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「少しは反省したかー?」
「ちょっと」
「ちょっとかよぉ」
呆れたようにサッシュが笑う。
そもそもナタリアにばれていなければ術を解くつもりもなかったのだから、反省のしようがない。
まぁ、感受はとても痛かったから、威力は弱めて貰ってたかもしれないけれど……
それよりもナタリアがヒロインで無かったことの方が問題だ。
ナタリアがヒロインで無かったとしたら、この物語は誰のものなんだ?
誰のものでもない……?
もしくは
「ヒロインが、二人……?」
妹の声が、聞こえた気がした
『こっちは聖女がヒロインなの。舞台は一緒でもストーリーが違うんだよねぇ』
「アリー? 何言ってんだ?」
ちらりとサッシュを見る。
銀色の髪に、茶色の瞳。
素朴で地味な顔立ち。
ゲームには登場しないキャラで、アインリッシュの友人でもなかった。
川で水切りをして遊んでる横で、同じく水切りをしていたのがサッシュだった。
僕より飛ばしてニヤニヤこっちを見てくる嫌な奴。
沢山喧嘩をした、その分仲直りもした。
公爵の息子だからと畏まらず、対等に話してくれた
サッシュ、君は、この話を、信じてくれるだろうか
僕はもう、一人で抱え込むには限界が来ていた
口を、開いた
「ねぇ、サッシュ」




