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武人勇者の戦闘記 ~最強殺人剣の継承者、勇者に選ばれたので、異世界で死合を謳歌する~   作者: 虎馬チキン


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18/30

18 ダンジョン攻略中

 ━━死条一刀流 (じゅう)ノ型 惨劇(さんげき)舞踏(ぶとう)


「ギィッ!?」

「ギャッ!?」

「ギャウッ!?」

「キュッ!?」


 現在地であるダンジョン地下9階層にて、遭遇した魔物の群れを撫で斬りにしてから一息つく。


「中々に苦戦したな」

「かすり傷一つ負わず、息の一つも乱れてない人が何言ってるんですか」

「だが、紛れのない本心だ」


 このダンジョンは地下1~9階層を上層、10~19階層を中層、20~最下層である30階層までを下層と呼び、下の階層程、強力な魔物が出現すると聞いた。

 私が先程まで相手をしていたのは、その中では最弱である上層の魔物達。

 だが、奴らは確かに弱かったが、その分身体の小さい者が多く、的が小さい上に、足下に向けて刀を振るわなければならなかった為、中々に戦いづらかった。

 おまけに、場所によっては足下に仕掛けられた罠に文字通り足を掬われ、尚の事苦戦した。

 思わず『罠感知』のスキルを取ってしまったくらいだ。


 正直、魔物よりも罠の方が厄介だったのだが、魔物の中で厄介だった者を上げるとすれば、虫型の魔物であろう。

 最初に遭遇した大鼠のような動物型であれば、人間と同じ哺乳類という事で、なんとか動きが読めた。

 爬虫類型もギリギリなんとかなった。

 だが、虫型はそうもいかない。

 虫を相手に、筋肉や関節の動きから次の行動を予測する事は困難を極める。

 そして、今回の狙いはジャイアントスパイダーなる巨大な毒蜘蛛、即ち虫だ。

 上層にいるような虫ならばステータス差でどうとでもなったが、その大蜘蛛がオーガ並みの身体機能を持っていた場合、相応の苦戦を強いられるだろう。

 まあ、望むところではあるのだが。


 あと、厄介だと感じたのは、私の常識から外れた動きをしてくる魔物か。

 針や飛ばしてきた針鼠や、口から火を吹いてきた蜥蜴、毒液を射出してきた小蜘蛛など、鑑定で事前に把握していなければ食らっていたかもしれぬ。

 だが、苦戦したという事は改善点が見つかったという事だ。

 そういう意味でも、上層での戦いは意味のある時間であった。

 三桁を軽く越える数を斬った甲斐があったというもの。


 ちなみに、斬った魔物の死骸は全てアイテムボックスの中に入れている。

 弱い魔物の素材も、はした金程度としてなら売れるらしいのでな。

 その際、アイテムボックスのLvが上がり「狩り過ぎですよ! 絶滅させる気ですか!?」とナナに言われたので、多少は自重するつもりだ。

 とりあえず、上層での狩りはこの辺りで終わりにしておく。


「では、次は中層に向かうとするか」

「ですね」


 そして、今度は中層で血の雨が降る。

 中層で出現したのは、狼や熊などの中型サイズの魔物だった。

 正直、上層よりも戦いやすい。


 そうして戦い続け、地下14階層まで到達し、斬り捨てた魔物の数が200を越えようかという時。

 私は休憩中、ある事に気づいた。


「Lvが上がっているな」

「そりゃ、これだけ虐殺すれば上がるでしょうよ。当たり前です」


 私の現在のLvは45にまで上昇していた。

 道理で身体が軽いと思った。

 ダンジョンに入る前が36だったので、9Lv上がった事になる。

 オーガの時は一体で一気に35も上がったというのに、これだけ倒して、たったの9とは。

 これはどういう事なのかとナナに訪ねてみたところ、


「Lvを上げる為の経験値っていうのは、強い相手を倒した時程、多く獲得できるんです。

 そして、Lvが上がれば上がる程、次のLvに上がる為に必要な経験値は多くなります。

 つまり、強くなればなる程、更に強くなるのは大変になるって事です。

 頑張ってくださいね」


 という答えが返ってきた。

 私は納得した。


 それはそれとして、Lvが上がった事によりスキルポイントも増え、残りのポイントに余裕ができた。

 なので、あった方が便利だと思えるスキルを三つ、新たに取得する事にする。

 選んだのは『気配感知』『危険感知』『MPブースト』『SPブースト』の四つだ。

 気配感知は、周辺にいる者の気配を感じやすくなるスキル。

 危険感知は、自身に迫る危険を、直感という形で直前に知らせてくれるスキル。

 MPブーストとSPブーストは、それぞれ発動中の間MPとSPを消費し続ける事で、ステータスを上昇させるスキル。


 まず、感知スキル二つを選んだ理由は、隠密能力の高い魔物に何度か奇襲を受けた為だ。

 当初は気配など自前で読めると自惚れていたが、野生の獣の隠密能力は私の予想以上であった。

 別に『隠密』のスキルを持っている訳でもないのに、十度に一度は私の不意を突いてくる。

 それに対処する為、少々情けないがスキルの力を頼った。


 だが、そう思うのは恐らく間違いなのであろうな。

 スキルとは己の力だ。

 それに頼って情けないと思うのは、未だにスキルという理解しがたい力に対する忌避感が残っている証。

 この世界に骨を埋め、この世界に合わせて死条一刀流を進化させると決めた以上、この世界の理であるスキルに忌避感など抱いてはいけない。

 それすらも飲み込み、己の力としなくては。

 そうした考え方をするように心掛けるとしよう。


 そして、MPブーストとSPブーストは、スキルポイントを無駄に余らせておくのもどうかと思ったので取った。

 普通に便利であり、私との相性も悪くなかったからな。

 この二つのスキルで消費するMPとSPは、超回復による回復量よりも少ない。

 つまり、殆どなんの代償もない強化という訳だ。

 なので、スキルLvを上げる為にも、これからは常時発動しておく事にした。

 超回復に頼っているようで些か癪だったが、こればかりは致し方なし。

 どうせ、常時発動型のスキルである超回復はオンオフが効かないのだから、気にするだけ無駄だ。


 それと、スキルと言えば一つ気になった事がある。


「スキルを持っている魔物が少ないな」


 そう、スキルを持っている魔物は異様に少ない。

 大抵の魔物がスキルポイントを無駄に余らせていた。

 そして、スキルを持っている魔物にしても、持っているスキルの数はせいぜい一つか二つ、多くても三つが限度。

 魔物は、スキルを覚えづらいのだろうか?


「そりゃ、魔物にステータス画面を見る知能も、スキルポイントを使う知恵もないですからね。

 魔物がスキル持ってる場合は、大抵、その種類が生まれ付き持ってるスキルに限ります。

 さっきの蜘蛛の毒と糸みたいな感じで」


 成る程、そうか。

 言われてみれば、その通りであった。


「では、スキルポイントを使ってくる魔物はいないのか?」

「いえ、極一部だけですが、います。

 魔物の中には、ある一定のLvに達すると進化して、姿形がまるっきり違うものになる種類がいるんですが」

「進化?」

「一瞬で変化する成長期みたいなものだと思ってください。

 地球でも、芋虫が進化して蝶になったりするでしょう?

 そんな感じで姿を変える魔物が結構いるって事ですよ」


 成る程、生命の神秘か。

 これは理解しようとするだけ無駄だな。


「話を戻しますけど、実は全ての魔物はLv100に到達すると、必ず人型へと至る進化をするんです。

 そうして人型へと至った個体は『魔族』と呼ばれます。

 魔族は見た目通り、人間に匹敵する知能を持っているので、当然ステータスもスキルポイントも使ってきます。

 それが、スキルポイントを使ってくる魔物です」

「そうか……!」


 そんな強敵が存在するのか。

 魔物のステータスは人間に比べて高い。

 種類にもよるが、あのオーガでさえ、私の体感ではエドワルド殿を超える力を感じた。

 オーガの場合は、あくまでもステータスだけの強さであったが、その魔族とやらは違うのだろう。

 何せ、人間に匹敵する知能があるのだ。

 ならば、人外の力で武術を扱ってきても不思議ではない。


 しかも、魔族のLvは最低でも100。

 間違いなくオーガなど軽く超えるステータスを持っているに違いない。

 そんな強敵との戦いを想像するだけで、血が滾る。


「その魔族とは、どこへ行けば戦えるのだ?」

「魔王軍に何体かいますよ。その中でも一際強力な十体の魔族が魔王軍の幹部を務めていて、奴らは『十魔』と呼ばれています。

 魔王を倒す上で、決して避けては通れない存在なので、覚えておいてください」

「そうか、滾るな」

「その悪役クレイジースマイルやめてくださいって言いましたよね!?」


 む、顔に出ていたか。

 気をつけるとしよう。

 そうしなくては、またナナを怯えさせてしまう。


「とにかく! そんな連中と戦うのはまだまだ先の事でしょうし、今はダンジョン攻略に集中してください!」

「そうだな」


 そうして私達は休憩と話を切り上げ、再びダンジョンの奥へ向かって歩き始めた。

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