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「大丈夫? 雄太」
「俺は大丈夫だ。それより君の方が顔色悪いぞ」
聖女――雄太はけろっとしていた
それに比べて僕は外の様子を確認しながらも見えた魔獣の姿を恐れていた。
手足の先が冷えてくる
狙いは聖女ではなく僕
必要なのは、魔王を宿している僕なのだ。
狙われるというのは、こんなにも恐ろしい物なのだと知らなかった
「しかし二人の時は名前で呼び合うとまるで恋人の様だな」
「……何言ってるんだか…」
「…怖がることなんて無いだろう。見てみろ。彼らは強い」
雄太の言葉にまた外を確認する
ギルバート様が一匹の魔獣を一閃で倒すと、後ろから狙ってきたもう一匹をハインデルト様が殴り飛ばした。
殴り…えっ!?殴り飛ばした!?
「この国の王太子は肉弾戦派なのか。凄いじゃないか!」
ハハハと笑う雄太を白い目で見ながら、意外な一面を持ち合わせていたハインデルト様のおかげか、少し恐怖が安らいだ
「おっ、ナタリアちゃんが光の魔法を使うみたいだぞ」
『消え失せろ!!』
「ちょっと言葉悪くない!?」
一瞬にしてナタリアの周りにいた魔獣が消える。
学園版ヒロインなだけあって、やはり魔力もリベルア様たちと同じくらいの多さを持ち合わせているのだろう全く疲れた様子を見せない。
「皆無事かい?」
「僕は何もすることが無かったよ。ナタリアが倒しちゃったからね」
汗一つかかずに戻ってくる四人を眺めていると、小さく声が聞こえた気がした。
『いけんで…こんなん聞いとらんで…』
「ん? 雄太何か言った?」
「俺? 何も言ってないが」
「んー…? そう…」
「さぁ気を取り直して進もうか!」
キラッと白い歯を見せて笑うハインデルト様の笑顔が眩しくて、思わず目を瞑った




