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桜坂高校新聞部の怪事件秘録~事件のオカルト事情は複雑怪異~  作者: 勿忘草
第3章 死に至る遊戯~リンフォン、?????、?????
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回想 もしかして、これがゲームの呪いなの?

「ふーん。古風で単調だけど、けっこう面白いじゃん」


 家に帰って来たアタシは、さっそく送られてきたゲームをプレイしていた。

 

 今日の朝、アッキーは止めてきたけどそんなのアホらしい。

 呪いのゲームだって? そんなの上等だ。呪いたいなら呪えば良いじゃん。

 私がプレイし始めた理由の一番はソレだ。アッキーの鼻を明かしたかったから。


 そうだったから内容は期待してなかった。精々暇潰しになってくれれば良い程度。

 だけど、いろんな意味でこのゲームは私の予想を裏切ってくれた。内容は単調ながらも意外に面白い。操作性も内容も悪くない。何より不思議な魅力があった。

 その根拠が何かはわからないけど、今やってるどんなソシャゲよりも面白かった!

 そして、家に帰って来てからベッドに寝そべりながらずっと遊び続けていた。



”いや、やめろ。そんなもんに触ろうとするんじゃねぇ!”


 

 そして、その間。私の身には何も起きていなかった。

 なんだ、アッキーが心配性なだけじゃん。呪いなんてそんなものないじゃん。

 勝ち誇りながらゲームを続けると、ふと昔のアッキーの顔が思い浮かんできた。

 ああ。昔と変わらないんだな。そうやって真っ直ぐ向けられた瞳とか、本当に。


「相変わらず、かーちゃんと仲が良いみたいだしさ。まったく」


 これも中学の時と変わらなかった。いつも一緒にいるアイツ。

 婚約者だの将来を約束しただの頭おかしいこと言って……アッキーに付き纏う。

 アッキーもアッキーでまんざらじゃなさそうで。それがより一層腹立たしい。

 

「数週間はこれにハマれそうだね~」


 と、まあ。あれこれ考えてもどうせ人生なんて死ぬまでの暇潰し。

 どんなに頑張っても死んだら終わり。周りの評価は頼りにならない。だったら一時の快感を身を任せて生きた方がよっぽど良かった。

 だから、私はゲームが好きなのかもしれない。目的が明確で、達成するためのセオリーが確立されていて、大きな成果を画面の向こうで手に入れられるんだから。


 なんて、アタシもない。そんなことを思考してるとゲーム内で通知が来ていた。


『ルリルリさんがあなたのフレンドになりたいそうです』


 ルリルリ、ねぇ。どこかで聞いた名前だ。まあ、珍しいものじゃないか。

 ランクは……122だって? けっこう高いじゃん。このゲームはランクが上がりにくいだけに、3桁代はかなり珍しい。それこそ寝る間もないほど続けない限り。

 そんなガチ勢がなんで初心者丸出しのアタシにフレンド申請したのかはわからないけど。まあ、何かしらの思惑があるんだろう。

 普通に承認して、フレンドになる。普通の動作を終えて、ふと部屋の窓を見ると。





 

 ――白い人型が、私の方を見ていた。




 


 最初は何が何だかわからなかった。見間違いかと思ったけどそうじゃない。

 白い人型の何かが、うねうねと姿の輪郭をブレさせているナニカ。何だろう、見間違いかなと思いながら近づいて――視界が青に染まった。


「がほっ、ごぼごぼごぼっ!!? ごぼぼごごごぼごぼっ!!?」


 突然で最初は何が起きたのかわからない。その後は異変に気づいた。

 目に激痛。息が出来ない。体に異様な浮遊感。これは……水の中だ!?

 あの時と同じだ、あの驚き、あの苦しみ、あの絶望、何もかも同じだ!!


(苦しい、苦しいよ!! 誰か助けて!!!)


 口から息が溢れて、心臓がキュッと締まって、呼吸が出来ない。

 体からあらゆるものが抜けて、立っていられなくなる。苦しいよ、助けてよ!!

 

 なんでも良い。なんでも良いから早く助かりたいと手当たり次第にもがいた。

 もがいて、もがいて、もがいて、手や足が何かに強打した。だけど、そうでも良かった。息が欲しい、酸素が欲しい、なんとか助かりたいと必死だった。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 そして、大きく息を吸い込んだ瞬間、空気が体に入ってきた。

 ぼうっとしていた頭が現実を取り戻す。暴れてぶつけた体の部位が痛みが今さら感じた。手の甲なんか、じんじんと腫れ上がっていた。

 それだけじゃない。体のあちこちが異変を訴えて気持ち悪い感覚に襲われていた。

 なんとか苦しみから逃れて現実に戻ろうと


「……もしかして、これがゲームの呪いなの?」


 アッキーが、あの時に話していた言葉が冷気と一緒に背筋を伝った。

 ゲームの呪いなんてウソだ、非常識だ、有り得ない、そんなコト聞いたことない。

 自分を落ち着けようと反射的に言葉が浮かんで、すぐに目の前で起きた現象と恐怖に打ち壊される。それをなんとかしようと再び落ち着かせようとする。繰り返していくうちに、自分で何が何だかわからなくなった。

 

「そんなワケない……そんなワケない……アタシは大丈夫……大丈夫なんだ」


 だけど、アタシは。その恐怖を捨て切ることはできなかった。

 あんなの普通に起こるワケがない。頭を抱えながら部屋中を見渡した。

 窓にも、どこにも、あのバケモノはいない。目についたのはスマホ。


「ああ、ゲーム。ゲームだ、ゲームだよ、ゲームをやらなきゃ……」


 今にも死にたくなるほどの絶望の中、思い浮かんだのはゲームだった。

 目の前の”呪いのゲーム”とアッキーが話していたソレ。もしかしたらこれが原因かと思っていても、私にはやるという選択肢しかなかった。

 




 だってゲームをプレイしてる時だけは。バケモノの存在を感じなかったのだから。

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