楽園
「ユート、おはよう!」
学園内を歩いているユートに女性が後ろから引っ付き惜しげもなく体の感触を伝える。
その姿に近くにいた女性陣は思い思いにユートに引っ付いて己の身体を使ってアピールする。
そのせいでユートは身動きが取れなくなる。
だが、女性陣の臭いと体の柔らかさにだらしない表情をしている。
「ぷっ。ユート、代わりに鞄を渡してくれ。それは教室まで運んでやるよ」
「良いのか?」
「構わないって。ほら渡せよ」
そうして鞄を受け取った者にユートから信頼されて羨ましいという視線が突き刺さる、
受け取った者は自慢げに教室へと歩いて行った。
「ユートの役に立てて彼は嬉しそうだけど、ちゃんとお礼は言わないとダメよ」
それを見送ってユートの引っ付いている年上の少女はユートに注意をする。
自分の言葉に頷いたことに少女は嬉しそうにユートの頭を撫でる。
「当然のことを出来るユートは偉いよね。偶にできない者達もいるのに」
その言葉に教師も頷いてユートを褒め称える。
褒め称えられながらユートは自分に引っ付いた少女たちと自分の教室へと歩いて行った。
(最高だなぁ……)
自分の身体の何処を見ても美少女たちが引っ付いている状態にユートは絶頂する。
女の子の臭いや体の柔らかさもを何時でも感じられて幸運だ。
しかも男からの嫉妬の視線は無く、むしろ女の子とイチャ付くように手伝ってくれる。
敢えて残念なことを述べるならレイナがいないことだろう。
折角、召喚される前から狙っていたのに能力が効かないどころか逃げられる。
だからこそ、ますます欲しいと思ってしまっている。
「ユート。喉乾いていない?」
授業中にも関わらず飲み物を与えてくれる。
教師も邪魔をしない。
ここまで好き勝手できるのは本当に最高だ。
「なぁ、ところでケンキ君はいつ戻って来るのかな?」
そして、もう一人欲しい人物がいる。
ユートと同年代で学園最強と目されているケンキだ。
学園最強なのに新入生だということは伸びしろがまだまだあるということ。
ケンキを手に入れれば最高クラスの護衛が手に入れる。
そして。
(また、あの瞳で見られたい……!)
あの純粋な瞳に惹かれてしまっている。
完全に自分のモノになったら、それが失われてしまうのか残ったままなのかにも興味がある。
その為にも、もっともっと、この能力を使いこなしていかなければならない。
目標は生徒会長を意のままにすること。
ケンキと互角だという生徒会長を意のままにできれば、必然的にケンキも意のままに出来るということだ。
「ねぇ、生徒会長は普段、何処にいるのかな?」
ケンキに見破られた以上、同格の生徒会長にも見破られる可能性がある。
だけど同時に本当に見破られていたら、今の状況は無いはずだとユートは考える。
何せ風紀に反していることを堂々と行っているのだ。
本当なら既に注意を受けていてもおかしくない。
「普段?普段は生徒会室にいるよ。結構、生徒や教師の悩みを聞いたりしてるみたいだし、放課後に行けば会えると思うわよ」
自分に引っ付いている女性の言葉に笑顔でありがとうという。
注意をしていないのであれば、既に意のままになっている可能性がある。
その確認の為にも会いに行くべきだと決意する。
「そうだ。ユート君は今日はどんな訓練をするの?私も付き合うよ」
一人の少女の言葉に私も、俺もと男女関係なくに協力を申し込んでくれる。
その事に感謝して全員を更に深く洗脳させるように決意した。
(それにしても最近、性行為をしていないな)
ユートは男女全員関係なく全裸にして考え始める。
やれるとしたら寮で召喚される前から性行為をしていた者達だけ。
共に召喚された者達は男女関係なく性行為に参加させてたが、この世界の者達は一度も手を出していない。
現に今も全裸にさせれることから、出来ないわけでは無いが元の世界より貞操観念が高いのだろうと納得する。
ただ単に今、性行為をしないのはレイナと同じように能力の効きがどうしても悪い者達がいて、そこからバレるのがマズイと判断からだ。
他にも学園内では、どうも性行為をする気にならない。
それよりも、どうやって己の能力を高めるか、更に使いこなせるようになるかしか興味が持てない。
「もう一度、服を着ろ。男女で服を着せるところを見せつけるように」
何時までも全裸のままなのは、マズイと思い指示をする。
見せつけるようにという指示を付け足したのは少しでも抵抗する者がいないかの確認だった。
同時に行動させるのは一度に操れる数の確認。
これのお陰で召喚される前よりも更に能力を強さを確認し、更に高められるようになった。
今の命令にも誰も違和感を抱くことなく従ってくれている。
「それじゃあ、次は俺に弱みとなる隠し事を教えて」
全裸になることといい、本来なら拒否されて当然の質問をするのは洗脳を深める為。
己の隠したいことを晒せば晒すほど、解除されににくなる。
今、思えばユートは残念だと思う。
あのまま寮に移動せずに王宮にいたら国を支配して王様に慣れたのだから。
もしかしたらユートの能力に気付いた者もいたかもしれないと警戒も強くする。
王宮にいるのだ。
そのぐらいの者がいても可笑しくない。
「………これが私の弱みです」
そんなことを考えながらユートは弱みを一人一人聞いておく。
大勢の者の弱みをメモらずに覚えるのは、かなり厳しいが下手にメモを残して自分以外の者に従わられるよりはマシだと思い覚えていく。
もう一度、確認することも決めてユートは生徒会室へと向かった。
「………そうか。頑張れ。だが、俺としては理由は言わないが、まだ告白はしない方が良いだろうな。こういうことは言いたくないが、俺が許可を出すまで絶対にするな。詳しいことも教えられないが済まないな」
「大丈夫です!生徒会長が頭を下げてまで頼むっていうことは何か問題があるんですよね?なら出来るだけ我慢します!」
「本当に済まないな。俺も出来るだけ問題の解決に動く」
生徒会室から聞こえてくる内容に何を話しているのか気にかかる。
詳しく知りたい為にユートは早速、中に入った。
「すみません。相談したいことがあるのですが?」
ユートが入ったことで相談していたであろう相手は焦った表情をする。
話の内容が聞こえてたかと、質問して首を横に振られると露骨に安心した表情を浮かべた。
どうやら恥ずかしいと思えることを相談していたらしいとユートは判断する。
丁度良いと、既に生徒会長にも洗脳が掛かっているのか聞いて確認する。
掛かっていたら教えてくれるだろうし、そうでないなら教えてくれないだろう。
「………誰にも言わないでくれよ。実は生徒会長に恋愛相談をしていたんだ」
お前が言うのかよ、とユートは残念がる。
本当は生徒会長から聞いて確認をしたかった。
「そ……そうなんですか」
「うん。そういえば君は複数の女生徒付き合っていたよね。女性に喜ばれるモノとか教えてくれないかな?」
「えぇと。まぁ、構いませんけど」
ちらりとユートは生徒会長であるロングを見るが紅茶を飲んでいる。
こちらと会話をする気は無いみたいだ。
「一つ言っておく」
静かな声に否が応でも生徒会長に注目してしまう。
「俺からすれば洗脳に掛かる方が悪い。俺以外にも掛かっていない者がいるが、いずれも貴様よりも強い。洗脳しようとしたら、それを理由に殺しに来ると思え。せいぜい逆鱗に触れないようにしろ」
どうやらロングは洗脳もされていなく、学園の異常にも気付いていたようだ。
その上で動いていないのは、容易く洗脳された生徒や教師たちに呆れているのが理由のようだ。
理由を話している時のロングの表情は侮蔑が混ざっていた。
そしてユートは学園最強の者がなるという生徒会長が動かないことに安堵する。
これなら安心して楽園を創れる。
「待て」
そして緊張が解けるのと同時に殺気と目の前に剣が突きつけられた。
「ひっ……」
あまりの殺気と目の前の恐怖にユートは床に崩れ落ちることすらできない。
「もう一度、言うぞ。貴様より強い者たちの逆鱗に触れるなよ。俺は呆れているが、中には恋人がいる者もいる。それを洗脳して貴様のモノにしたら殺される覚悟はするんだな」
ロングの警告にユートは何度も首を縦に振って頷き、それを確認したロングは剣を降ろしてまた紅茶を飲み始める。
手を生徒会室から出るように振るのを見て逃げるようにユートは部屋から出て行った。
あまりのもロングが怖く、彼の逆鱗に触れないように近しいモノを調べて洗脳してしまわないように注意することにした。
「バッカバカしいな………」
ロングはユートの出て行くのを見送って一人、呟く。
少し脅しただけで逃げ出した姿に失望した眼で見ていた。
(ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!あれが学園最強の生徒会長!?洗脳した教師を含めて勝負に挑んでも勝てる気がしない!!)
ユートの予想は当たっている。
ある一人を除けば、全学園の教師生徒を含めて全員で挑んでも勝てるのがロングだ。
そして、その一人がケンキ。
(少なくともケンキはアレと同格なんだよな!?)
実際にはケンキもロングも教師を含めた全学園の者と戦うとなったら勝てるかもしれないがギリギリの勝利になるだろう。
それでも規格外なのは変わらないが。
(やっぱり能力を鍛え上げるのが優先だな。でなければケンキを自分のモノにできない)
ユートはケンキを自分のモノにするために更に能力を鍛え上げることを決意する。
自分自身でも、どうしてここまでケンキに執着していることに理解できていないが悪い気分ではない。
今はどんな理由でも自分の能力を鍛え上げることに充実している。
(その前に僕の能力が効かなくて強い人物を確認しないと。下手に手を出して怒りの感情のままに行動されたら殺されてしまう!今が無事なのは、まだセーフだからだ!これ以上は洗脳するのを止めておこう)
既に洗脳した者達を使ってユートは情報を探ることに決めた。
まずは洗脳などに抵抗力が強い者を探し出すことにする。
「あ、ユート君!」
こちらに掛け寄って来る少女に早速、あてはまる者を探すように命令した。
流石に一日で全員を集められるとユートも思っていない。
だが、少しでも早く情報を欲しいと思っていた。
「わかったよ。皆にも言っておくね」
当たり前のように頷いてくれたのを確認してユートは自分の能力を鍛えることにする。
その為にまずは教室に戻ろうとするが途中でユカとメイの二人に捕まった。
「見つけた!ねぇ、今日もユートの部屋に行っても良いよね!?」
腕に引っ付きながら質問してくるユカについつい頷いてしまう。
そして、もう片方にミカがユートの腕に抱き付く。
「なら早速行きましょう?」
鍛えようとしていたユートは二人の身体の柔らかさと匂いに抗うことも出来ずに寮にある部屋へと歩いて行く。
部屋の中でも能力を鍛えることは出来ると自身を納得させながらユートは顔をニヤつかせる。
何を命令しようかと今から楽しみだといわんばかりだ。
そして部屋に戻る。
「あ。やっぱりユカちゃんとミカちゃんも部屋の中に連れ込んでいるんだ?」
そこには朝から引っ付いていた先輩がいた。
薄着でベッドに腰かけており、まるで今にも襲われても良いような身なりだった。
「………ユート君は部屋の鍵を開けっぱなしにしていたんですか?」
「いや、鍵は掛けていたはずだけど……」
どうして中に入っているのかと視線でユートたちは先輩であるナドンナに聞く。
鍵をかけたのは覚え間違いだとしたらともかく、それ以外だったら何をしても文句は無いだろうとユートはナドンナの身体を舐るように見て心の中で舌なめずりをする。
そうするとナドンナは身体を振るわせる。
「ユートの予想通り、驚かせようと思ってピッキングして部屋の中に入らせてもらったわ。って、きゃっ!」
その言葉が言い終わると同時にユートはナドンナを押し倒す。
同時にユカとメイの二人には今からすることを持っていたスマホで映像を残すように指示をした。
既に心は完全にユートのモノになっているが、更にユートのモノだと映像に残して刻み付けるためにだ。
そして二時間きっちり映像を残し、クタクタになったナドンナの代わりに今度はユカとメイにも手を出す。
途中から回復したナドンナも混ざってユートは一日中、快楽を楽しんだ。
四人で楽しんでいる最中、命令をしたが嫌そうな顔をして拒否をしようとしていたが繰り返すことで指示に従わせたこともあった。
楽しみながら能力も鍛えることが出来たことにユートはラッキーだと言わんばかりの表情を浮かべる。
これで万が一、正気に戻っても従わざるを得ない弱みを手に入れた。
当然、ユカもメイも本人が正気に戻ったら自殺を選んでしまうような弱みを何十枚もユートに差し出していた。
「ふふふっ。おはよう」
そして翌朝、ユートが目を覚ますとナドンナが目の前にいた。
微笑みながら同じベットで寝顔を見られていたと思うと恥ずかしくなる。
顔を隠そうとするがユカとメイに両腕を取られていて隠せない。
同時に召喚された世界で初めて新しい女を頂けたことに顔がにやける。
「朝食を持ってくるわね。それまでに二人を起こしてもらえないかしら?」
そう言いながらナドンナは部屋にある冷蔵庫から料理を取り出す。
ユートの部屋に入る前から、あらかじめ準備をしていたようだ。
どれも美味しそうで温まるのが楽しみだ。
冷めないようにできるだけ二人を速く起こそうと行動する。
「うん………」
「………おはようございます」
結局二人が起きたのは料理が温め終わってから。
漂ってくる匂いに食欲が刺激されて起きたと言っても過言じゃないとユートは思っている。
「おはよう。二人とも、これを食べれる?」
起きた二人にナドンナは話しかける。
最初は何で先輩がいるのかと視線でも尋ねていたが、直ぐに思い出して視線を元に戻す。
「………もしかして先輩が作ってきたんですか?」
「そうよ。これを食べて今日も一日頑張りましょうね」
ナドンナの言葉にユカは美味いと叫びながら料理を頬張る。
美味しそうに食べている姿にナドンナも嬉しそうな表情になる。
ユートたちも先に食べ始めたユカの反応に自分たちも食べ始める。
「本当に美味いや」
「美味しい……!」
ユカの反応は大袈裟だと思っていたが、とんでもない。
ついつい大声で反応してしまう程にナドンナの料理が美味い。
食べ物を運ぶ手が止まらない。
料理がどんどん減っていくのを見てナドンナの心は満たされていった。
「「「ごちそうさまでした」」」
「おそまつさまでした」
三人が食べ終わってナドンナが食器を片付けようとすると座るようにユカとメイが立ち上がる。
既にユートも立ち上がろうとして座るように言われている。
「二人とも?」
「私たちが食器を洗うから座ってて良いですよ」
「そうそう。ユートも食べ終わったばかりだし気にしなくて良いよ」
それは二人も同じだと思うが強く言われた為に素直に言葉に従う。
そして残った二人で食器を洗い終わるまで会話をする。
内容は学園についてだ。
「で、どう。編入して学園には慣れた?」
「はい、お陰様で。後は王宮にいるらしいレイナが編入してくるのが楽しみです」
「レイナちゃんね。二人の親友だっけ」
「そうですよ。最近、何でか距離を取るようになってしまって……。何とか三人の仲を回復させたいんですけどね」
ユートは溜息を吐いて愚痴を零す。
レイナが王宮にいるせいで接触できる機会が減り、目的も達成しずらくなっている。
「そうなんだ。それにしても王宮って、そんなに優秀なんだ?」
「そうみたいです」
「そうみたいって……」
ユートの反応にナドンナは不思議そうな顔をする。
仲が良いから何が優秀なのか知っているはずなのに、知らない相手に対する反応をしている。
ナドンナの浮かべた反応にユートは焦って言い訳を始める。
「しょうがないじゃないか!?この国に来て初めて知った才能らしいですし!?俺たちも詳しいことは聞かされていないんですよ!?」
「何!?どうしたの!?」
「急に騒いで、どうしましたか?」
ユートの声に気付いた二人が食器を洗っている最中なのに割り込んで来る。
「ごめん!レイナのことで話していて内容も何で王宮にいるかだから、気にしなくて大丈夫!」
「理由も聞いて納得したわ!だから安心して!」
心配させまいと二人は、こちらは大丈夫だと説得する。
それに納得したのか二人は食器を洗うことに戻っている。
「貴方たちの国では気付かなかったの?」
「はい。俺たちの国では、そもそも使う機会が無いものだと思います。実際、俺たちも文化の違いに度々、驚いています。正直、文化の違いに慣れるのが大変でした」
そこまで言われて、そういえば確かに編入生は何でもないことに一々、驚いていたことを思い出す。
何に対しても興味津々だった姿に、かなり田舎の方から来たのだと思っていた。
「まぁ、こちらの話はここまでで。こっちから聞きたい話を質問しても良いでしょうか?」
ユートの言葉にナドンナは頷く。
何を質問するのか興味津々だ。
「まずは洗脳能力とか精神に関するモノに抵抗力が極めて強い人物を教えてもらって良いでしょうか?あと、その中でも戦闘能力が高い人も」
ユートにどうして、そんな質問をするのか疑問を抱きながらも教える。
「一番は生徒会長のロングと君たちと同じ一学年のケンキ君ね。精神的な抵抗力も戦闘能力も学生どころか教師すら超えて学園で最強じゃないかしら?」
やはりと言うか最初に出てきたのはケンキとロングだったことにユートは深く頷いている。
あんなに印象が強いのに他に更に強い者がいないことが確認できて助かった。
「あとは一学年の最低でも一人はいて、強さも当たり前だけど学年の順番になっているわ。あと戦闘能力に限らず精神に影響を与える魔法を使える者も抵抗力が高かったわね」
「それって、どのくらいの数がいるんですか!?」
ユートは精神系の魔法を使える者がどれだけいるか気になる。
その数だけ自分の洗脳の影響を与えていない者がいることになるのだ。
いつ、寝首を刈られるかわかったものではない。
「さぁ?基本的に使える者は僅かしかいないし、私が知っているのも同じ学年の二人しか知らないわよ」
一学年に百人近くいる中で二人しかいないことにユートは驚く。
同時にそれなら何かを言っても黙殺される可能性が高いことに安堵する。
「急にどうしたのよ?もしかして精神系の魔法に興味があるの?才能が無いと全く使えないわよ」
ナドンナの言葉に苦笑して首を横に振る。
ただの興味本位だと説明して納得させた。
それよりもケンキの話を知る限り教えて欲しいと頼み込む。
一瞬だけ不機嫌な表情になるがユートは気のせいだと判断して笑顔のナドンナからケンキのことを聞きだしていく。
まず最初に聞き出せた内容はケンキの戦い方、
身の丈を超える大剣と拳を武器にしているらしい。
どちらかがメインでは無く両方共に状況を見て使い分けているらしい。
「しかも彼って本気で動けばそれだけで衝撃波が発生するわよ。一度、学園全体でケンキ君の訓練を見たけど凄かったわ。一日中、一度も休まずに自らを鍛え続けていて。………今、思えばケンキ君が一学年どころか学園で最強だと受け入れられたのは、彼の訓練を見たからでしょうね」
ほぅ、と溜息を吐きながらケンキの訓練所を使った日を思い出すナドンナ。
あれがなければケンキがいくら強くても認められることは無かっただろう。
一学年で学園最強なのは、それだけの理由があるのだと認められた。
「………ケンキ君のことを尊敬しているんですね」
「この学園でケンキ君のことを尊敬していない者は少ないわよ」
ユートの言葉にナドンナは苦笑して頷く。
努力して結果を出しているケンキに悪く思える筈がない。
「何の話をしてるのさ」
「ケンキ君の話」
「………ケンキ君の?」
ケンキの名前を聞いて二人は嫌そうな顔をする。
数少ないケンキを嫌っている者たちがここにもいた。
ユートは二人の反応に首を傾げてしまう。
何故、嫌っているのか理解できない。
「ユート、首を絞められてたじゃない!?何で、そんなに好意的なの!?」
「そうよ。普通は嫌って当然よ」
ケンキにユートが首を絞められてたと聞いてナドンナは視線を向けるが頷かれて事実だと理解する。
そのせいでナドンナのケンキに向ける印象は悪くなる。
だが、それでも何で首を絞めたのか心当たりがないかユートたちに聞くが初めて会って急に首を絞められたと聞いて首を傾げてしまう。
ケンキが何の理由も無く首を絞めるのは考えられないとナドンナは考えている。
「クラスから聞いた話だと理由も無く首を絞めたのは、おかしいんですよね」
本当は予想は付いているがユートは口にしない。
洗脳をしているからと自分が教えたら、どうなるか予想できないのもある。
この場にいるユカとメイには知られても既に問題はないが、ナドンナは別だ。
洗脳されていたと知って、どんな行動に出るのか予想が付かない。
復讐に走るのか、それとも諦めて自分に従うか。
ユカとメイは長い間、洗脳を掛けて来たから知られても洗脳状態にあるが、ナドンナは洗脳を解除する可能性がある。
洗脳状態で抱かれたこともあり、潜在的には敵となる可能性がある。
何時裏切られるか、わかったものじゃない。
「ユート?」
「どうしたのよ?何か考え事?」
「ダメね。こうなったら考え事が終わるまで反応しないわ」
それでも抱いたのは魅力的な女性だからだ。
ユートは魅力的な女性を見ると自分のモノにしたくなる。
当然、レイナもだ。
むしろ、今一番執着しているのがレイナだ。
召喚される前から知っていて、その頃から魅力的に思えていた。
何よりも自分自身の魅了に一切かからず、逃げる姿は誰の手にも触れさせないように見えて、ますます自分のモノしたくなった。
「あ………やば」
ふと時間を確認すると学園が始まる時間が近くなっている。
今から走って向かえば大丈夫だと思い、急いで学園へと向かう準備をする。
ユートの焦った姿と時間を確認して他の三人も間に合うように急いで準備を始める。
そして部屋から出て鍵を閉めたのを確認して一斉に走り始めた。
「誰も学生がいないね!」
「ヤバいわね。遅刻するかも」
「まさが遅刻をするかもしれない何て……!」
ユートたち三人は焦りながらも駆け足で学園へと向かう。
所々に見られる大人たちからは生暖かい目で見られて恥ずかしくなり顔が赤くなっている。
「三人とも遅いよ。もう少し頑張らないと!」
先輩であるナドンナは後輩である三人より、かなり前にいる。
後ろを振り返っているあたり、かなり余裕のようだ。
「どんだけ体力があるんだ……」
昨日、抱いたにも関わらず自分達より早く走れるナドンナに意味が分からないと困惑する。
少なくともミカもユカも初めて抱いた翌日は激しい運動は出来ていなかった。
「早くしないと遅刻ギリギリだよ!そんなんじゃ編入生全員が一学年の中でも貧弱だと思われるわよ!実際、一学年の授業を見る機会があって編入生たちに対する評価は一芸だけに優れていて他はダメダメだったし!」
それを聞いて三人とも悔しそうにする。
三人が三人とも異世界から召喚された際に何かしらの能力が強化されたが身体能力は元の世界のままだ。
身体能力が強化されているのは召喚された者たちの中でも一人だけだ。
その者もこの世界では一学年では平均的な身体能力でしかない。
日頃から魔物と戦う機会がある世界と命の危険が無い平和な世界では比べるまでも無いのが当然のことだ。
その分、召喚されたされた者たちのは異才が多いが。
「あら?少しは早くなった?でも、まだまだ遅いわね。それでも確実に学園には間に合いそう」
ナドンナも先導するかのようにペースを上げていく。
そして学園の敷地内に入る頃にはナドンナは汗を一つも流すことなく、逆にユートたちは汗だくになって辿り着いた。
ユートたちは学園に辿り着くと同時に地面に座り込んでしまった。
「大丈夫!?」
ユートたちが座り込むと同時に未だ学園の校舎に入る玄関にいた者達の殆んどが駆け寄る。
ハイペースで走ってきたために、まだまだ授業まで余裕があり玄関にも数が少ないが人がいる。
その内の男子たちがユートの肩を持ち上げて運ぼうとする。
体力が尽きただけなのに、ここまでされることにユートは恥ずかしいと思うと同時に嬉しくなる。
「……保健室に連れて行くか?それとも教室に運ぶか?」
先輩である男性の言葉にユートは教室へとの言葉に首を縦に振る。
疲れただけなのに保健室に行くことにあなるのは遠慮したい。
それよりもユカとミカの方を振り向くが誰も助けに向かっていない。
自分が原因でも男より女の方が大事にしているのは、どうかと思ってしまう。
「………ユカ、大丈夫?」
「うん。ミカこそ。立てそう?」
「大丈夫よ。ちょっと疲れただけだし、少し休んだし問題ないわ」
「ならユートには悪いけど先に行かない?汗かいちゃって近くに寄って汗臭いと思われたくないし」
「そうね。それじゃあ先に行きましょう」
二人は誰の手も借りずに先に教室へと走っていく。
「ユート、また放課後にね!」
そしてナドンナもまた手伝えることは無いと自分の教室へと戻っていく。
残ったのはユートと肩をそれぞれ両方から持ち上げている二人だけだ。
他にも玄関にも残っていた者たちがいたが邪魔にならないように、それぞれが自分対の教室へと戻っていく。
(この能力が有って本当に良かったぁ。召喚されてから能力も強化されて、誰もが俺に良くしてくれて、まるで楽園のようだ。いくら悪いことしてもバレないし許してくれる。ここがこの世の極楽か)
ユートはそう思うが、同時に魅了が解けたらと思うと背筋が凍る。
正直に言って今は生徒会長に見逃されている状態だ。
少しでも機嫌を損ねて殺されてしまえば洗脳が解けるだろう。
他にも生徒会長であるロングが言っていた魅了に掛かっていない者達。
最低でも一学年に一人以上はいるということと、戦闘能力が召喚された者達より格上のために暗殺何てされたら防げれないだろう。
恋人に手を出されなければ安全と言っていたが、早急に自分の身を護れるように考えなければいけない。
折角、魔法の世界に来たのだし教師にも色々と相談することを決意する。
運が良ければゲームである身代わりの道具とかも貰えるのかもしれないと期待をしている。