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寮に戻るとサッシュと、何故かナタリアも部屋で待っていた。
「上手く収まったみたいで良かったよー。もうナタリアの説教がうるさくてまいっちゃうよ」
「当たり前です! 感情共有魔法なんて御法度ですよ! しかもそれをベリッシュ様にかけているだなんて……このストーカー!」
「うわ、はっきり言うねナタリア……」
ストーカーと呼ばれようとなんだろうと、ベリッシュの事が好きで好きで堪らないのだから仕方ない。
しかしナタリアに知られてしまったのは不味い。
ベリッシュの許可は取っていないし、バレてしまったら幻滅される所の話ではない。
「知らないうちに感情を共有されていたなんてベリッシュ様が知ったら何てお思いになられるか! 嫌われても良いのですか!?」
その言葉はグサッとくる
ナタリアの説教はまだまだ続く。
そういえばゲームでもナタリアは正義感溢れる女の子で、自分から様々な問題に首を突っ込んでいくタイプだった。
そこは一致してるだなんて、余計な部分だけ一致しやがって
でも……
「嫌われたくは、ない……」
「そうでしょう! でしたら今すぐ術を解くべきです」
「……サッシュ」
「へーい」
サッシュが僕の胸に手を当てると、光に包まれた、ハートがついた小さな鉄の弓矢がでてきた。
「これがお前の心臓に刺さってた、ま、受信機みたいなもんだな」
「これが……」
この小さな弓矢があの壮絶な痛みを作っていたのか……。
これがベリッシュの感情の受信機だったと思うと、あの痛みを作っていたものでさえ愛おしく思えてくる。
何かに加工して貰おうかな。
「ナタリア」
「なんです?」
「この事、ベリッシュには黙っておいてくれるよね?」
「条件があります」
「わかってるよ……姉上にはさっき話をしてきた。喜んで引き受けてくれるそうだよ」
「本当!?」
ため息交じりに伝えた僕の言葉にナタリアは目を輝かせた。
僕としては複雑でしかないが、ベリッシュが引き受けると言ったのだから無理やり止めさせる事もしたくない。
なによりナタリアにはベリッシュに今回の件を黙っていてもらわないといけない。
僕は、自分で自分の首を絞めたのだ。
「姉上は忙しいんだから、あまり迷惑はかけないでね」
「もちろんです!」
アルフレッドに会いに行ってきますわと、スキップをしながらナタリアは去って行った。




