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「弟君はベリッシュ嬢とは何時の予定だい?」
「え!?」
突然の問いかけに驚くとギルバート様は不思議そうに首を傾げる
「何を驚いているんだい? もう貴族間では君たち二人の結婚式はいつ頃かと話題になっているよ」
「そんな…まだ僕は学生の身分ですから…卒業してからの話ですよ」
ぎゅっとベリッシュの手を握ると同じ様に握り返してくれた。
本当は今すぐ結婚したいけれど、まだ学生の身分であるし、父上からの跡継ぎ教育もまだ中途半端なままだ。
完璧とまではいかなくとも、周りに認められるまでにならないとベリッシュとの結婚はまだ早い。
「そんなに気負わなくとも、魔王討伐という栄誉があるのだから誰も何も言わないさ」
ふふふっと笑いながら言うハインデルト様に曖昧な笑みで頷き返す。
「アリー卒業おめでとうだぜー」
「おめでとうございますアインリッシュ君」
一足先に卒業していたサッシュとナタリアに祝われながら帰路につく。
流石に一年眠っていた分遅れは取り戻すことができず、一年遅れでの卒業になった。その分ベリッシュを待たせてしまった事になる。
いそいそと三人で屋敷に戻るとベリッシュが出迎えてくれた。
「お帰りなさいアインリッシュ」
「ただいまベリッシュ」
「お久しぶりですベリッシュ様!」
「えぇ久しぶりですわねナタリアちゃん。部長とはどう?」
「今度結婚する事になりました! それで、よければ式に……」
「勿論出席するわ!」
きゃいきゃいはしゃぐ二人を眺めながらサッシュとこそこそ話し合う
「アリー今日が流星群の日だからなー。忘れるなよー?」
「大丈夫だよ。それでサッシュ例の件だけど…」
「任せとけよぉ。準備は万端だぜー」
「ありがとう」
振り向くときゃいきゃいまだはしゃいでいる二人がいた
「サッシュも早くいい人見つかるといいね」
「んー……まぁ、そのうちな」
夜、ベリッシュの部屋の前に立つ
「ベリッシュ、ちょっといい?」
扉が内側から開かれベリッシュが顔を出す。
「なぁに?」
「ちょっと一緒に来てほしい所があるんだけど…」
「まぁどこかしら」
クスクス楽しそうに微笑むベリッシュにガウンをかけて手を引きながら歩きだす。
こけないよう歩幅を合わせながら並んで歩いていると、子どもの時のことをふと思い出した。
「昔はよくベリッシュが僕の手を引いて歩いてくれてたよね」
「ふふっ、だってわたくしはお姉ちゃんでしたもの」
「そうだったねお姉ちゃん。でももうお姉ちゃんじゃなくなる」
「え?」
「着いたよ」
そこは夜空が綺麗に見える丘の上だった。
「上を見て、ベリッシュ」
「まぁ!! なんて綺麗なのかしら!!」
満天の星空に次々と数えきれない程の流星が流れていく。サッシュから今日が流星群が一番多く綺麗に見える日だと教えてもらって良かった。
「凄いわアインリッシュ! こんなに星が流れているだなんて……」
「ベリッシュ」
ベリッシュの足元に膝をつき、両手の指先を包むように握る。
真っすぐベリッシュの瞳を見つめると、恥ずかしそうに眼を細めた。




