33
「アインリッシュ……その顔、聞いたのね」
「何でお姉ちゃんが自ら危険に晒すような真似を! 僕たちの事が信じられませんか!?」
勢いに任せて怒鳴りつけるように話してしまう。
しかし、ベリッシュは怯むことなく真っすぐ見つめ返してくる。
「信じているわ」
「なら、何故!」
「私が、どうしても着いて行きたいの。アインリッシュの傍を、離れたくないのよ」
「っそれっは!」
真っすぐな視線に射抜かれる。
心臓が痛い程高鳴る。
それは残酷なほど僕には甘い響きだった。
どうしてそんな事を言うの
もう、恋人がいるんでしょう
「ベリッシュにはもう……恋人がいるんでしょう……」
「何を言っているの?」
心に黒いものが広がる
訝し気にこちらを見るベリッシュに、確認するように口を開く
「恋人が、いるんでしょう?」
これは、アインリッシュがベリッシュから恋人ができたと告げられるイベント
僕が絶望に叩き落される瞬間だ
「……? 何を誤解しているの? 私は……」
聞きたくない!!!
聞きたくない聞きたくない
ずっと傍にいたのに
あんなに近くにいたのに
どうして
どうして僕は
『好き』の一つも言えなかったんだ
『みぃつけたぁ』
声が聞こえた
「ベリ……っ!」
誰かが僕の中に入ってくる感覚がする
気持ち悪い
言いようもない不快感が体を駆け巡る
僕は堪え切れず、意識を手放した




