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桜坂高校新聞部の怪事件秘録~事件のオカルト事情は複雑怪異~  作者: 勿忘草
第3章 死に至る遊戯~リンフォン、?????、?????
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第9話 この怪異を暴き出すには、絶対にアキくんの力が必要になるのだから

「それで、ここに何の用かな? 見ての通り、しがないオカルトショップだけど……?」


 店長さんの言葉で俺たちの騒ぎが、ようやく収まった。

 そうだった。すっかり忘れていたぜ。この店に来た大切な目的を。


「実は、前に店長が言っていた呪いのゲームについて教えて欲しいのよ」

「……呪いのゲーム?」

「はい! 部活動の一環で調べてまして! ご存知ならぜひ教えてくださいっ!」

「オーケー、そうなのか。……だけど、楓ちゃん。やめておいた方がユーにとってグッドだ。この手の噂にゴーフォワードするのはネ」


 だけど、店長さんの返しとして飛んできたのは……意外なものだった。


「怪異は、ユーたちがシンクしている以上にアンノウンでデンジャラスな存在なんだ。好奇心の1つで関わるのはナッシングだ」

「何をー! 私たち、そのデンジャラスな怪異を何度も暴いたんですから!!」


 ……いや、誇るもんじゃねぇ。その時には死ぬような思いしてるんだからな?


「うーん、そうアグレッシブにトークされてもねぇ……」

「残念だけど、楓にあれこれ説得してもムダよ。もう引き返しようのない階段に足を踏み入れてしまっているのだから」

「おおう。そうなのか、ということはこのピープルたちが葵ちゃんがトークしていた彼女たちか。ふむふむ、アンダスタンしたよ」


 合点が行ったのか、手首を独特な仕草で回しながら口元を穏やかにさせた。


「むぅ。なんでそんなに私たちが怪異とか調べるのに否定的なんですか!?」

「別に、リジェクトはしなていいさ。だけど、私から言いたいシングスがあるんだよ」

「うぅ……でもぉ!」

「クエスチョンだけど、ユーたちは怪異や超常現象が怖くないのかい? 現に何度か異界に巻き込まれている。ノーマルピープルなら回れライト、なはずだ」


 店長さんからの、意外にして極めて真っ当な質問が俺たちを突き刺した。

 俺も正論だし否定できない。だけど、どこか納得できない内容のソレ。

 ソレに対して、俺よりも先に口を開いたのは……案の定、楓だった。


「正直、怖かったです。特にアキと離れ離れになった時は。それでもです」

「……それでも、かい?」

「はい! だってーー世界は不思議に満ちているんですから! 生きている限り、その不思議を探し求めなきゃ生き損じゃないですか!!」


 世界は不思議に満ちている、その言葉だ。その言葉が楓を突き動かしている。

 誰にも恥じるコトがない。たとえ初対面の何を考えているかわからない人相手でも。

 いや、それは恥じるべきじゃないか? 楓は恥ずかしくないのかよ、今更だけどさ。


 だけど、それを聞いた店長さんは……。あ、あれ、高らかに笑い出した!?


「あっはっはっ!! それはグレイトだ! 世界は不思議に満ちている、か!!」

「な、なんだか、その反応は私たちがバカにされてるような……」

「いーや、シニカルでもなんでもない。素直にリスペクトしているさ。ユーの怪異を乗り越えようとする意志にネ! 知り合いを思い出しちゃったよ!」


 怪異を乗り越える、とまでは言い過ぎだけど。どうやら認めてくれてるのか。

 店長さんの反応、陽気で気軽で何も考えていないようで底が知れない。

 だけど、とにかく嬉しそうで、賞賛してくれて、邪気は感じなかった。


「しょうがない、ユーのハートに免じてトークしてあげようか!」

「本当ですか!? ありがとうございます!!」

「まあ、ストーリーは大したことじゃないさ。単なる噂だ」

「そ、そんなにも軽々しいものなんすか……?」

「ソーリー。呪いや怪異の1つ、この店ではコモンセンスだからね! そんなことにハートをムーブをしてちゃタイアードだ!!」


 えっと、コモンセンス……常識、だっけ。心を動かしてたら……なんだ?

 ううん、理解しようとするだけで疲れる。テンションにもついていけないな。


「そもそも、結依ちゃんが呪いのゲームのインフォを知っていることがサプライズだ。それも私と違うゲームだ」

「ふーん、そう。そっくりそのままお返しするけど」

「それならアナザーの呪いのゲームをショウしてくれ! 結依ちゃん」

「メンドウだけど、わかった」


 とりあえず、店長さんに話を始める結依先輩。内容は記事と大体同じだった。


「ふむふむ、アンダスタンしたよ」

「どうですか? 何かわかりました?」

「シミラーのようでクリアにディファーな点がある。エクスプレインするよ」


 シミラー、似ている。ディファー、違う。似ているようで違う、か。


「まず、私が知っている呪いのゲームから説明するヨ! まず違うところは……ユーたちが知るゲームはクリアしたら呪われる。しかし、私がノウする呪いのゲームはーー真逆だ」

「ま、真逆って?」

「そのままの意味さ。クリアしないと呪われる、ということだ」


 そ、その段階から違うのかよ!? 呪われる条件が異なっているのか。

 

「ぜ、ぜんぜん、別物じゃないですか!?」

「そうなるネ。そもそもだが、、私がノウする呪いのゲームはアプリケーションじゃない。マイホームにCDドライブが郵送されてくるんだ」

「ゆ、郵送……?」


 今時スマホで動画や音楽を見れる時代に原始的な方法だな、おいおい。

 都市伝説らしくない……いや、逆にらしい? 一昔前の都市伝説とかでありそうだ。


「そして、ゲームの内容だけど。昔のゲームをムーブしたものだ。

「えっ、スマホアプリじゃないんですか!?」

「うん。私が知るゲームはそうだったけど。それも違うというの?」

「ファミコン風のゲームだな。確か名前は……ブレイブアドベンチャーとか言ったな」


 内容は……別モノみたいだ。

 それにしても勇気の冒険。呪いのゲームにしては壮大な名前だぜ。


「そのゲームをプレイすると呪われる。ゲームをクリアするまで一生呪われ続け、最終的には発狂してしまう」

「一生呪われ続けるの。こちらは……未確定ね。その段階にまでゲームをプレイした人が生きていた事実はないから」


 結衣先輩の話、ちょっと待てよ? それが事実だったらおかしくないか?

「それなら、こっちのゲームならプレイしないと、か。……う、うん? あれ、神代先輩の記事ではクリアしたら呪われちゃうんですよね?」

「ここはかなり重要な要素になると思う。クリアしたら呪われるゲームが、なぜ続けられているのか。私の知る限り、ゲームをやめる人はいなかった。あの男の子だけじゃない、他の人も同じようにゲームを続けて、最終的に自殺を選んだ」

「た、確かに、そうですよねっ!」

「ーーゲームをクリアして死んだ人はいない。それまでに自殺という道を辿っている。きっと、このウラには何かがあるわ」


 ……ゲームをクリアして死んだ人はいない。これが事実なら妙だった。

 クリアしたら呪われるゲーム、そう語られるには何かしら理由があるはずなのに。

 そもそも、あの松村も自殺だった。何か狂気に囚われたように、廊下をうろうろしていて、誰かと争い事をし初めて、そして死んだ。

 そうだ、まるで怪異に支配された人間のように。挙動不審で、不自然に死んだ。

 そして、奴の姿を見る限り。ゲームをクリアしない限り呪われ続けて発狂する、店長さんが話してくれた呪いのゲームの方が合っている。

 これは、どういうことなんだろう。どちらが正しいんだ? 何が間違っているんだ?


 そんな、複雑に絡み合った俺の思考を遮るように。店長さんが軽く咳払いをした。


「ここで、私が知っている呪いのゲームのストーリーはエンドだ」

「なるほど、理解できた。もしかしたら私が知り得た呪いのゲーム、店長さんの呪いのゲーム、語り継がれるうちに別のものに変わってしまったのかも」

「もしくは、まったく別の怪異と、その噂が2つ存在していたか、かしら」


 俺と楓の思考が追いつかないまま、繰り広げられる葵と結衣先輩の会話。

 だめだ、話の不可解さもあるし、何より情報量が多すぎる。少しまとめるか。

 まず呪いのゲームの噂は2つ存在する。結衣先輩が知るものと、店長さんが知るもの。




結衣先輩の呪いのゲーム

・ある日突然、自身のスマホに送られてくる。

・無名、無地アイコンのアプリ。どのようなゲームかは不明。

・クリアしたら呪われる。ただ、今までの被害者はクリアの有無に関係なく自殺した。



店長さんの呪いのゲーム

・ある日突然、特定の誰かに郵送で送られてくる。

・CDドライブに保存されている。ブレイブアドベンチャーという名のゲーム。

・ゲームをクリアをしなければ呪われる。実際の被害は未確認。



 

 どちらか正しいか、両方とも正しいか、両方とも単なる噂話に過ぎないか。

 真実が何かはわからない、けど。それでも。少なくともアプリの呪いのゲームは。


「うーん。いろいろ話を聞いてみたけど。結局のところ曰く付きみたいだね」

「どうするんだい? それでも、ユーは不思議を追い求めるのかい?」

「ちょっと悩んでるところはありますけど、やりますよ!!」


 そして、ここまで聞いて楓は調査を辞めないみたいだ。やっぱりな。


「……言うと思ったわ。どーせ、私も付き合う羽目になるのよね」

「あれれ〜、葵ちゃん。初めて会ったあの時と比べてずいぶん素直になったねぇ?」

「べ、別に、断ったところで、あなたたちは勝手に行くでしょ!! だったら少しでも側にいた方が安全でしょ! どんな目に遭うのか、わからないんだから……」

「私たちのこと、心配してくれてるんだ。優しいね、葵ちゃん」

「う、ううう、うるさいわよ!!」


 当然のように、俺たちまで巻き込まれている……その方が都合が良いか。

 葵は葵で、案の定楓の言われるがままになっている。ちょろい。

 店長さんは俺たちを見守るような温かい視線を送り、結衣先輩は……笑っている?


「それはそうでしょう。この怪事件、あなたたちが関わらなきゃだから」

「えっ?」


 空間を裂くように飛んできた先輩の言葉に、俺はまたもや嫌な予感がしていた。


「この怪異を暴き出すには、絶対にアキくんの力が必要になるのだから」


 だって、結依先輩は。これまた巨大な爆弾発言を俺たちに飛ばしてきたのだから。

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