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非日常の世界へ〜11〜

どこから話そうか、と考え出すヘルをぼんやりと見つめて鶫は思う。

なんか妙にリアルだけど、冷静になってみたら悪魔とか実在する訳ないし絶対夢オチパターンだよね、あれ?じゃあコレって明晰夢ってやつ?…と。


「今く…ヘルが言ったばかりじゃないですか。今から話すことは全て真実だと。だと言うのに夢オチってなんですか。」


声に出した訳ではない。けれど、ゴートは拗ねた声を出して鶫の考えていたことを否定する。自分は声に出したか、と鶫は焦るがきょとんとしているフレイの顔を見れば声に出していない、と言うのは自信を持って断言できた。

ならば何故、ゴートは鶫の考えていることを的確に当て尚且つそれを否定することまでできたのか。それはコレが夢だからだ、と鶫は1人納得することにした。割となんでもありな夢の中――例えば空を飛ぶことすらも可能な夢の中ならば、そういうこともあり得るだろう、と。


「そりゃあ、いきなり出て来た妙な格好のヤツらに『貴方はもう既に死んでいて人間じゃないのです』、なんて言われて信じられないのは分かりますけどね。けど、ハナから信じないなんてあんまりじゃあありませんかね?」

「す、すみません…。けど、やっぱりその、非現実的というか…信じ難いというか…。」


ゴートの威圧感に鶫はしどろもどろになりながら答える。ヒッ、と情けない声を上げなかった鶫はこの短時間の間に何かが鍛え上げられたのだろう。


「やめなさい。いきなり『自分達は悪魔です。』とか言う奴らをあっさり受け入れないのが普通でしょうが。少年の反応は普通だ。分かってるだろ?むしろ簡単に受け入れられてたら全身全霊で病院勧めるところだぞ?」

「そう聞くとオレら、変な宗教関係の人間みたいだね…。ご近所さんに布教活動して回ってそう……。うわ、怪しい。」


不機嫌になり、鶫に対して攻撃的なゴートの頭にヘルのチョップが落ちる。ゴスッと言う音から軽いものではないのが分かる。そんなヘルは頭を抑えて身体を縮こませるゴートを呆れたように咎め、そのやり取りを聞いたククリが呑気な事を言う。しかも何故かククリはイララバと戯れている。

いつの間に、と鶫が己の膝を確認すればそこには無造作に置かれたタオルがあるだけだった。


「ハイハイ、じゃあ話脱線してるから修正するぞ。

少年、君は『悪魔』について何処まで知ってる?」


パンパン、と手を叩いてヘルが最初の話題に軌道修正する。予想していなかったタイミングで話を振られた鶫は、吃りながらも必死に頭を回転させて自分の持っている知識を探し出す。


「そ、うですね……。あんまり詳しくは…。こう言うのも何ですけど…『悪者の象徴』みたいな印象が強いですね……。あと取引すると魂取られるとか、鏡には映らない、とか……?」

「まー…うん、そうね。やっぱり人間たちの間ではその印象が一般的かな。実際、昔はそういう悪魔の方が多かったみたいだし…今は違うけど。んじゃまずは『悪魔』って種族についてから説明しようか。」


ニコニコと爽やかな笑顔を浮かべるヘルの提案に、鶫はお願いします、と頭を下げる。そんな鶫を見てもう一度微笑んだヘルは事務机の引き出しからスケッチブックのようなものとペンを取り出し、サラサラと何かを書き始めた。


「んじゃ、よし。そんじゃ説明するな?

まず、この世っていうのは三つの世界から成り立ってる。一個目がここ。人が住む人界(じんかい)。二個目が俺たち悪魔が住む、地界(ちかい)。三個目が神やら天使やらが住む、天界(てんかい)。この三つの世界は互いに支え合って存在しているんだ。」


紙芝居のように見せられたスケッチブック。そこには三つの縦に並んだ大きな丸が書いてあり、丸の中には上から天界、人界、地界、と書かれてあった。恐らくイメージしやすいように、と書いてくれたものなのだろうが、あまりに簡素なそれに、鶫は失礼だと知りつつも小さく吹き出してしまった。横から伸びてきたククリの手が連なった三つの丸の上下に縦線を伸ばし、隣に『団子』と書いた所為で余計に。


「人が真面目な話してる時に茶々入れるんじゃない。」

「だって、お腹空いた。」


スパーン、とヘルに頭を叩かれたククリはゴートのようにいじけることもなく、マイペースに自身の空腹をアピールする。そんなククリに、後で作ってやるから我慢しろ、とまるで母親のようなことを言うヘル。会話の内容は高身長の男2人がするにはどことなくアンバランスである。


「…説明続けるぞ。この三つの世界はそれぞれ作用の力が異なってな。それがそのまま種族間に出ていると言っても過言じゃない。

例えば、地界と天界。この二つは相反する作用を持ってる所為で反発し合うんだ。磁石の同極同士みたいなものだな。だとすると人界は二つの世界とは反対の極…または金属板みたいなものだな。」

「あぁ、だから天使と悪魔って真逆のイメージがあるんですね。」


納得したように鶫が頷き、ヘルは理解が早くて助かる、と笑う。そして人界と書かれた丸の上下にN、天界、地界と書かれた丸の人界に接する部分にS、と書き足した。


「で、天界の連中と地界の連中はそれぞれ特殊な力を持ってる。コレが人間たちが言う、「願いを叶える力」だ。大体の原理っつーか仕組みは同じなんだが……まぁ、要は物々交換だな。何か願いを叶える代わりに何かを貰うっつー。

そん時に昔の悪魔は人間から魂を貰ってたんだよ。確か……俺の曾々(ひいひい)祖父様の頃だったかな…。多分、その所為で悪い印象が強いんだろうな。」


そこまで一気に話してヘルは、昔の連中も厄介な事してくれたぜ、とため息を吐き出した。

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