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眉間に皺を寄せどんどん青ざめていく僕をベリッシュが心配そうに見ているが、僕は自分の失態にただただ愕然としていた。
「アインリッシュ? どうしたの? 剣の稽古で疲れているならまた今度でも……」
「え? あ、いや、だ、大丈夫、だよ。今日は天気がとてもいいからさ、テラスでお茶をしようよ」
「本当に……?」
「大丈夫だって!!」
思いのほか大きな声を出してしまい、ベリッシュの肩がびくりと跳ねた。
横からは父上の責めるような視線を感じ、我に返る。
ベリッシュはそれでも、僕を労わるような眼をしていた。
「ごめん……お姉ちゃんとの時間は一分一秒も無駄にしたくないんだ。一緒にお茶しようよ。」
「そうね……私も、貴方との時間、大切にしたいわ」
「……大丈夫だよ、父上」
「あぁ、何かあったら呼ぶんだぞ」
仕方がないとため息をつきながら去っていく父上の背を眺めながら、これから打つべき手段はどうすればいいのか、頭を抱えた。
告白して、男性として見て貰えれば一番手っ取り早いのかもしれない。
けれど、臆病な自分がそれを拒む。
「それでね、ハインデルト様がね……」
案の定、ベリッシュの話は大体が王太子…ハインデルト・カーマインについてだった。
黄金の様に輝いている金の髪が美しいとか、深い緑の瞳は何時も穏やかに微笑まれておられるとか。
面白くない。
つい顔に出してしまいそうになりながらも必死に笑顔を作る。
「魔法もハインデルト様がコツを教えてくださったのよ。これでアインリッシュが自転車を乗り回して壁に 激突しそうになっても、池に落とさないわ」
「お姉ちゃん、流石にもう僕もあんな無茶な事はしないよ……」
「あら、残念ね」
ニコニコと絶えず笑顔で学院の事を話すベリッシュが、遠い存在の様に見える。
このままハインデルトに近づき、恋をしたら、ヒロインとのバトルは逃れられない。
今の内に確認しておかねば。
「お姉ちゃんは、ハインデルト様が、好きなの?」
どうして直球で聞いたかなーーーー僕。
もっと、こう、何の気無しに聞けた筈なのになーーー。
ほら、ベリッシュがびっくりして目を丸くしたじゃないか




