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何処だ?
何処にいるのベリッシュ
「~……。~~…」
ふと、人の話し声が聞こえた。
「でも……」
「大丈夫。ちゃんと聞いてごらん?」
「もし、そうだったら……」
「その時は、僕が慰めてあげよう」
ベリッシュだ!!!
声のする方へ一目散に駆けていき、正門で話している二人を見つけた。
一人はベリッシュ、もう一人は……
「ベリッシュ!!」
「!? ア、アインリッシュ!?」
ベリッシュの腕を乱暴に掴み僕の後ろへと隠す。
久しぶりに会ったベリッシュは一段と可愛くなっていた。
しかしその目が、少し赤い。
泣いたの……?
泣かせたのは、目の前にいるこいつか!?
瞬間、頭に血が上って目の前の男を睨みつける。
……見覚えがある。
この顔。ゲームの中。
攻略対象者、宰相の子息、ギルバート・エヴァン
何でそんな奴がベリッシュと!!!
ベリッシュの、肩を、抱いてたんだ!!!!
掴み掛かりそうになる感情を必死に抑えながら、振り返る。
急に現れた僕に驚いたのか、涙は止まっている。
僕の胸の痛みも、いつの間にか治まっていた。
「ベリッシュ、どうして泣いていたの? 誰に泣かされたの? こいつ? こいつに泣かされたの? ねぇベリッシュ?」
「ア、アインリッシュ! 落ち着きなさい! ギルバート様は全く関係ないわ!!」
「じゃぁ誰? 誰に泣かされたの?」
「それは……っ!」
言葉に詰まるベリッシュに、僕には言えない相手なのかともう痛くないはずの胸が痛む。
「まぁまぁ落ち着きなよ弟君。姉上が困っているよ?」
飄々としながら仲裁に入ってくるギルバートを僕は再び睨みつけた。
「アインリッシュ! 申し訳ございませんギルバート様、弟がご無礼を……っ」
「いやいや良いんだよ。弟君は姉上の事となると見境が無くなるねぇ」
ペコペコと必死に頭を下げる姿を見て、徐々に冷静さが戻ってくる。
それと同時に頭を下げさせてしまっている罪悪感に苛まれた。
「姉上……申し訳ございません。ギルバート様も、大変失礼致しました。」
スっと頭を下げる。
その頭を、ギルバート様はそっと撫でながら
「姉上が大事なのは分かるが、将来の騎士団長としてもう少し冷静に物事が見れる様になるといいね」
とおっしゃった。
その言葉と手の温もりに、2歳しか違わないのに大人の余裕を感じ、自分が子どもなのだと悔しく感じた。
中身は23歳のもっと年上なのに、恥ずかしい。
「弟君も来たし、私はこれで失礼するよ。ベリッシュ嬢、ちゃんと話をするのだよ?」
「はい、ギルバート様」
話?
ベリッシュが強い不安を感じた原因についての事を言っているのだろうか




