第二話
ジリリリリ!!
目覚まし時計が枕元で忙しなく響き、「寝るな、起きろ!」と熱く俺を起こそうとしている。
俺は目覚めているのだが、何だか動きたくない、そんな気持ち。
俺が目覚まし時計を止めずに毛布に包まりゴロゴロしていると、階段の方からドタバタと足音が聞こえる。
足音は俺の部屋の前で止まり、バタンと勢い良くドアが開かれる。
「はやくおきて、ちこくしちゃうよ!」
「あと五分だけ…」
どうやら妹が起こしに来たらしい。
最近何故か俺に対してのみ当たりが強くなっている妹はとても微笑ましく、可愛い。
これが俗に言う妹なら何をしても萌える『妹萌え』というやつだ。
「ねーえー!」
「ん…」
何時迄も妹をからかっていると不意に毛布に重みを感じた。
妹、のしかかったな!
でもあまり痛くは無いので毛布に包まっていると、今度は比較にならない程の激痛が腹に来た。
「ヴッ!」
あまりの痛さに飛び起きると、そこにいたのは姉だった。
姉は生徒会長を勤めており、とても真面目な人。
というのが全校生徒の姉へ対するものだが、本当は違う。
何かあったらすぐに手を出す人なのだ、この姉は。
「早く起きなさい、真昼の言う通り遅刻するわよ貴方」
「うす…」
俺はノロノロと立ち上がり、姉達が部屋から出て行くのを確認してから制服に着替えて一階に降りる。
姉の姿も妹の姿も既に無い。
「今日も朝から元気だな、廻は」
「そう見えるなら眼科行った方が良いぞ…」
今声を掛けて来たのが小山家の大黒柱、小山鬼羅。
家の父親だ。
「そうカリカリするなよ朝から……そうだ、これでも飲むか?」
父さんがそう言いながら差し出して来たのは赤い液体が入ったガラスのコップ。
「朝から何て物を見せるんだ!」
俺は内に秘めたる関西人のツッコミを放つ。
「良いじゃないか血。こう見えても健康に良いんだぞ〜」
父さんは血を好んで飲む魔物、『吸血鬼』。
本人の前で血を見せたことがあるが『大丈夫か!?』と心配されるだけだった。
どうやら血を見ただけで自我を無くす程馬鹿ではなかったようだ。
「おっと、もうこんな時間か」
父さんは壁に掛けてある時計を見るとコップに注がれた血を一気に飲み干し、「戸締りは頼んだぞ」と言い仕事に向かった。
俺も遅刻してはいけないのでコップに牛乳を並々注ぎ、一気に飲み干した。
「それじゃあ行って来ます…」
俺は戸締りを確認し、鍵を掛けてから家を出発した。