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桜坂高校新聞部の怪事件秘録~事件のオカルト事情は複雑怪異~  作者: 勿忘草
第2章 諸人縛りし闇の牢獄にて~きさらぎ駅、?????~
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第16話 私は絶対にそんなものを付けないわ!

「残念なお知らせがあります。今月のオータム新聞、また発行禁止になりました」


 あれから数日経ったある日。学校内の新聞部の部室室にて。

 日常に戻った俺たちは、発行禁止になって机に積まれた新聞の前で嘆いていた。


「……先生にものすごい剣幕で怒られたな。もう二度と現実に起きた事件を面白おかしく嘘八百書き立てるなって」

「こんなの絶対におかしいよ! 私たちが文字通り命がけで調べた不思議なのに!」

「至極当然なコトだと思うのだけど。信じてもらえるわけないでしょうに」


 葵の突っ込みに、楓が疲れたように新聞に頭から倒れ掛かった。

 

「はぁ~。今回で完全に先生たちに目を付けられたし。怪異や異界も……考えなくちゃいけなくなったし。もうあんな目に遭いたくないし」

「良い心掛けね、遅いくらいだけど。なら今後は怪異なんて関わらないように」

「それは止めないけどね! この世界は、絶対に不思議に溢れているんだから!」

「……はぁ、予想はしていたけれど。どうしようもないわね、楓は」


 対する相変わらずの楓。異界でヒドい目にあった俺としては複雑な気分だ。

 だけど、今回の件で楓も思うことがあったのか。いろいろ考えてくれるらしい。これで楓の暴走が落ち着けばいいんだけど、と思いつつ。事件を振り返った。



 異界から帰ってきた後の話。それはそれで大変だった。

 まず、なつねぇにはめちゃくちゃ怒られた。楓たちを真夜中まで連れまわしたし、何より俺自身が帰るの遅くなって、連絡もしなかったからだ。

 俺も高校生なんだから心配しすぎだぜ。弟離れできない姉は困るよな。やれやれ。


 次にバラバラ殺人事件のこと。

 異界から脱出してから数日経った今、あの事件は一度も起きていない。

 だけど、真相は永遠に不明のままだろう。被害者はきさらぎ駅に迷い込んで、カシマさんに殺されたなんて誰も信じないだろうし。


 最後に、宍倉さんのこと。

 あの人は結局、会社を辞めたらしい。烏丸に言われて吹っ切れたようだ。

 だけど、その後に生じたのはお金の問題。今を生きるのもお金は必要だ。だから、最初は楓のパン屋でアルバイトしてもらったんだけど。


「出勤……5時起き……朝礼……いやあああああぁぁぁぁぁ!!!」

「ねぇ、アキ。あの人、どうにかならないかな?」

「なんか、本当に申し訳ないぜ」


 案の定、パンを買いに来る社会人の姿を見て発狂していた。

 そういや、そうだよな! アイツの店の稼ぎ時、朝の6~8時だったからな!

 なので今度は葵の家がやってるカフェのランチタイムで働いてもらったところ。


「コーヒー……徹夜……終わらない仕事……いやあああああぁぁぁぁぁ!!!」

「あらあら。元気が良い人ね~。ウチのカフェもにぎやかになるわ~」

「元気、にぎやかで済む問題なのかしら……。仕事はできるから良いけども」


 と、そんな様子みたいで。それなりに受け入れられているようだった。

 元々見た目が良い上に、地雷を踏まなければ大人しい真面目な彼女。オカルトな雰囲気らしい葵の店ともマッチし、高い人気らしい。

 ……それにしても、ノンキすぎないか。葵のお母さん。どんな人だろうか。


「こんにちはぁー! 一秋くん、いますかぁー!?」


 なんて、考えていると。烏丸の声と部室の扉が無造作に開けられる音が聞こえた。


「茜ちゃん、アキはあげないからね。アキは大きい胸が大好きなんだから、ちんちくりんの茜ちゃんには入り込む隙間はないんだよ!」

「そうですかぁ? 一秋さんはちんちくりんなお姉さんが大好きみたいですがぁ」

「それは特別なの! 千夏さんがお姉ちゃんで、アキはシスコンなんだから!」

「人の性癖でケンカすんな! というか楓はともかく何で茜まで知ってるんだよ!」


 俺がそうツッコむと、茜は「秘密ですぅ♪」と笑みを浮かべつつ答えた。

 というか、俺の何処がなつねぇが好きに見えるんだ!  実に心外だぜ。

 ……まあ、俺のタイプは“ふわふわとしたお姉ちゃん”なんだけどさ。俺のコトなら何でも知ってる楓はともかく、ホントに烏丸は何処で知ったんだ。


「それで茜ちゃん、何か用はあるの? それとも冷やかし?」

「そうそう“カシマさん”の件ですけど。どんな怪異だったんですかぁ?」


 烏丸から唐突に飛んできた、今回の怪異の名前。これには葵が答えた。


「カシマさんはね、日本全国に伝わる都市伝説なのよ」

「ふーん、そうなんですかぁ。アレが日本全国に、ですかぁ」

「ええ、なんらかの事故や事件で手足を失ったとされる怪異。カシマさんの話を知った人間のもとにやってきて――手足を奪って殺したりする。もちろん語り継がれ方によりどんな対処法があるのか、どうなるかはバラバラな存在ね」


 改めて怪異の正体を知ると……なんか、うん。よく倒せたよな、俺は。

 ひとりかくれんぼの時もそうだけど、無我夢中になるんだよな。何かやらなくちゃ、怪異を倒さなくちゃって。よくわからないんだけどさ。


「なるほど、そうなんですねぇ。だけど、今回はいろいろ違うみたいですけど」

「それが今回の怪異における異様なポイントね。本来なら現れるはずがないカシマさんが、きさらぎ駅という異界駅と融合して現れたのだから」

「本来なら現れるはずのなかった。どういうことですかぁ?」

「それを説明するには少しばかり長い話になるけれど。説明しましょう」


 葵よ、話が長いという自覚はあったのか。


「その前提として、怪異はある種の条件と――神秘性がないと存在できないのよ」


 今回も長いかつ訳がわからない話になる予感を感じつつ。耳を傾ける。


「そもそも、人を恨んでいる怪異なら心霊スポットとかに居座らず、都会に出向いて襲いに行った方がよほど恨みを晴らせるでしょ?」

「あっ、確かに!」

「もちろん、土着の怪異も存在するけど。そうしないのは基本的に怪異が夜、田舎などの神秘性を備えた空間でしか存在できないから。 そして、カシマさんの顕現できるという空間が――人と人同士の秘密という未知の領域」

「人と人同士の秘密、ですかぁ?」

「カシマさんは噂を知った人の元に現れる。そして、“話を知ったことで怪異が現れる恐怖”、“他の人には話せない”という状態を生み出すの」

「そうなると、ただ不安に思うしかないですよねぇ」


 話を聞いただけで自分の元に現れるという怪異。言われてみると怖いな。

 高校生になった自分ならともかく、小学生の頃に聞いたら信じてしまいそうだ。


「だから、もし数十年前ならカシマさんは存在し続けられた」

「あっ、そうか。今はネットで検索すれば、一発でわかっちゃうもんね」

「そういうこと。ネットという世界中の人間が触れられる情報に、怪異も神秘性も何もないわ。現れることなんてできないもの」

「できたとしてもカシマさんの方が死んじゃうよねぇ。主に過労死で」

「怪異もブラック労働の被害を受ける現代社会ですかぁ。世知辛いですねぇ」


 なるほど。都市伝説なんて所詮は人が語るモノ。

 技術や化学などが発達して時代にあわなければ、すぐに消えるということか。その分、時代に即したモノが現れるけど……怪異にはたまったものじゃないな。


「だけど、カシマさんは現れた。別の怪異の力を利用して。それが“きさらぎ駅”。これは異界駅と呼ばれる類の都市伝説よ」

「その怪異があったから、ここの解決方法が見えなくなってたんだよね」

「そういうこと。1つ1つは名のある存在としても、2つ混じれば怪異の真実が見えなくなる。怪異が混じり合い、お互いの要素を取り入れて怪異が怪異らしい存在として融合した。――それを“複合怪異”とでも呼びましょうか」

「そ、そんな存在、今までいたのかよ?」

「私も初めて見たわ。普通なら考えられないことよ」


 複合怪異、か。怪異が混じり合い、偽りの存在と化した怪異。

 葵ですら知らなかった存在。脅威でしかない存在。本当に信じられない話だぜ。


「どうしてこうなったかはわからない。怪異が変化したのも、性質が異なる怪異が融合したのも。何もかもわからない異常な状況よ」


 そして、話は終わり。葵はふぅ、と息を吐いて、俺たちに向き直った。


「……今回の話はこの辺りにしましょうか」

「そうだね~。わからないことは考えても仕方ないもんね」

「その不思議を探し求める、とかしょっちゅう話してる割には謙虚ですねぇ」

「不思議は追いかけるモノだよ! 全部が全部わかる、はゴーマンだもんね!」


 わからないことはわからない。ゆっくりと、確実に真実を追い求める。

 それを理解してるところは楓の良いところか。そうじゃなきゃ困るけども。


「それで、もう1つお願いがあるんですけどぉ」

「茜ちゃん、何かな。やっぱりアキをよこせとか言わないよね」

「いえいえ。さすがの私でも、もう少し時間を空けて迫りますよぉ」


 いや、やめないのかよ。やれやれだぜ。


「写真部では新たに違う類の写真を撮りたいと思ってましてぇ」

「どーせ。茜ちゃんが変な盗撮写真を撮りたいだけなんでしょ」

「それはその通りなんですけどもぉ。活動は活動じゃないですかぁ」

「んで、新しい活動ってなんだ?」

「はいぃ! それは、これですぅ!」

「い、犬耳に……猫耳? なんなのコレ?」

「これを――楓さんや葵さんに付けて、写真を撮ろうと思いましてぇ!」


 よもや想像だにしない烏丸の発言に。楓と葵は目を白黒させていた。


「ちょ、ちょっと!? いきなり、なんなの!?」

「な、ななななな、なんでそんなものを私が付けないといけないの!!?」

「そんなこと言わないでくださいよぉ。ほら、楓さんがネコで葵さんがイヌですぅ」

「しかも私がワンちゃんなの!? ネコちゃんの方が私の雰囲気に会ってると思うのだけど!? 私の何処がワンちゃんに見えるのよ!」

「いつも楓さんや一秋さんに尻尾を振っているところ、ですかねぇ」


 それはあるな。たまに葵の行動がウチのホシやクロと似てるところあるし。


「絶対イヤよ! ここで宣言するわ。私は絶対にそんなものを付けないわ!」


 ……うわぁ。ものすっげぇ盛大なフラグを立てちまったな、葵。

 付けることになるだろうな。楓たちの押しの強さと葵のチョロさを考えると。


「えー、付けようよ! 葵ちゃん、きっと似合うよー!」

「なんで楓までノリ気なのよ!? おかしいでしょ!?」

「そうそう、楓さんもちゃんとネコ耳付けてもらいますからねぇ?」

「それはイヤだよ。絶対に」


 おいおい。ノンキだな、お前ら。それがアイツラの良いところだけど。

 そんな他愛のない話で、今回の怪異は正真正銘の終わりを告げたのだった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   



 ――“複合怪異”。事件の裏に潜むナゾと不思議、新たな脅威を垣間見ながら。

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