表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜坂高校新聞部の怪事件秘録~事件のオカルト事情は複雑怪異~  作者: 勿忘草
第3章 死に至る遊戯~リンフォン、?????、?????
41/57

第4話 私と知っているものとはぜんぜん違っていたから

「ウッソだろ……小鞠。もう帰っちまったなんて」


 ーー時は過ぎて、今は放課後。

 といっても、それからも時間は経過していて、廊下に人はまばらだった。

 窓を覗いたら校庭では運動部が練習を励んでいた。気づいたら上の階からは吹奏楽部が練習している様子が聞こえてきた。

 今は夏、これらの部活はまさに山場だから頑張っているんだろう。新聞部もこれからの取材、いろいろ考えておかないとな。


 そんなことよりもあの時からから俺が気になっていたのは小鞠と呪いのゲーム。

 あれから俺はというと、どうにかアイツにゲームのプレイを止めようとしたものの。


「おーい、小鞠。あのコトなんだけど」

「くか〜〜、くか〜〜、くか〜〜」

「おい、起きろよ。寝てんじゃねぇ」

「くか〜〜、くか〜〜、くか〜〜」

「あー、コイツ! ぜんぜん起きようとしねぇ!!」


 授業の合間やその後に話しかけようとしても小鞠は爆睡で起きることはない。

 というのもコイツ、ソシャゲの周回で夜通し起きているのか、授業中はいつも寝ていた。

 それでも成績は中の上を維持しているからすげぇよな。地頭が良いってヤツか。


「よっしゃ、起きてるな!? 今度は逃がさねぇぞ! あのゲームだけどーー」

「えぇ〜!! 私が好きだなんて、そんな……! 結婚を前提にお付き合いなんて……!?」

「ア〜〜キ〜〜!?」

「お、おい、楓!!? 誤解だって!! そもそもお前も小鞠と俺の関係は知っているだろ!!? いきなり付き合うなんて話になるわけねぇよ!」

「知ってるけど、やっぱり怪しよ! 最近、妙にアキが別の女の子から好かれてるし!! その辺りをアキと私、葵ちゃんとも話さなきゃね!!」

「なんで私も!?」

「相変わらずだよね、カーちゃんは。夫婦仲むずましく、頑張ってね〜」


 唯一の休み時間、お昼休憩に話しかけようとしたら……この始末。

 楓に捕まり、葵を含めてお昼を一緒に食べながらいろいろ責められた。って、これ普段の新聞部で一緒に食べるお昼ご飯じゃねぇか!

 まあ楓も楓で本気じゃなかったみたいだけどさ。だったら最初から見逃して欲しいぜ。


 こうして何度も煙に巻かれてしまって、まともに話ができなかった。

 くそぅ。アイツ、いろいろ頭が回るんだよな。相手にしたくないタイプだぜ、アイツ。


「はぁ……。どうなるんだろうな」


 最後の希望の放課後……だけど、これも探しても見つからない。

 つまり逃げられた。さてはアイツ、放課後の掃除をサボりやがったな?

 俺は掃除なし、アイツは掃除ありだから捕まえられると完全に油断していたぜ。


 とはいえ、どうするか。一応、SHINEで伝えてみるけど……聞いてくれるか。


「望みは薄い、だろうな」


 朝の反応を見る限りだと、小鞠が考えを変えることは難しいかもしれない。

 


”どうでも良いじゃん、そんなこと”



 冷たい言葉と悲しそうな表情がもう一度浮かんできた。

 やっぱりまだ過去の”あのこと”を乗り越えてなかったんだな、アイツ。

 だからって自ら命の危険に関わる必要はないだろうに。これからどうしようか。


 どうしようもない目の前の事実に対して、どんよりとした気持ちに包まれていると。


「あれ……吉村か?」


 見たことがある人の姿を、この廊下で見かけた。

 吉村隆也。何の変哲もない、ただの去年のクラスメート。

 接点はない。せいぜい班で同じになったり、何回か話したことがあったくらい。

 

 だけど、気になったのは彼自身ではなく彼の様子と行動だった。

 見ているのが気の毒になるほど体を丸めて、何かに怯えた様子で、両手で丸め込むように何かを抱えている。

 あの黒いアレは……スマホか? とにかく、今のアイツは明らかに普通じゃない。


「おーい、吉村ー!」


 耐えきれずに大声をかける。聞こえるはずの声量なのに反応がなかった。

 まるで俺なんていなかったかのように両手でスマホを持って、しきりにビクビクしながら辺りを見渡しているようだった。

 なんだよ、吉村は何に怯えているんだ? こんな学校の廊下で、どうしたんだ?


「おーい、どうしたんだよ?」


 やっぱり見るからにアイツの様子がおかしい。もう一度声をかけてみる。

 と、すると。やっと俺の方に顔を動かした? 想像を絶する形相で、そしてーー




「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?」




 突如、廊下中に響き渡る声量で吉村は叫んで、走り出した!?

 呆然とした様子の俺と、廊下の他の人たち。変な静寂が漂っていた。

 1秒、2秒、3秒。経過して、ようやく現実世界に俺の意識が戻ってきた。


「ほ、ホントにどうしたんだ、アイツは……?」


 ああ、もう。何もかもわからない。残ったのは驚いたことに対する疲労感だけ。


「今日は厄日かもな、はぁ」


 次から次へと厄介ごとが舞い込んでくる。疲れる1日だぜ、ホント。

 ため息を1つして、俺は目的地に歩を進めた。向かう場所は決まっている。


「おいっす」

「あら、一秋くんだったのね」


 校舎2階の隅にある新聞部の部室。普段の教室の半分しかない、今はもう誰にも使われていない空き教室の中に入ると、とある少女が迎えてくれた。

 七星葵。入部から週ヶ月した新聞部の3人目の部員にしてナゾだらけでチョロい友人だ。


「よう、葵。楓は一緒じゃないのか?」

「それが、何かやらなきゃいけないコトがあるみたいで、どっかに行ったのよ」

「マジかよ。いきなりだな、おい」

「掃除もせずにどうしたのかしら。楓のせいで私の作業が2倍になったのよ、ぶつぶつ」


 ……楓、お前も掃除サボったのかよ。

 小鞠といいコイツら掃除当番をフリだと勘違いしてるのか、まったく。


「んじゃ、ヤツが来るまで待機だな」

「そうなるわね」


 基本的に我らが新聞部の活動は、楓を軸にして動いていた。

 楓が思いつきを話して、それを俺が、今では葵も含めてあれこれツッコミを入れる。

 それを楓がブーブー文句を言い、それから記事にするべきか、記事にするならどう調査をするかを話し合う、という流れがほとんどだ。

 だから、締め切り間近などでやる作業が決まっている時は楓がいなければ暇だし平和だ。

 

 だから、俺たちは楓が来るまでは。友人として他愛のない談笑でもすべきなんだけど。


「「…………」」


 やっべぇ。ものすげぇ気まずいぜ!!

 そういえば、俺と葵の2人はまともに話したことがなかったんだ!

 大抵は間に楓がいて、楓を仲介して関係が成り立っていたのだから。


 要するに今の俺たちは友だちの友だちの関係。特に話す仲じゃなかった。

 共通の話題もあまりないから、おそらく一番会話に困る関係だっただろう。


「えっと、その……。そうだ、楓はどうしたのかしらね!?」

「いや、わからないだろ。掃除サボってどっか行ったんだから。葵が言ったじゃないか」

「そ、そそそ、そうだったわね」


 相変わらず葵はコミュニケーションが得意じゃないみたいだし。

 というか、楓がいないとガチでダメみたいだ。あと楓好きだよな、葵よ。


 それはさておき、葵とまともに話せる話題を見つけないとな。

 うーん、何があるだろうか。あまり仲が良くない俺と彼女とで考えるなら。


 “怪異”


 こんなものが共通の話題になることに複雑になりつつも。

 それでもまともに話せるだろうと、俺は意を決して言葉を発することにした。


「……そうだ、葵」

「な、何かしら?」

「呪いのゲームのコト、知ってるか?」


 しまった、言い方が真人と被っちまった。口に出してから後悔してると。

 当の葵は……驚いたように、まんまると意外にキレイなその目を見開いていた。


「の、呪いのゲーム!? な、なんで一秋くんまで知ってるの!?」

「知ってるけど……えっ、葵も?」

「え、ええ。少しは……」

「もしかして、あのブログを見たか?」

「ブログ? それでは見てないわ。人づてに聞いたのよ」


 葵も呪いのゲームを知っている、だけどブログ記事は読んでいないか。

 そういや俺と違って、葵はこのブログに興味を示してなかったし。当然だよな。

 そうなると人づてに聞いた呪いのゲームの話が気になるな。誰から聞いたんだ?


「そうなのか。じゃあこれを見てほしいんだけど」


 とりあえず、葵に例の記事を見てもらうことにした。

 最初、葵は俺が見せてブログを真剣そうな瞳で目を通していたものの。


「あら……これは、なんで?」


 次第に表情の雲行きが明後日に向かっていき。

 記事を最後まで読み終わった後には、葵はまたもや大きく目を見開いていた。


「えっと、これが呪いのゲーム?」

「そうだけど、何かあったか?」


 どこか拍子抜けな反応に、俺が言葉を続けた時だった。


「わ、私と知っているものとはぜんぜん違っていたから」


 ……なんだって? 違っていた? どういうことだ?

 いきなり投げられた言葉に、気づけば俺も葵と同じ表情をしてしまっていた。


「つまり、どういうことだ?」

「要するに、この話とは違う呪いのゲームがあるということよ」

「……マジかよ!?」

「私も信じられないけどね。どちらが正しいか、どちらもウソかはわからないけど」


 まさか、気まずい葵とのコミュニケーションがこんなことに。

 だけど気になったのが”もう1つの呪いのゲーム”とは何なのか、ということ。


「葵、教えてくれ。その、もう1つの呪いのゲームの噂」

「それはーー」


 今度は違う傾向の、不穏な空気が流しながら葵が口を開いた瞬間。



 ーーブー、ブー、ブー



 不意のスマホからの通知で、それが止められてしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ