第三話
俺は早歩きで学校迄向かい、ベル着の五分前に教室の自分の席に到着した。
鞄の中の教科書などの荷物を引き出しに入れていると、後ろの席から声を掛けられる。
「よっす廻、今日も遅刻間際じゃねえか」
「何だ、お前か…」
朝一番に話しかけて来るのがこいつだとは、今日は運が悪い。
話しかけてきれるなら美少女が良かった……。
「ん?美少女が良かったってか?」
「何故分かった!?」
「勘だよ、勘」
俺は山本に適当に返しながら鞄からラノベを取り出し朝読書を始める。
この高校には幸い、朝読書の時間に遅れて来て大声で騒いで読書の邪魔をするような奴はいない。
中学の時にはいたから面倒だったんだよな…。
ここで余談なのだが、朝読書によって様々な恩恵が得られるらしい。
恩恵と言っても『特殊な能力を得られる』とかではないが、何でも朝読書をするとその日を気持ち良く進められ、十分なパフォーマンスを発揮できるらしい。
朝読書の時間が終わり、流れるように授業も終わる。
今日の時間割は比較的楽なものが多くて助かる。
その分明日から少ししんどい時間割だが…。
「廻、弁当一緒に食おうぜ」
「おう」
俺は山本しか基本的に喋る相手がおらず、山本は俺以外にも中が良い奴はいるみたいだが昼はこうして誘いに来てくれる。
なんやかんや言っても山本は良い奴だ。
「ん?どうかしたか?」
「い、いや…何でも無いよ」
「そうか?なら良いけど」
時々今のような『読み』をしてくるからこいつといる間は少しポーカーフェイスが必要だ。