8話
遅くなりました!
「ここで使っていくかい?」
「まあ、人目にもつかないしな。」
俺はスクロールを開き、そっと中央に手を触れた。
龍樹の時と同じように光り輝き、光が俺を包み込んだ。
「終わったのか…?」
「どうだ、なんか変化あったか?」
「ん?何か頭に文字が浮かんできたな…。」
『ウインド』
その瞬間俺の前に扇風機程度の風が現れた。
「え、なんか涼しいんだけど…これってもしかしなくても魔法じゃないか!?」
「恐らくな。この感じだとあと4つ使えそうだな。」
「は!?マジかよ!早く使ってくれ!」
「人目のつかない所に移動しないか?室内だと火が出た時危ないぞ?」
「そうだな、庭出るか。」
「ん?」
俺らが庭へ移動しようと扉を開けると扉の前に優奈ちゃんが立っていた。
「違うから…。」
優奈ちゃんはさっきとは違いデートにでも着ていくような気合いの入った格好をしている。しかし、その顔は真っ赤になってぶつぶつと何事かを唱えている。
「入るタイミング掴めなくてずっと盗み聞きしてたわけじゃないから!」
聞かれてたのか…口封じするべきか、どうするか…
「おい、優奈今の聞いてたのか?」
龍樹が珍しく緊迫した表情で優奈ちゃんに問い詰めている。
「別にいいでしょっ!ていうか、いっつもいっつもゲームの話ばっかしてて飽きないよね、ほんとバカみたい!」
なんだ勘違いしてくれたか…良かった…
「ごめんな?俺が龍樹にゲームの話をしてたんだ。龍樹は俺に付き合っただけだからそんな責めないでくれよ?」
「あ、玲二さんはいいんです!悪いのはどうせ家のバカ兄なんで!」
「なら俺も龍樹と同じだし、バカだね。」
「いや、そういうつもりじゃなくて…えっとその…。」
優奈ちゃんはしばらくオロオロとしていたが、全てはお前が悪いんだと言わんばかりの鋭い眼光で龍樹を睨む。
「おぉ怖い、さっさと外いこうぜ。」
「ごめんな?優奈ちゃん。」
俺らはむくれる優奈ちゃんを置いて、庭に移動した。
「よし、何から試すか。」
「なんでもいいぞー。標的はそこの壁でいいだろ?」
「龍樹を的にしようと思ったのだが…。よし、行くぞ。」
『ファイヤ』
俺の手から消しゴム程度の大きさの火が勢いよく飛び出し、壁にぶつかった。
「ふむ。火の玉か…次はなんだ?」
リアクション薄いな…まあ、いい。
『ウォーター』
まるで俺の手のひらが蛇口になったかのように水が流れ出た。
これは飲めるのか?
口を近づけて飲んでみると、今まで飲んできた水が嘘のように美味しかった。
「おい龍樹!この水めっちゃ美味いぞ!!」
「お、おう。」
「何だ?龍樹。微妙な顔して…。まあ、いいか。」
『ライト』
俺の前に野球ボール程の大きさの光の球が現れた。
おお、これならヘッドライト要らないな。便利だ。
「次がラストだ。」
『ヒール』
「土はどこいった!?」
「知るかよ。俺が使えるのはこれだけだ。」
「色々おかしいだろ!風!火!水!って来てなんで光!?しかもどれもショボいし!魔法ってもっとドーン!バーン!って感じじゃないのか!?」
「まあ、初級魔法みたいだしこれが普通じゃないか?それにほら。」
俺は風魔法と水魔法を使い、涼やかな風を俺と龍樹周りに生み出した。
「便利だろ?」
「いや、魔法って言ったらもっと派手で強いもんじゃん…なのに…。」
「別にいいじゃないか。某異世界転生のラノベでも初級魔法で魔王軍幹部に立ち向かってる主人公とかいるしさ。」
「お前はわかってない!魔法はロマンなんだよ!高い火力で一気に戦況を変える秘密兵器。それが魔法なんだ!」
「お前はなー、いつも言ってるだろ?高火力の魔法はMP消費が激しいから初級魔法程度が1番使い勝手がいいんだよ!!」
「そんなセコい考えだからお前はいつもいいとこで負けるんだよ!この前だってあと一歩のとこでエリクサー出し惜しんで全滅してたじゃねーか!MPなんて使ってなんぼだ!」
「後先考えずにポーションとか使った挙句に俺に金借りてたのはどこのどいつだよ!」
「勝てたからいいんだよ!負けるよりましだ!」
「はあ、とりあえず、現実を見ろ。俺が使えるのはこれだけだ。お前の希望とか知るか。」
「そうだな、いつか強いスクロール手にいれてどでかい魔法ぶっぱなしてやる!そんなわけで次のスクロールは俺に使わせてくれるな?」
「は?お前は初回特典を無断で使っただろ?だから、しばらくお預けだ。」
「異議あり!」
「だが断る!」
「くそがーーー!俺だって魔法使いたいんじゃーーーー!」
「知るかよ!こういうのは運だろうが!」
「わかった。じゃあこうしよう!次に綺麗なスクロール出たらお前にボロいのは交互ってことでどうだ?」
「まあ、それならいいが…。無断では使うなよ?」
「そこは心配しないでくれ。そもそも隠しようがないしな~。」
「はあ…、まあいいか。」
読んで下さりありがとうございます。
次回更新予定日は12月22日、23日です。