が発した疑問の声に、場の空気がより重たいものになった。


「お、おかしいって、何が……!?」


 どこか虚を突かれたような反応の長澤さんを見て、俺は確信した。

 ……やはり間違いない。長澤さんが何か隠していること。そして“あの情報”が何を意味しているのか。その先に何があるのか。話を聞いてみないと。


「普通、ただの仲良しグループなら。宮島遥さんがそもそも怪物にならないはずだ」

「そ、それは、城田は遥を虐めてたからだよ!! だから!!」

「じゃあ、なんで他の3人は殺された。殺すのは城田沙耶さんだけで良かった。」

「そ、そんな常識、あんな怪物に求めないでよ! 悪霊が憑りついたんでしょ、ソイツが遥をおかしくして、私たちを!!」

「静かに……! 怪物に見つかっちゃうけど良いの……!?」


 楓に言われた途端、長澤さんが口元を手で押さえて荒い息を抑えた。

 この反応、よほどトラウマらしい。気持ちは分かるけど、追及は止めない。


「……どうかな。葵ちゃん?」

「怪異は、“怪”しく“異”なる存在。人の道理じゃ正しく理解できないものよ。だけど、今の宮島さんが不可解な状況にあるのは事実ね」

「そもそも他の女子は止めなかったのかよ。友だちが虐められて」

「し、城田は、怖いんだ。逆らったら何をされるか……!?」

「それで、見て見ぬふりか。友だちなのに薄情だな。知ってるか、いじめは見て見ぬふりをしていた奴も同罪なんだぜ。ましてや同じグループならな」

「……っ!!?」


 わざと冷たく言い放った俺に、長澤さんの鋭い視線が向けられる。

 もちろん俺はいじめを見て見ぬ振りをする心情は理解できる。だからこそ――事実がそうなら、ここまで棘がある言い方はしなかった。

 見て見ぬふりなんかじゃない、彼女たちは……それに加担していたはずだ。


「だけど、長澤さん。あの怪物、あちこちにケガがあったな。擦り傷や内出血。体の至るところに。全部、城田さんがやったのか?」

「あっ、そういえば! てっきり怪物だからだと思ってたけど……」

「1人じゃ無理だ。あんなにも暴力を振るうなんて。だけど、他の4人も含めたら?」

「ウソ、違う……違うの……! それに、証拠は……!?」

「もちろん、証拠ならあるぜ」


 ここで “あの情報”だ。俺はスマホの画面をみんなに見せた。

 異界の中では、スマホは圏外だったけど。閲覧中のサイトは視聴できる。

 そして、そのサイトは……例の怪事件のブログ記事だ。そのコメント欄には。


『これ、ウチのクラスメートの連中だ。行方不明とか、アイツら100%死んでるに決まってるじゃん! アイツラ、いつもいじめしてたし(笑)』


 このコメント。誰でも書き込める以上、信頼できるかは微妙なラインだ。

 だから今まで口に出さなかった。だけど、これまでの情報と……何より長澤さんの恐怖に染まった顔。それで俺は確信した。


「宮島さんに、お前たちは“いじめ”をしていた。そして、この廃校で宮島さんが殺され、怪異となってお前たちに襲い掛かった」

「なるほど、そういうことだったのね。あなた、私に嘘を言ったの?」


 俺と楓、それと騙されていた七星さんの視線を一挙に担う彼女。


「しょ、しょうがないじゃない!! アンタらに何がわかるの!? 」

「その反応はありえないよ。あなたたちのせいで、遥さんは……」


 だけど、長澤さんの答えは……ただ、感情に任せたものだった。

 

「知らないよ、そんなこと!? 遥が怪物になったの、私に関係ないじゃない!」

「だけど、原因はそちらにあるんだ。すべてを解決しろとまでは言わないけど、なんとかするのが筋だろ」

「そんなのどうでも良いよ、とにかく出して、生きて帰りたいの!!」

「お前、いい加減に――」

「――ストップ。話はそこまでにしましょうか」


 もはや周りが見えないほど、ヒートアップしかけていた……前に。

 小さな声だけど、含まれた言葉の重みと七星さんの雰囲気が場を変えた。

 まただ、この感覚。言い表しにくいけど、どこか異様な。彼女は時折そうだった。それが何かわからない。だから、俺は彼女から離れていたんだろう。


「今は解決法を探しましょう。彼女の悪事を責めるのもそれからよ」


 正論だった。俺も長澤さんも冷や水をぶっかけられたように黙った。


 ……それにしても、解決法か。どうすれば良いんだろうか。

 俺が暴いたコトは飽くまで集団失踪の真相だけだ。どうしたら怪物を倒せるのか、ここから逃げ出せるのか見当もつかなかった。


「んー、原因がわかったら解決法もわかるよ?」


 だけど、楓は違うみたいだ。何かを思いついたみたいだけど。

 いや、待てよ。この楓の冷めきった表情、低い声のトーン。もしや?


「か、解決法?」

「決まってるよ。遥さんが、いじめの恨みで怪異になったなら……この子が殺されたら、遥さんの恨みだって晴れるんじゃないかな」

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