皆でお風呂!
「ちひろ! 大浴場行こ!!」
「え?」
私の元に、ねねかが声を掛けてきた。その横にはななが複雑な顔をして立っていた。私達三人は寮のルームメイト。いつもはバラバラにお風呂を済ませている。今日はどんな風の吹き回しだろう……ななはきっとねねかに強引に引き込まれたんだと思う。嫌な予感しかしない。確かに仲良しではあるけど。お風呂ってなんだか気恥ずかしい。女同士だけど、この歳……高校生の思春期になってからなんてちょっと……。
「決まりね! 行こ!」
「いや、ちょっと!?」
私の返事を聞かずにねねかが私の手を強引に引っ張り、寮の部屋から出ようとする。いやちょっと、急に強引にされても。いいと返事をしたとしても準備だってあるし、このままでは入れない。と、思っているとねねかが切り出す。
「あ、準備はちひろのも出来てるよ~!」
「ちょ! 勝手に!」
「……ちひろ、あきらめた方がいいぞ?」
どう巻き込まれたかわからないけど、ななは観念しているようだ。こうなったねねかはもう誰にも止めることが出来ない。私も堀は塞がれた。何を企んでいるのかわからないけど、もう従うしかない。私も観念する。
「はいはい、わかったわかった。そんな引っ張らないで?」
「えへへ! ありがとう!」
私は観念して、二人の後を追いかけることにした。私はそっとななを見やる。ななは少し気の重い顔をしている。私はそっとななに耳打ちをする。
「ねぇ、どういう風の吹き回しかしら?」
「……さあね。何時もの気まぐれだろ」
「ななは抵抗したの?」
「したけど、さっきの通りさ。何時もの事だろ?」
ななはクールだったけど、ねねかの強引さには勝てなかったようだ。その情景が私にも目に浮かぶ。きっとななも根負けしたんだろう。
嫌な予感をしつつも私達の歩みは止めずに大浴場の脱衣所までたどり着く。大浴場に着くと、ねねかが持っていた着替え、ななの分も持っていたようでそれぞれ受けとり、脱衣所のカゴに入れる。ねねかはさっと服を脱ぎ捨て、私とななを凝視する。……正直脱ぎにくい。
「ねぇ、ねねか」
「なあに?」
「見るのやめてくれない?」
「なんで?」
「恥ずかしいじゃない!」
「なんで?」
「え?」
「だってほら、私はもう裸だよ?」
ねねかは体を大の字にして裸体をあらわにする。いや女の子同士だからってそんなおおっぴろげにされても……私は視線を伏せる。ふと私は隣のななを見てみる。そこでは平然と上着を脱ぎ、ズボンを脱ぎ、そしてブラジャーに手をかけるななの姿が見えた。え? この状況で、恥ずかしくないの? 逆に私が恥ずかしいことをしているような。
「わかったわよ……」
「うん♪」
私はねねかの視線を感じながら、ゆっくりと上着の袖を潜らせる。そう、ねねかのねっとりとした視線を感じながら。スカートを脱ぎ、下着に手をかけるとやっぱり視線が気になる。
「ねぇ、ねねか……」
「……下着可愛いね」
「ひゃ!?」
私は不意打ちを食らい、変な悲鳴を上げる。可愛い……嬉しいけど不意打ち過ぎるよ。まぁ、褒めてくれるならうれしいけど。でも、その視線はやめてほしい。なんか、目がいやらしい気がする。気のせいであってほしい。私はブラに手をかけ、ホックを外す。そしてパンツに手を賭けた時、やっぱり視線が気になってしまう。
「発展途上かな?」
「ああ、そうだな」
「!?」
相変わらず大の字のねねか。すでに服を脱ぎ終わってタオルを巻いているなな。そんな二人にまたも不意打ちの言葉を食らい、悶絶する。発展途上……ひどい……。ちょっと涙目になりながら私もショーツを脱ぎ、すかさずタオルで隠す。
「別に隠さなくてもいいじゃん!」
「ねねかは隠した方がいいわよ……」
私はそっとねねかに釘を刺すも、聞く耳持たずで浴場にと進む。ねねかはタオルを肩でしょっているみたいで隠す気は全然ない。まぁ、女同士だし知らない間柄でもないから良いのかも知れないけれど。浴場に入ると誰も居なかった。それが幸いかも知れない。
「広いね! 貸し切り状態だ!」
「本当だ。珍しいね」
「いや、すいてる時間を狙ったんだろ?」
そう言いながら入り口のそばにあるかけゆで体を流す。ねねかは頭からざばーっと。ななは肩からゆっくりとタオルで体を隠しながら湯をかける。私はと言うとななよりは色っぽくないけど、肩から流す。に、しても、ななの体のラインは女の私から見てもうっとりしてしまう。どうすればそんなに育つんだろう。
「なんだい? ねねかの真似かい?」
「い、いや、なんでも!」
「ななちゃん、スタイルいいもん。見惚れちゃうよね~。ほら、隠しでないで!」
そう言うとねねかはななのバスタオルをはぎ取る。ななは少し恥ずかしそうな表情を見せるが毅然とした態度でねねかを見る。ななの裸……私は少し見惚れてしまう。いやいやいや、私にはそんな趣味は無い! 慌ててかけゆをついで肩から浴びる。
「ちひろ、様子がおかしいぞ? かけゆかけすぎなんじゃないか?」
「いやぁ……ななちゃんの裸見て、発情してるんですよ~」
「な、ちがっ!!」
耳が熱い。私はすっかり火照ってしまう。私は火照りを鎮めようと、あわてて洗い場でシャワーの栓をひねる。シャワーからはぶわっと冷水が降り注ぐ。私は冷たくてつい変な声を上げてしまう。
「ひゃわ!」
「おい、大丈夫か?」
「きっと大丈夫じゃないんですよ~。えい!!」
ねねかはそんなことを言って、私のタオルを引ん剝く。シャワーで硬直した私はその手を振り払うことが出来ず、肌が露わになる。思わず体を隠してしまう。
「きゃっ!」
「ほらほら、減るもんじゃないし」
「そうだぞ? 女同士だからそんなに恥ずかしがることは無いと思うぞ?」
そう言われ。私だけ恥ずかしがっても仕方がない。私は仕方なく二人に肌を見せる。恥ずかしいけど。ここで一人恥ずかしがってる方が不自然だ。私は涙目で二人を見ると、体を洗い始める。私の隣にねねか、その隣にななが座った。
「う~ん、発展途上だねぇ……」
「な、なにが?」
「ほらここ! 私が洗ってあげる♪」
「な、なにを……きゃっ!」
「ほれほれ、刺激すると大きくなるかもよ?」
「あっ……」
「うへへへへ!」
「う、う~ん……」
いい寄ってきたねねかは私の後ろに来て、私の体を洗い始める。そして私はねねかにいいようにされる。いや、洗ってくれてるだけなんだけど……ちょっと力が抜けてきた。頭がぼんやりとそして熱くなる。
「次はここを……」
「いい加減にしろ!」
見かねたななが、風呂桶でねねかを殴る。その痛みにねねかは頭を押さえて悶絶する。涙目でねねかはななに抗議する。
「だって、発展途上のちひろにレクチャーを……」
「お前の趣味だろ?」
「そ~ゆ~ななちゃんは良いものをお持ちで……」
ねねかはそう言うと、今度はななの後ろに立つと両手であふれるばかりのななのそれをつかむともみほぐした。ななの顔は高揚して真っ赤に染まる。ななのそれは私のよりもはるかに大きい。ちょっとねねかを羨んでみる。
「お、ちひろちゃんも興味ある?」
「え!? いや! その……」
「ほれ、片方どうぞ!」
「か、勝手に言うな!」
私はねねかに手を引っ張られて、ななのそれに触る。柔らかくて大きくて……。なんだか羨ましい……。ちょっと意地悪して、先を指ではじく。
「あっ!」
「ん? ここがいいの?」
「いや……」
「ぐへへへへ……じゃあ、ここは?」
「あん……」
なんだか変な気分。これじゃぁまるで、ななを二人で……。
「せっかくだから、ここも……」
「だ、ダメ……」
「……やりすぎ!!」
正気を取り戻した私は、ねねかの後頭部に桶をぶつける。ねねかはまたその痛みでも悶絶する。痛みが和らいだところで涙目で私の方を恨めしそうに見る。
「ちひろだって、ノリノリだったじゃないかぁ~」
「いや、やりすぎだって!」
「……ゆるさない……」
「「え?」」
「ねねか、許さない!! ちひろ、ねねかを後ろでおさえて!」
「え?」
「いいから! こう!」
ななに言われるがまま、私はねねかを後ろからホールドする。ねねかの体温が私に移ってくる。ちょっとだけ。ちょっとだけ心地いいと思ったのは内緒だ。
「背中が幸せ~」
「!?」
「余裕だな。その余裕も今のうちだ!」
そう言うと、ななはねねかの体を洗い出す。さっきねねかにやられた仕返しをするかのように。私はただその様子を見つめる。
「さっきはよくも……覚悟はできてるな?」
「はい? なんでしょう?」
「私が体を洗ってやるよ! じゃあ、ここからだ!!」
「あっ、うん!」
「……効かない?」
「もうちょっと優しくして?」
「……」
「そう、そんな感じ……」
「……調子が狂う!! ここだぁ!!」
「ひゃっ! そこは……」
「ふふふ……どうだ?」
「ひゃん……う、う~ん……」
「……辞めた!! こっちが変な気持ちになる!!」
「もっとぉ~!」
風呂桶がねねかのおでこに当たる。そして私はホールドを解除する。なんか……ねねかが妙に色っぽくなってる。三人は沈黙して、体を洗い終えた。
そして三人で湯船につかる。終始無言。変な空気の中、私達は脱衣所に入り服を着て、部屋に戻って、それぞれベッドに着いた。
……私はその日、変な夢を見た。