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桜坂高校新聞部の怪事件秘録~事件のオカルト事情は複雑怪異~  作者: 勿忘草
第1章 凄惨なる恨みの果てに ~ひとりかくれんぼ~
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第4話 まるでホラゲーに出てきそうな廃校だな

「他に、情報はないよな」


 あれから学校を出た俺たちは、電車に揺られている。

 俺は新聞やネットの記事を見つつ、端の席で新たな情報を探すことに。

 目的は、もちろん廃校に向かうため。調べてみたら場所自体はすぐに出た。


 ……しかし、ずいぶんと東京から離れちまったな。


 東京から離れる毎に電車の本数が減り、ドアは自動で閉まらなくなる。車窓から見える景色も大きく変化した。灰色混じりの景色から緑と土色、空の青色に変わった。

 ちなみに電車賃もバカにならなかった。今月のおこづかいピンチなんだけど。これで何もネタが見つからなかったら恨むぞ、楓。


「うーん、葵ちゃんに逃げられちゃったよ……!」

「まだ、引きずってるのかよ、お前は!? さっさと諦めろよ!」


 だけど、楓はこんな感じだ。お前が調査を言い出したんだろ。

 興味を七星さんに向けている楓に怒りそうになった。コイツめ。


「そもそも何でお前は七星さんに固執するんだよ」

「うーん、直感かな。あの娘は何かを持っているって!」

「直感かよ! それで振り回された俺や七星さんの気持ちにもなってくれよ!」


 だけど、コイツの直感。けっこう当たったりするんだよな。

 佐竹先生のカツラを暴いたのも楓だったし。その他にも直感によるコイツの実績は数えきれないほどあった。もしかして、本当に七星さんには不思議があるのか?

 

「いや、そんなことよりも事件だ、事件!」

「そうそう。今は怪事件を調査するんだから集中しないと!」

「誰のせいだよ!!」


 まったく、俺がいないとグダグダになるな、楓は。

 心の中で呆れつつ、再び情報を探し始める。だけど、他には見つからなかった。頭の中を探してみたけど、関係する他の新聞の記事も浮かばないし。


「まとめブログのコメ欄も見てるけど……大したコメはねぇな」

「そうなんだ。まあ、そういうものなのかな」


 大抵は毒にも薬にもならないものばかり。他には現実に起きた事件を好き勝手に噂するなとコメント。それは本当にその通りだぜ。

 だけど、事件のヒントになりそうなものはない。そもそもブログ主以上に、好き勝手に書ける連中の情報なんて信用できやしない。


 だけど、カーソルを下に移動させる内に。あるコメが目に留まった。

 どうやら被害者と同じ中学校の生徒からみたいだ。だけど、これは……?


「あっ、そろそろ到着するよ」

「えっ? ああ、ようやくかよ。帰るのは大変そうだ」


 その時、どうやら目的地に到着したらしい。電車を出ることに。

 降り立った先は無人駅。生まれも育ちも東京の俺には見慣れない光景だ。

 ポツンと設置されている機械にICカードをタッチし、退場する。自然に囲まれた空間。建物、人工物、人の気配すらない。というか誰もいない。


「ふぇー。すっごい田舎だね~」

「ここから道なりに進んでいけば、目的地にたどり着けるみたいだな。だけど、すごい坂道……大丈夫か」

「まあ、何とかなるんじゃないかな!」


 俺の言葉なんて意も介さず、ぐんぐんと道を進んでいく楓。

 本当に、何とかなるんだろうな。一抹の不安を感じながら後を追った。






「はぁ……はぁ……キツイ……」


 思った以上に、田舎の坂道はキツかった。

 というのも、ここは舗装も整備もされてないような道路。坂道の急な角度もそうだし、何より足の裏から衝撃が直に来る。それが自身のダメージを与える。

 春の陽気、土と葉の香り、広がる大自然。文字だと穏やかだけど、そんなことは言ってられない状況だった。しかも俺たち、制服だし。動きづらい!


「け、けっこう、辛いね。女子中学生の子たち、本当に通ったの?」

「どうだろうな。だけど、通って廃校に入ったから行方不明になったんだろ」

「うーん、何故ここに来たのかな。駅チカの心霊スポットとか行けばいいのに」


 いやいや、駅チカの心霊スポットとかアレすぎるだろ。

 “駅から徒歩5分! 家族と一緒に楽しめます!”とか、イヤすぎる。

 だけど、楓の話は一理あるな。普通なら来ようとも考えないだろう。そうなると何理由があるけど……思いつかないな。


「あっ、見えてきたよっ!」


 そうこうしている内に、それらしい建物が見えてきた。

 あれが、目的地の場所か。名前は――藪木小学校。10年前、廃校になった。

 外装は意外にも原形を留めているようだ。木造の、2階建ての横に広い建造物。だけど、割れた窓、校舎に絡みつく植物、無人のグラウンド、それに異様な何かが住み着いていそうな空気が異様な雰囲気を醸し出していた。


「まるでホラゲーに出てきそうな廃校だな」


 近寄ってみると、その不整合に思える感覚は増幅していった。

 呪われている、行方不明事件が起きた。それらが嘘だとは思えないほどに。


「うんじゃ、外見を観察しつつ、撮影と捜査を――」

「そんな、まどろっこしいことはナシだよ! さっさと中に入るよっ!」

「あー、もう! 楓は、ちょっと待つことを覚えてくれよ!!」


 七星さんじゃないけど、本当に好奇心で殺される猫になるだろ、コイツ!

 有頂天で校内に侵入する楓を、俺はまた追いかけることになったのだった。

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