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厄介な訓練2

※キース視点※


ハマス隊長との相手を代わって貰えたのは嬉しいけど、ジョージアナは大丈夫かな?と若干不安になる。

ハマス隊長が彼女を気に入っているとは言え手を抜くはずはないし、何よりその殺気がヤバい。

何て言えば良いんだろう。

目の前に立ってるだけなのに、これ殺されるやつだってなる感覚。

訓練なのに、めちゃくちゃ怖い。

毎回、リリアンの元に駆け出さない僕は偉いと思う。

ついでに、普段からジョージアナに迷惑を掛けている僕に対して周りは優しくない。

リリに関しての事はそこまでじゃないのに!

仕方ないなってなるのに!

クリス先輩は見舞いに行く度に、これ以上はジョージアナに迷惑は掛けてはいけませんって先生みたいな口調で言って来る。

ジョージアナ以外でお前を庇ってくれるような女神は現れないとか、殆ど脅迫じゃないのかな?

全体的に色素の薄いクリス先輩が言うと予言みたいで余計に怖い。

何だかんだ許してくれる彼女に甘えている自覚もあるから、何も言い返せないし。

ウォルター先輩には、初日の事も知られている上にジョージアナの指導担当だから余計に怒られる。

彼女の見てない所で!

あれは、自分が家名で呼ばれている八つ当たりが含まれている事を僕は知っている。

男爵家の次男なのは僕のせいじゃないのにね!

フレア副隊長にも、隊長室で怒られた後に追加でお小言を言われる。

これ以上ジョージアナに負担を掛けて隊長室の温度を下げるなって。

ハマス隊長には訓練で扱かれまくってるよね、明らかに。

剣術と体術が得意って言っても、無敗の獅子とか二つ名の付いた人が全力で向かって来たら無理だよぉ…

まぁ、僕とリリが一緒に暮らす為に知恵を絞ってくれた時のジョージアナに惹かれたみたいだから、応援しようとは思っているんだよ?

それに、最近はジョージアナの負担になってるのは僕よりも、マルロウ隊長だから余計に理不尽に思うのかもしれない。

あの人、実力主義とは真逆の貴族至上主義だからハマス隊長を目の敵にはしてるけど、悪人にはなれないタイプだから排除し難いのも分からなくもないけどさぁ…

取り敢えず、僕が書類仕事が出来ればジョージアナの負担は減るけど、他へのお手伝いは増えそうだって皆が分かっているから、これくらいで済んでるのかも…

そんな事をつらつら考えていたら、ハマス隊長の前で木剣を構えたジョージアナの雰囲気が変わっていて息を飲む。


「私はいつでも良いぞ!ジョージアナ!」


「はい!」


ハマス隊長の掛け声に短く返事をしたジョージアナは、まるで狩りをする前の狼みたいだった。

一人なのに集団で狩りをする狼に見える。

返事と共に、素早く駆ける彼女の銀色の髪が狼の尾のように流れる。


「え!?何で僕の方に来るの!?!?ハマス隊長あっちだよ!!!」


「キース!歯を食いしばって足を踏ん張りなさい!!!」


「は?…ぐぇっ!!!」


ハマス隊長に向かうとばかり思っていたジョージアナがこちらに来たと思えば、腕と肩に衝撃が走る。

踏み台にされた?と思った瞬間には地面と熱烈なキスをしていた…

キスはリリとしかしたくないのに!!!

慌てて見上げれば、飛翔したジョージアナがキラキラと日の光を浴びながら、ハマス隊長に向かって木剣を突き立てようとする姿だった。

いや、確実に仕留めに行ってるやつじゃん…


「戦法がエゲツない…」


隣に居たウォルター先輩に同意しかない。

でも、僕を助け起こすまではしてくれなかった。

バキッやらビシビシッと木剣からしちゃいけない音がしてハッと2人に視線を戻せば、ハマス隊長は自分の木剣でジョージアナ自身と彼女の木剣を受け止めた場面だった。

その瞬間、ジョージアナの体が横に吹っ飛ぶ。

え?今、あの人木剣を持ってない方の腕一本で人を吹っ飛したの??

地面に叩きつけられたジョージアナは、ゴロゴロッと派手な音を立てて転がり動かなくなった。


「ジョージアナ!!!生きてる!?!?」


「え…?あのスピードで吹っ飛ばされて受け身、取った…?」


僕達の声を皮切りに周りもザワザワとし出すが、混乱しつつも僕とウォルター先輩はジョージアナの元へと走って行った。

え?ウォルター先輩、今受け身って言った?

本当なら、2人揃って規格外過ぎない??


「すまない!ジョージアナ、無理に動かないでくれ!」


「いたたた…あぁ。ハマス隊長にご心配お掛けするなんて。申し訳ありません」


僕達が近くまで行く頃には、既にハマス隊長がジョージアナを抱き上げていた。

その腕の中で落ち込むジョージアナ。

生きてた!

しかも何か大丈夫そう!?


「ジョージアナ!喋って大丈夫なの!?」


「そうだ、ジョージアナ。咄嗟の事に加減も何も出来なかったんだ。肋骨が折れているかもしれない…」


「ひぇ…」


「うわぁ…」


僕とウォルター先輩の悲鳴というか呻きが重なる。

いや、本気の隊長とか死んじゃってもおかしくないよね!?

逆に何でジョージアナは生きてるの!?!?


「いえ、骨までは折れていないかと…確実に打撲はしておりますが。自力で立てず申し訳ありません」


「いや、謝罪すべきは私だ。まずはこのまま医務室まで運ばせてくれ」


しょんぼりするジョージアナは珍しいけど、本当何で打撲だけで済んでるの?

骨折に気付いてないだけ?

僕もウォルター先輩も、他の誰も何も言えないまま2人を見送ったのだった。

ジョージアナって、何者…?

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