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桜坂高校新聞部の怪事件秘録~事件のオカルト事情は複雑怪異~  作者: 勿忘草
第2章 諸人縛りし闇の牢獄にて~きさらぎ駅、?????~
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第2話 “連続バラバラ殺人事件”は知ってる?

「そういえば、アキに葵ちゃん。“連続バラバラ殺人事件”知ってる?」


 登校を始めて、しばらくは普通の会話をしてたものの。

 ちょうど最寄りの駅の付近に来た辺りで楓が物騒な話題を出してきた。


「とんでもない話に話題を変えたわね。そんなにテストがイヤなの?」

「楓は勉強ニガテだからな。ウチの高校に入れたのも奇跡に近いくらいだ」

「アキも同じこと言えないじゃん。1年の数学や物理の成績ヤバかったし!」

「うっせぇ。全科目オールマイティにできない楓と違って、俺は文系科目なら点数取れるんだよ。お前とは違うんです!」

「……はぁ。真面目に授業を受けて勉強していたら、問題ないと思うんだけど」


 こうして言い争いをする俺たちに、呆れたような様子の葵。

 というのも、この少女。厨二病だったり、チョロかったりする割に……意外と学業には真面目に取り組んでいるみたいだ。

 意外にも勉強の成績はクラスでトップレベル。試験勉強も2週間前からしてるらしい。普通の高校生なら一夜漬けだろうに。


「それよりも事件の話だよ! バラバラ殺人だよ! 2人とも知ってる?」

「もちろん俺は知ってるけどさ。あまり外で話せるような内容じゃないだろ」

「えっと、私はテレビのニュースで少し見たけど。確かにそうね」


 ちょっとだけウンザリしつつも、俺は“あのニュース”を思い出した。


 ――連続バラバラ殺人事件。


 発端の事件が起きたのは1か月前。GWに入る直前だったか。

 都内の情報通信業、つまりIT企業に勤めている男性が急に行方不明になり。とある駅の線路で両手と両足が切断された死体が発見された。

 さらに、その死体は目が故意に抉られて、それはヒドい惨状だったようだ。だけど、轢かれたにしてはキレイな状態に現存していたから電車が原因じゃない。

 だから、警察は殺人事件として捜査を始めたわけだけど……。

 

「日本の警察って優秀なのに、まだ犯人が見つかっていないんだよね」

「そうだな。それで連日ワイドショーはそれで持ち切りだぜ」


 この事件が異質とされる理由。事件の内容以上に“あるコト”が大きかった。


 ――事件の痕跡、証拠、目撃証言。いっさい見つからなかったこと。


 死体を切断して駅の線路に放置する。もしくはその場で解体すると考えると時間も手間もかかる。痕跡だって残るはず。

 解体を行う場所と使用する道具、死体を持ち運ぶための道具と方法、目撃されずに目的地に辿り着き、遺棄する手段。そして、それらを人に見られないように行動するだけの方法と技術、運が必要。複数が必要になる。

 大抵はこの辺で痕跡が残るので、それが見つかり警察に逮捕されるはずなのに。


――だけど、今回の事件では、痕跡が何も見つけられなかった。


 犯行は1度じゃない。違う駅で、同じ手段で、確実に被害者が出た。

 どれも都内の、利用者数の多い別の駅。だけど、必ず起きて世間を騒がせる。

 頻度はこの1ヶ月で5回。これだけ猟奇的で、犯行に手間と時間が生まれる事件にもかかわらず――短期間に繰り返されて、なおかつ痕跡が見つからなかった。

 そのため、警察に対する批判や信頼失墜を通り越して、ネット上では変な憶測が飛び交うようになった。警察の身内の犯行とか、国家ぐるみの犯行とか。

 そして、この中には怪異とかオカルト染みた陰謀論まで存在して――もしや。


「お前、まさか。この事件、怪異の仕業とか考えてないよな!?」


 とっさに浮かんできた言葉が頭をよぎり、つい大声を出してしまった。

 それはちょうど駅の改札を通る瞬間、つまり人がそれなりにいる場所で。人の視線がちらりと飛んできて恥ずかしい。

 そして、俺のイヤな気持ちに、得意げに笑う楓。やっぱりやる気だ、コイツ。


「ごめいとー! 新聞の特大スクープとして調査するんだよっ!」

「やっぱりかよ! 俺が言えた口じゃないけど、お前はこりねぇな!」

「あなたは相変わらず、無鉄砲というかトンチンカンというか……! 怪異が関係なかったとしても何かあったらどうするのよ!」

「褒め言葉として受け取っておくよ! この世界の不思議はいっぱいだー!」


 ほんの1か月前、未知なる異界に迷い込み――異形の物に襲われた俺たち。

 あの時の記憶は今も俺の頭に残っている。むしろ消したくても着せない記憶。

 自身が知りえない存在に対する畏怖、脅威に晒されていた時の恐怖。楓だって忘れてないはずなのに……この不思議への元気の良さだ。


「前にも散々言ったけど……改めて忠告するわ。怪異は存在するの。そして、遭遇したら命の保証はない。関わるのはやめなさい」

「えー、葵ちゃんは心配症だよ! 前回の怪異も乗り越えたじゃん!」

「前回は奇跡だったの! もし私がいなかったら、対処法が明らかな怪異じゃなかったら一秋くんが――これは、良いけど。とにかくダメ!」


 一秋くんは……その先は何を言う気だったんだ。気になるだろ。あの時もそうだったけど、葵は俺に関して何かを隠しているような。


「ぶー、ぶー。なら、調べるだけなら良いでしょ? あまり危ないコトには関わらまないようにするしさ」

「それなら良いけど……私が何故か付き合わされていることを除いたらね」

「もう同じクラスメートで、友だちで、部活仲間なんだから! そんなツンデレみたいなこと言わないで、もうちょっと素直になってよ!」

「ツンデレ? 前から聞くコトあったけど、どんな意味なの?」


 えっ、今どきになってツンデレの意味を知らないの、葵は?


「普段は素直になれなくてツンツンしてるけど、本当は相手のことが好きで、心の中ではデレデレしている人のコトだな」

「そうなのね。勉強になったわ――って、誰がツンデレよ!」

「えー、葵ちゃんを表す言葉としてはイチバン適していると思うんだけどなー」


 楓と同意見だな。それにツンデレキャラって軒並みチョロイし。

 

「脱線した話を戻すぞ。事件を調べるんだろ。高校生の俺たちがどこまで情報を集められるかわからんけどさ、やってみようぜ」

「そうだね。頑張ろう、おー! ほら、葵ちゃんも!」

「……お、おー。……ちょっと恥ずかしいわ」


 楓と葵、握り拳を空に掲げる仕草をしている2人。

 無邪気なソレに子供っぽさを感じながら、タイミングぴったりに到着した電車に乗ることにした。


「線路の上に放置された死体。どんな感じだったんだろうね」

「……電車の中でソレの話題を蒸し返すの、やめようぜ?」


 殺人事件で殺される人数なんて、日本全体の死亡者の割合で考えたら低確率。

 まさに日本の治安の良さを証明しているんだけど、俺たちが事件に巻き込まれることなんて可能性はわずかだけど……それでも不安だ。

 そんな不安を抱きながらも時間は過ぎていき、高校の最寄りの駅に到着しかけた瞬間。



 ―――キイィィィィィィィィィッッッ!!


 

 耳をつんざくような音と、体が引っ張られるような感覚が俺たちを襲った。

 無理につり革をつかんだせいで体に痛みが走り。次に、2人の無事が気になった。


「だ、大丈夫か?」

「ええ。私は大丈夫。楓も無事そうね」

「良かった、みんな何事もなくて。だけど、なんで急ブレーキが……?」


 衝動が過ぎ去って次に浮かんだ2人のこと。無事みたいで良かった。

 それにしても駅のホームに入ろうとした電車が急停止。普通じゃない状況だ。

 考えられるコトはある。線路に不審物があったとか、非常ボタンが押されたとか。

 


 ――扉の向こうから聞こえる悲鳴にどよめき。



 だけど、尋常じゃない外の反応で何が起きたのかを想像できてしまった。

 この駅にはホーム扉が設置されてないから線路との境界線は黄色い線のみ。電車が急ブレーキをかけてしまうほどの事態。


『人が電車に轢かれたってツイートされてる!』

『ウソでしょ! そんなこと本当にあるの!?』


 この場の人たちも状況を理解したのか。電車内に声が飛び始めた。

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