焼肉とキシリトールガム
「僕と、付き合ってください」
「嫌です」
僕の一世一代の告白は、あっけなく散った。
しかし、こんなことでは、へこたれていられない。
「どうして、駄目なんですか?僕は、貴女を愛しています、貴女を幸せにすることが出来ます」
そう食い下がると、彼女は長い黒髪の先を弄りながら、応えた。
「なんか、オシャレじゃないんだよね。君の告白って」
「オシャレじゃない……と、言いますと?」
「何かに例えてみるとか、どうかしら。"僕がこれなら、貴女はなになにです"みたいの」
「なるほど」
僕は一生懸命、頭を悩ませた。僕の脳細胞よ、この先一切頑張らなくていいから、今だけ頑張って。
そうすると、素晴らしいアイデアが雷が落ちるが如く、僕の脳裏に強烈に降ってきた。
よし、これだ。これしかない。
僕は咳払いをコホンと一度すると、彼女の目を真っすぐと見つめた。
「僕が焼肉なら、貴女はその後に食べるキシリトールのガムです」
「はい、不合格です。意味わからないもん」
そうして、彼女は去っていった。
恐らく、ハッカの飴が正解だったんだろうなぁと、僕は後悔した。