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夕飯は生きた心地がしなかった。
ベリッシュは父上相手にハインデルト様の素晴らしさを説き、父上は楽しそうに聞いていながらもハインデルト様の話ばかりで複雑そうにしていた。そして僕と同じ質問をするのだった。
僕はベリッシュの恋の相手、もしくはすでに恋人……について思案していた。
学院に入学する前から?入学してすぐ?
何で、何処で、誰と、いつの間に、どうして気付かなかった。
誰。誰。誰。
ねぇベリッシュ、君は誰に恋をしているの。
僕の知っている人なの。知らない人なの。
ねぇねぇねぇねぇだれだれだれだれ
誰なの
そんな問いかけに気づくはずもなく、ベリッシュは楽し気に話すのだ。
「お姉ちゃん。ちょっといい?」
明日、学院へと戻るベリッシュの部屋を訪ねた。
あれからいくら考えても答えがでる筈もなく、答えを知っているベリッシュにも怖くて聞けないでいる。
「なぁに? アインリッシュ」
ドアを開けたベリッシュの髪は、湯あみをしたばかりなのだろうか少し濡れていた。
頬も赤みがさしており、ラフな格好も相まって艶めかしい。
耳に熱が集まるのを感じる。
「これを、渡そうと思って。左手を出してくれる?」
「左手?」
差し出された左手の薬指に猫の肉球を模した指輪をはめた。
「可愛い……どうしたの? これ」
「プレゼントだよ。お姉ちゃんが学院に戻っても寂しくないように。肌身離さず付けててね。」
ぎゅっと左手を握りしめニッコリと笑った。
「わ、分かったわ」
「困った事があったらこの指輪に口づけして名前を呼んで。すぐに駆け付けるからさ」
「すぐに?」
「すぐに。何処にいても、何をしてても、ね」
「とても頼もしい指輪ね。ありがとう、ずっと大事にするわ」
ベリッシュは信じていないみたいだけど、本当に何処にいても何をしてても、その指輪に口づけて名前を呼べば僕はすぐベリッシュの元へ駆け付ける。
友人の魔法具屋の息子に頼み込んで移転魔法を組み込んで貰ったからだ。
その名も猫の足跡リング。ダサいネーミングセンスだなと思った。
プラス……不安な感情を読み取り僕に伝わるように設定してもらった。
友人にはドン引かれ気持ち悪ぃとの言葉も頂いた。
これでベリッシュが不安な時、いつでも傍にいける
「わたくしも渡したいものがあったの。さっき完成したのよ」




