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王宮に登城するとすぐさま王のいる謁見の間に通された。
玉座に座る王の前に、父上、僕、ベリッシュの順で並び膝をつく。
「ふむ。そんなにかしこまらなくても良い。我が息子ハインデルトの友人が元気か確認したかっただけでのぉ」
「勿体無いお言葉でございます。このとおり我が息子は順調に回復しております。」
「そうだのぉ。魔王まで討伐したのじゃ、何か褒美をやらねばなるまい。何が良いかの?」
「褒美……ですか」
「なんでも良いぞ。領地を広げるかの?」
「いえ……では、王室御用達の宝石職人を紹介していただけないでしょうか」
「宝石職人とな?」
「はい。僕はベリッシュにまだ、婚約指輪を渡していないものですから……」
目を見開いて僕を窺うベリッシュに微笑んでみせる。
本来なら討伐前に渡せれば良かったけれど、出発前日という事もあって用意できなかったのだ。
王室御用達の宝石職人であれば、ベリッシュにとてもよく似合う指輪を作ってくれる筈だ。
「明日にでも其方の屋敷に伺うよう文を出しておこう」
「ありがとうございます」
「それだけで良いのか?」
「はい。これだけで、十分です」
「そうか……欲の無い息子だのぉ」
一番欲しいものはもう手に入っている。
これ以上のものを望む事などもうない。
「さて……其方らを呼んだのは褒美の事だけではない。聖女の事じゃ」
「聖女様ですか?」
そういえば聖女は今王宮に保護という形でここに滞在していると聞いた。
ベリッシュと共に世界樹の研究をしていたんだっけか。
「聖女が、其方が目を覚ましたという事で元の世界へ戻ると申しておるのじゃ」
「元の世界…」
それは僕がここに転生する前の世界
聖女が本来、生きていかねばならぬ世界
寂しいけれど、戻らなければいけないのだ。
「儀式の準備があるでの、三日後に行おうと思うのじゃ。それまで、聖女は其方らの家に滞在させて欲しいのじゃが……」
「聖女様のお望みとあれば」
父上が答える
「だ、そうじゃぞ。行くかの?」
「勿論だ」
騎士に連れられながら謁見の間に入ってきた聖女が此方にやってきながら王に礼を言う
「本来ならば王宮に留まらねばならない所を、寛大な処遇に感謝致します」
「良い。そなたは十分頑張ってくれたでの」
くるりと此方を向き満面の笑みを浮かべながら聖女は言う
「さぁ、こちらで出来た友人達。遊ぼうか!」




