9話
遅くなりました!
「じゃあ、スクロールの実験は終わったな…他に実験するものあったか?」
「お前の謎のスキルだけじゃないか?」
「あー、あったなそんなの。検証っていっても発動条件も何もわかんないんだよな…。」
「もう1回アレやってくれよ…プッ…。」
「絶対いイヤだ、お前の魔法の時は詠唱浮かんだんだろ?俺のは正直なところ解んないだよ…。ほら、俺の頭に呪文詠唱が浮かぶのって通常運転なとこあるし…。」
「ちっ…まあ俺の時は頭に浮かんだ言葉を言っただけだしな。」
「ってことで俺の最強スキル(予定)は後回しだな。」
「口で(予定)って言うやつ本当に居たんだな…。」
「そんな人いたんだな。それでさっき見せてもらった魔石見せて貰っていいか?」
「お前だろうが…、はぁ…。ほらよ…。」
すると龍樹はおもむろに魔石を口へ放り込んだ。
「はあ!?何やってんだバカ!!」
「ブハァ!」
玲二の平手が龍樹の後頭部に強かに打ち付けられ、龍樹の口から放射線を描くように魔石が排出された。
「おい、邪魔するな。」
「黙れバカ。何しようとしてんだ。」
「解るだろ?食べようとしたんだが?」
「何で食べようとしてんだ!って言ってんだよ!!」
「なんかこれ甘そうじゃね?」
龍樹に促され先ほど口から排出された魔石を見る。透き通るような赤色。なるほど、飴玉に見えなくもない…。
「お前バカだろ。」
「失敬な!」
「いや、石食うとかバカだろ。赤ん坊かよ。」
「実験の一貫だ!新たな発見もあったしな!」
「発見ってなんだよ。」
「魔石はガチで旨い。」
「やっぱりバカだな。」
「お前信じてないだろ?マジで旨いんだぞ?すべての旨味成分を凝縮した感じっていうか、とにかく凄いんだよ。なんか体があの魔石を欲してる気がする。」
「よし、止めようか。それを捨ててくる。」
「やめて!それは合法だから!」
「ダメです!これはいけません!舐めるなら飴ちゃんにしなさい!」
「飴ちゃん…。」
龍樹の視線が魔石へと注がれる。
「おい、これでも舐めとけ。」
俺はバックから飴(激マズDX)を取り出し、龍樹の口の中に放り込んだ。
その瞬間、龍樹が動き出し、俺に向かって飴玉を吹き出した。俺の顔面に向かって飛んでくる龍樹の唾液にまみれた飴玉、それを避けようと俺は体を大きく後ろに反らす。スローになった世界で飴玉を全力で回避しようとして気が逸れたその時、龍樹は俺の脇をすり抜け魔石へと直行した。
「ちっ…『ウインド』」
俺は魔法を駆使して龍樹が取る前に風で吹き飛ばそうとした。
「ふっ、残念だったな。お前の魔法は所詮扇風機程度、俺を吹き飛ばす力は無い。これは頂くぜ。」
龍樹は足元の魔石を拾い上げおもむろに口に放り込むとガリ!っと噛み砕いた。
「やばい!龍樹が廃人に!!」
「うっ…。」
「手遅れか…、せめて俺の手で燃やしてやるよ…。」
龍樹、お前はバカだが良い奴だった。
楽になれ。
『ファイヤ』
「口の中ジャリジャリだ…汚な…ってうわぁ!」
「龍樹、お前の死は無駄にしない!死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
龍樹に向かって消しゴム程度の炎をそこそこの速さで飛ばした。
その炎は龍樹の服へと直撃し小さな爆発を起こす。龍樹の服に引火させることに成功した。
「龍樹、本当にお前は良い奴だったよ…バカだけど。」
「なんで、悪は滅んだみたいな顔してんだよ、熱いだろが。」
「何でピンピンしてんだよ…。」
「ライター程度の火じゃあ俺のズボンに穴開けるのが精一杯ってことだな!」
「ちっ…。まあ、いい。身体の方は何ともないのか?」
「口の中がジャリジャリするな!あとはなんともないな~。」
「そうか。てっきりハイになったかと思ったんだがな。」
「そんなんじゃねーよ、ただマジで旨かったから勿体なかっただけだ。っていうかさ、ズボンの穴思ったよりデカイな…高かったんだけどなー、このズボン…。」
「ズボンについては今度買ってやるから気にすんな。そう言えば、火傷はしてないのか?」
「んぁ?そういえば、そうだな…。こんなデカイ穴空く位だし火傷1つないってのもおかしいな…。」
「結構魔力込めて温度高くしたから火傷してないとおかしいんだがな…。」
「なんで魔法使いこなしてんだよ!ってツッコミは置いとくとして、確かにそれはおかしいな。」
「ちょっといいか?」
俺は龍樹の手を強く抓ってみた。
「ん?」
「痛くないか?」
「そんな手加減したら痛いわけないだろ?ただでさえも俺より体力ないのに。」
・・・
「お前はもう人間では無くなってしまったのかもな…。」
「そうか、バレてしまったか。私が古代に封印された邪心だと言うことが…。」
「ハイハイ。そういうのじゃなくてな?今かなり強く抓ってたんだ。」
「マジか?全然いたくなかったぞ?」
「マジだ。さっきの火傷と抓った件を含めて考えると、お前の身体は普通の人間より頑丈になったのかもしれない。」
「おぉ…魔石旨いだけじゃ無かったんだな…。」
「おい、お前はいいのか?この身体で。今までとは違う生活になるんだぞ?」
「ん?なんか問題あるか?体が丈夫になるなんて最高じゃないか?」
「あのな?他の人とは違うって事はそれだけズレが生じるんだ。例えば感覚の差異。お前が大丈夫と思って他の人に勧めた結果その人が怪我を負う事も考えられる。」
「あー、それなら問題ないな。お前も魔石食えばいいんだよ。」
「は?」
「一緒に社会からズレていこうぜ☆」
「ふざけんな。他人にこの事がバレたらどうする?二人ともその体だと言い訳も出来なくなるんだぞ?」
「言い訳ってそんなのする必要なくないか?ダンジョンをたまたま見つけて魔石を食べ身体能力を強化した。どこに悪びれる必要がある?」
「お前はダンジョンを秘匿する気はないと?」
「は?ダンジョンの独占とかマナー悪すぎだろBANされるぞ?」
「おい、ここはゲームじゃない。現実だ。そして、ダンジョンを知った結果それを求めて戦争に発展したりするんだぞ?ダンジョンは言わば未知の資源の宝庫。そんなもんを公開したらろくな事起きないぞ!」
「おい、冷静になれよ。発想が飛躍しすぎだぞ?誰が公開するなんて言った?ダンジョンが資源の宝庫なのもまだ可能性の段階だろ?」
「BANとか言ってるお前が言うか?普通。それに資源の宝庫はもう判明した事だぞ?」
「魔石1つで資源の宝庫とは言えないだろ。」
「モンスターを一体倒す毎にゲット出来る魔石。それを食べれば肉体強化される。つまり、兵士に食べさせれば普通の兵器じゃ死なない無敵の兵士の完成だ。こんなものを戦争に使えばどうなる?分かるだろ?お前なら。」
「近所のダンジョンで籠ってたら世界最強の兵器になった俺は世界征服の夢を見る。始まるな。」
「んなめんどい事夢見るか!」
「うん。いいな。今度書く小説のタイトルはこれにしよう。」
「そうだな。そういう感じのを…って話逸らすなよ。」
「すまんすまん、簡単にまとめると公開するとヤバイってことだろ?」
「まあ、そういう事だ。だから、龍樹の身体の事は誰にも知られてはいけないんだ。」
「じゃあ、出来るだけバレないようにするよ。ただ、魔石は食い続けるからな。」
「流石に全部はお前1人に食べさせる訳にはいかない。」
「お前さっきまで全否定してたよな?」
「当たり前だろ?今でも否定するさ。ただな、龍樹。食べ続ければお前個人で抱えるには大きすぎる重りとなる。そんなものをお前1人で追わせるほど馬鹿じゃないんだよ、俺は。お前が食べるというのなら、俺もそれに付き合ってやる。」
俺は魔石を取ると口の中へ入れた。
「本音は?」
「お前が暴走した時俺が殺せるようにする為だ。」
「おい、ただ俺だけ強くなるのが許せないだけだろ。」
「別に羨ましいとか思ってねぇよ。」
「羨ましいとかじゃないんだろ?ただ俺が先にいるのが許せないんだろ?わかってるわかってる。」
「こいつ…。」
俺は龍樹の腕さっきと同様に抓る。
「おい、だんだん力込めるのやめろ!やめろって…痛いつってんだろが!」
「なら調子に乗るな。」
「事実しか言った覚えないんだが!?っていうか、さっきの力、魔石2個食っただろ!」
「さあ?どうだろな?」
「魔石もスクロールと一緒で山分けだからな。」
「まあ、そう言うな。魔石は幸い4つゲット出来たんだし。」
「じゃあ、さっさとラス1寄越せよ。まさか食ってないよな?」
「ほらよ。」
俺は龍樹に最後1つを投げ渡した。
「あーやっぱ旨いな~。」
「食い終わったら能力に慣れる為にダンジョン行くぞ。」
「また行くのか?」
「力を抑えきれなかったりしたら、家の中の色んな物壊す事になるぞ?それでもいいのか?」
「確かになれさせた方がいいのは解った。じゃあ、そこら辺の空き地でいいだろ。わざわざモンスター出るとこ出やる意味とは…。」
「あのな?空き地何かでやれば他の人に見られる可能性があるだろ?それにダンジョンならさっきとどう変わったか分かるしな。」
「はぁ、そういうもんかー。めんどいな。」
「ほら、ケース持ってさっさと行くぞ!」
「2分待な。」
「はいよ。」
会話文が多いので読みにくかったりした教えてください。
※10/8 誤字訂正