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後日、僕の同行についても話し合いがもたれた。
それもそうだろう。
浄化の旅に出るのにすぐ隣に魔王ってどういうこっちゃって話だ。
かといってこのまま王宮に留めていても、万が一乗っ取られてしまった場合聖女無しで対処できるのか。
答えは否である。
聖女と同様の力を持つものはこの世界には存在しない。
その為もし乗っ取られたとしても、対処しきれないのだ。
話し合いは平行線を辿る一方だったらしい。
しかし聖女が痺れを切らしたのか
「連れていけばいいじゃないの! 何かあったとしても私がいなきゃ無理なら連れて行くしかないじゃない!」
と啖呵を切られたのだ。
はて……ゲームの中の聖女はそういうキャラクターだっただろうか。
もっとこう、清楚で穏やかな設定の啖呵を切られる様な方では無かったと思うのだけれど。
あの日から僕は王宮の一室でほぼ軟禁に近い状態で過ごしている。
部屋から逃げ出さない様にと結界もはられている為、万が一乗っ取られたとしても結界を破くとすぐ駆け付けて来る仕様になっている。
寝てる間に乗っ取られたとしても、すぐに誰かが駆けつけてくる。
それに安心しているのか、前よりは眠れるようになった。
そしてあの日からベリッシュには会えていない。会えるとも思っていないけれど。
一度だけ許された父上の面会で聞くと、毎日剣の素振りをやっていると聞かされた。
ベリッシュは余程お前に執着しているらしいと呆れたように笑っていた。
そうそうどう勘違いしたのか知らないが、恋人など出来ていないと叱っておいてくれと言われたな。お前は一体何をどう勘違いしたのだ?
勘違い?
あの子は何時もお前しか見えていないよ。
聖女版のシナリオではもうすでに恋人ができて居る筈。
シナリオ通りに進んでいると思っていた。
でも、いない?
それどころか父上は、ベリッシュは僕しか見えていないと言った。
それは、だって、そのまま受取ると、ベリッシュの想い人は、
あれからというもの僕は気になって気になって仕方がない。
というか、僕の中にいる筈の魔王も何も反応がない。
本当にいるのだろうかと疑問に思う程だ。
しかし王宮魔法使いのリベルア・アルジタル様曰く、魔力が黒く濁ってきている為いる事は間違いないらしい。通常は淡く白く光り輝くものらしい。
恐らくは聖女が近くにいらっしゃるから大人しいのではという見立てだった。




