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お姉ちゃんは可愛い悪役令嬢  作者: あきみつ
僕は、僕でしかない
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魔王と少女の姿が消えた。

それと同時に僕の意識もだんだんと薄れていく


深い深い暗い闇の中に落ちていく感覚がした



最後に、ベリッシュにもう一度だけ会いたかったなぁ











浄化から戻ってきた一行を迎えた者たちは一様に顔に安堵の色を滲ませた。

しかし一人の姿が見えない事に眉を顰める。


浄化は成功した。魔王も、もう二度と復活する事もない。



その報告に人々は歓喜した。

しかしそれは一人の少年を犠牲にして成し得た所業であるがゆえに、一行の顔は暗く沈んだままであった。

どんなに喜ばれようと感謝されようと、心が晴れる事は無い。


ずっと涙を流している少女がいるのだから。




しかしどうして魔王が急に倒れたのか。その答えを、少年の友人が持っていた。

ある魔法に使っていた魔法具をあらかじめ心臓に刺していた。

その魔法具を発動させると心臓に深く刺さり機能を停止させる。

少年に頼まれた友人は断り切れず術を掛けて埋め込んだとの事だった。乗っ取られたとしても、元の体は少年のものであるから、可能だったのだろう。

最初から、分かっていたんだねぇと、友人は寂しく、悲しそうに呟いていた。



少年の恋人はあの日からずっと涙を流し続けている。誰がどんな言葉を掛けようとまるで聞こえていないかのように、ずっと流し続ける。

父の声さえ届かない。やはり着いて行くべきだったのだと。傍にいるべきだったのだと。

届くはずのない謝罪の言葉を述べながら、今日も自室で涙を流しているのだろう。










あれから一年が経った。


人々の記憶にはまだ新しくあの出来事は残っており、犠牲となった少年は英雄の様に語られ始めた。

命を賭して恋人の為に散ったのだと。

あまりにも残酷な美談である。


それぞれがそれぞれの生活へと戻っていく中、聖女は元の世界には戻らず、少年の帰りを少女と共に待つと言った。約束を果たせなかったのだから、戻ってきたら一番に謝りたいのだと。保護は王宮がする事となったが、自由は与え、気ままに過ごしているらしい。それでも夜、部屋の前を通ると少しだけ鼻をすする音が聞こえる。


少女とも仲を深めているのだろう。最近ようやく涙が止まった少女は少年を取り戻すために研究を始めたとの事だった。聖女もそれを手伝っているらしい。



あれからもう一年

あれからまだ一年





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