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厄介な訓練1

さて、今日は久々に体を動かせる訓練日です!

毎日訓練はあるのですが、私の場合は事務方の仕事が立て込んでいた為に久々という訳でして。

やっぱり、新人が兼任って無理じゃない?

入団4ヶ月目で訓練を休みがちとか、駄目だと思うんですよね。

まぁ、事務方の仕事が増えたのも本当なんですが…根本的な原因は、何故か他の治安維持部隊の隊長からも手伝いをお願いされる事が増えたからなんですよね。

自分達でやれよ。


「やぁ!平民のジョージアナじゃないか!今日は私の隊との合同訓練だからな、私自ら教えてやろう!光栄に思うが良い!」


「これはこれは麗しのマルロウ隊長では御座いませんか!とても光栄では御座いますが、マルロウ隊長を独り占めしてしまっては皆の不興を買ってしまいますわ。貴族の中の貴族であり騎士道精神に則ったマルロウ隊長を勇姿を、私のような平民は遠くから拝見させて頂くだけで十分に御座いますの…」


「ははは!相変わらず美しく謙虚だな!そこも好ましい!では、そこで私の勇姿を存分に見るが良い!」


「はい!ご武運を!」


はい!原因コイツー!

うっぜぇ。

相変わらず、ちゃんと笑顔で対応出来たか不安になる勢いで嫌な奴だわぁ。

こっちは、私の嫌味を全て褒め言葉に完璧に変換して受け取る能力にだけ長けたお前のせいで忙しいんだよ!

手伝いに呼ぶな!

平民平民って連呼すんなら、お貴族様だけで業務回せよ!

おっと、心の口調が乱れました。

そう、あのデイビッド・マルロウ隊長のせいで私の負担は一気に増えたのです。

マルロウ伯爵家の三男という事は、言い続けられたせいで嫌でも覚えました。

何て呪いか。

どうも、先輩に色々と話しを聞けば、平民の出なのに出世頭と呼ばれるハマス隊長と同期で、いつも比べられて拗らせたらしいのです。

それから勝手にライバル視をしているらしく、今回その下に付いた新人が事務方との兼任なのが気に食わないのか、妨害行為なのか何なのか最近物凄く絡んで来るんですよね。

めっちゃ迷惑!!!

別にハマス隊長への妨害行為じゃなく、私だけへの妨害行為になってますと声を大にして言いたいです。

こちらは、キース以外はダグラス・フレア副隊長も他の先輩も同期も皆仕事が出来るんですから。

そっちが貴族って肩書きだけの能無し隊なだけでしょ!

いや、そんな隊のせいで苦労している良い人も若干名居るから手伝うは手伝うけどね。

少人数且つ真っ青な顔で、大量の書類を捌いてる姿は見ていられないんですよ。

近い内に、クリス先輩みたいに倒れる人が必ず出てしまうでしょう。


「うへぇ…またハマス隊長から見えない所で、ジョージアナはマルロウ隊長に絡まれてたのぉ?仕事が出来る美人は大変だねぇ、お疲れ様」


「あら…キースはもう一人で書類仕事が完璧みたいだから、明日から私は私の業務に専念させて貰いますね?」


「ひぇっ!見てたのに止めなかったのは謝るから!!!ゴメンて!でも、いっつも上手く躱してるじゃんかぁ。前に食事に誘われた時も『お貴族様は、いつも孤児院や教会へ寄付されているのでしょう?私は騎士をさせて頂けております。ですから、私を誘って下さるよりも困ってらっしゃる方々への寄付にお使いになって?お優しいマルロウ隊長を尊敬しておりますの』って言って逃げてたでしょ?』


緩い雰囲気で近付いて来たキースに思わず八つ当たりしてしまいました。

上手いって言われても、嫌なものは嫌なのよ?

食事に誘われた時も、一語一句覚えるくらい見ていたのなら助けて欲しかったですよ。

それで寄付金増やしたとか言われても、ねぇ。

私への迷惑は減ってないし。

キースは次から書類ミス1回に付きお菓子1個貢がせよう…


「え?何か怖い事考えてないよね?これからも助けてくれるよね!?僕とジョージアナの仲じゃないか!」


そんなに悪い顔をしていたかしら?…疲れているのかもしれません、気を付けましょう。

それよりも、どんな仲だ。

お願いお願い!と付き纏うキースをあしらっていたら、号令が掛かり訓練の開始が告げられました。

私は、指導担当になって下さっているウォルター先輩の側に駆け寄ります。

入寮初日に出会った親切な方が指導担当なんて、私は運が良いですよね。

キースの件で半減している気もしますが。

いや、理想の上司を体現しているようなハマス隊長の隊に入れたし、やっぱり運は良いかな。





「ジョージアナ、最近訓練に出れてなかったけど動きは悪くなってないな。上手いよ!……相変わらず良い匂いもするし…」


久々の剣術訓練でしたが、及第点くらいには動けていたようで一安心です。

ウォルター先輩は、とても親切丁寧な教え方で初心者の私でも理解がしやすいのです。

でも、今も最後が聞き取れなかったんですが、結構そういう事があるんですよね。

ウォルター先輩には、気にしないでと言われたので問題はなさそうなんですが。

まぁ、優しくて親切な人だし良いかな?


「有難う御座います!ウォルター先輩のご指導が丁寧で的確なお陰です。そういえば、最近って体術訓練って少ないんですか?私が出ると剣術訓練ばかりなので…」


「え!?あ〜…ジョージアナが事務方で出られない時に体術訓練が多いから、そう感じてるんじゃないかなぁ〜?そ、そうだ!そろそろアイザックって呼んでくれて良いんだよ!?」


「そうなんですか。私、最近は訓練に出れていませんし仕方ないですね。それと、呼び方ですか?あの…ウォルター先輩って呼ぶのに慣れてしまいましたし、そう呼ばせて頂くのが好きなんですが駄目でしょうか?」


「ん"ん"っ!!!…だ、駄目じゃない…です」


ウォルター先輩は了承の言葉と共に、何故か胸に手を当て膝をついて蹲ってしまいました。

慌てて駆け寄ろとすれば、いつの間にか隣へとキースが来ていました。


「ジョージアナ〜、あれは良くない。無自覚良くないよぉ」


「は?ちょっといきなり何なの?ウォルター先輩が具合悪いかもしれないのよ!?ふざけないで!」


「だ、大丈夫!ジョージアナ、心配しないでくれ!これは、ジョージアナみたいな後輩が持てた感動でなっただけだから!」


ウォルター先輩は、何て後輩冥利に尽きる言葉を言って下さるんでしょう…

私も感動で打ち震えていると、空気を読まないキースが騒ぎ始めます。

煩いですよ。


「それよりも!それよりもだよ、ジョージアナ〜!匿ってくれない!?僕だけハマス隊長と組まされるんだよぉ。またボコボコにされる!いや、既にされてる!」


「まぁ…何て贅沢な悩みを。新人が、あのハマス隊長と剣術訓練で組めるんですよ!?それを渋るなんて!貴方から剣術と体術を取ったら何も残らないでしょうに」


「え!?もっと残るよ!リリとかリリとかリリとか!!!ジョージアナ酷い!」


それはもう、リリアンしか残らないと自分で言っているのでは?とキースへ冷めた目を向けてしまいました。

でも、事実リリアン以外は本当に残らなさそうなので訂正も出来ません。

残念極まりない男です。

私の平穏の為にも、今後はより一層リリアンを大切にしなければ。


「ジョージアナ、ならば今日は私と組もうか?」


「え…?」


突然後ろから声を掛けられ、振り向けば話題にしたばかりのハマス隊長がおられました。

聞かれた!

恥ずかしくて顔から火が出そうです。


「嫌かな?」


「い、嫌だなんて!そんな事御座いません!私で良ければ是非お願い致します!!!」





勢いに任せて返事をしてしまいましたが、緊張でどうにかなってしまいそうです。

ですが、私は何と光栄なのでしょう。

ハマス隊長はその場に立っているだけなのに、威圧感で周りの温度が下がったような気さえします。

緊張感から周りの邪魔な音さえ感じません。

ああ、これはトムじいさんの牧場に出た狼と対峙した時より怖い…

ヤらなければ、ヤられてしまいます。

これは、全力で殺さねばなりません。

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