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第二話

 第二話〜日曜日のデート〜


数日間の学校生活が終わり、高校生活で初めての日曜日の朝……

「秋菜ちゃん」

 私の部屋のドアがノックされて返事をする前にお姉ちゃんが私の部屋に入って来た。ノックしても返事無いのに入ってきたら意味無いじゃんとか言っても聞いてくれないのでもう言わない事にしている。

「何?」

「遊園地行きたい」

「行ってらっしゃい」

「秋菜ちゃんと一緒に行きたいな。ほら、秋菜ちゃんいっつも忙しそうにしてるからたまには……ね?」

「私の疲れとか気遣ってくれてるの? うん、そう言う事なら……行こうかな」

 お姉ちゃんの喜びぶりを見てるだけで疲れとか飛んで行っちゃうし、幸せな気分になれる。でも……ここからが大変。お姉ちゃんが出かけるのは、遠足に行く小学生を見送る母親くらい大変なのである。持ち物とかを一々チェックしないとダメなのです。


「お姉ちゃん準備出来たぁ?」

「昨日に終わらせたよぉ〜」

「って事は……私が断っても遊園地行くのは確定事項だったんだ……」

 ま、それだけお姉ちゃんが私と遊園地に行きたいって事だよね。何か……すっごく嬉しいなぁ〜

 こんなお姉ちゃんですけど、ウチの学校の二年生の間では、男女問わずに学園のアイドルとか言われてるくらいのお姉ちゃんなので、そんなお姉ちゃんと休みにお出かけ出来る特権を誰より持ってる私は幸せ者なのかな……とか思いながら私はお姉ちゃんの手を握って二人一緒に家を出た。

 こう言うのも……たまには悪く無いかもね……


 私とお姉ちゃんが来た場所は、ウチからバスで数十分と少し遠めの遊園地なのです。近所にもあるのに、何故ここを選んだかと言うと……お姉ちゃんが偶然無料券を持っていたからです。この券はお姉ちゃんの部屋で私が偶然発見したもので、お姉ちゃんは全く知らなかったとの事……これがあるから遊園地……じゃ無いんだ。

「お姉ちゃん、まずどこ行くぅ?」

 お姉ちゃん程じゃ無いけど、遊園地と言う物が好きな私も少し童心に帰った感じで楽しんでいた。

「秋菜ちゃんが決めて良いよ……」

 私の中で少しだけ考えがひらめいた。ちょっとお姉ちゃんに意地悪するのも楽しいかなと思ってしまう。

 きっとお姉ちゃんの性格からして怖い所はダメ。私も得意じゃ無いけど……多分大丈夫……だから私はお化け屋敷に行く事にした。

「お姉ちゃん。お化け屋敷に行きたい」

「お化け屋敷?」

 お姉ちゃんも了解してくれて早速お化け屋敷に行く事になりました。なったのです……けれでも……入り口付近からすでに怖いオーラが流れ出しており私はお姉ちゃんの腕にしがみつきながら歩いていた。

 そして最初のお決まりの角から人が飛び出すシーンでは……私は絶叫寸前だったのにお姉ちゃんは……

「あははは、このお化け凄い顔してるよぉ〜すっごく赤い〜」

 っと、まぁ血と言う事を理解していない天然っぷりを発揮しちゃいました。私の計画大失敗……


「あぁ〜……怖かった……」

「えへへ、私は楽しかったかな。ず〜っと秋菜ちゃん私にくっつきっぱなしだったんだもんねぇ〜まだ怖い?」

 私はお化け屋敷から500メートルくらい歩いた地点でまだお姉ちゃんの腕に抱き付いている事に気付いた。

 まだ震えが少し止まらない。そんな私を見てお姉ちゃんが……

「怖かったかな……少し休もうか?」

 と言ってくれた。生活能力0な天然さんなのに私の変化については良く気付いてくれる少し変わったお姉ちゃん。

 ベンチに腰を下ろしてもまだお姉ちゃんの腕に抱き付いている。本当に怖かった……どれくらい怖いかと言うと……口に出せない。

「秋菜ちゃんゴメンね……」

「え?」

「私がもう少し先にこの遊園地の事とか知ってたら怖いんだよ? って助言出来たかも知れないのに……」

 そんな……お姉ちゃんが悪い事じゃ無いのにとっても悪い事をしてしまった感を出しているお姉ちゃんの顔は今にも泣きそうな顔になっていた。

 私が必死に慰めると、お姉ちゃんは普通に嬉しそうな顔になって喜んでいた。

 私の震えもそろそろ止まるかなって頃に事件は起きた。何だか怖そうな男の人達がそろそろ次の場所に行こうと二歩くらい歩いていた私達を囲んだ。ナンパって言う奴なのかなとか考えたけどまた私の震えは止まらなくなった。怖い、怖すぎると思う程手足の震えは止まらない。

「へへ、コイツびびってやがるぜ」

「なぁ嬢ちゃん俺たちと遊ばねぇか?」

 お姉ちゃん……が助けになるとは思えないし……とか思いながらパニックになっていると、私は腕をひっぱられてお姉ちゃんに担がれた。

「逃げるよ」

 そっか、お姉ちゃんは足だけは平均以上にずば抜けて速かったんだから、こんな人達から逃げるくらい簡単だったんだ。お姉ちゃんも頼りになるねぇ〜


 しばらく走ったあと、私は怖さで体が震えているのにお姉ちゃんは呼吸を乱す事も無く普通に歩いていた。

「せっかくの秋菜ちゃんとのデートが台無しだね……」

「良いじゃん……初デートはこんなだったけど……お姉ちゃんが行きたいなら私はいつまでも一緒について行ってあげるから……ね? そんな悲しそうな顔しないでよぉ〜」

 私は泣きそうになったが、お姉ちゃんの前では絶対に泣かないと言う強がりから作り笑いを浮かべた。そして気付いた。お姉ちゃんが私と遊びたいと思うのと同じ様に、私もお姉ちゃんと遊びたかったんだ……

「ムリしないで……」

「え?」

「今の秋菜ちゃんはとても辛そうな顔をしてる。今にも泣き出しそうなくらいに……私は何も出来無いけど、秋菜ちゃんの気持ちくらい簡単に判るよ」

 そう言いながらお姉ちゃんは私の頭を何度も何度も撫でてくれた。泣かない……絶対に泣かないと思ってたのに……

 お姉ちゃんが私の顔を隠すように抱き付いてきた。それで私は我慢の限界になる。

「うぅ……ひっく……うわぁぁぁぁ〜ん」

 こんなにも悲しい気持ちになるなんて初めてだった。小学校の頃に雨で遠足が中止になる悔しさと違う。テストで点が想像以上に低い悔しさとも違う……何か、胸の奥がエグられる様な悔しさ……


 ぐーーっ


「な、何の音っ!?」

「秋菜ちゃん、お腹ペコペコ」

「もう人が泣いてる時にっ!」

 私は少し怒ったフリをしてみる。

「いつもの秋菜ちゃんに戻った〜」

 お姉ちゃんが狙ってこんな事をした……訳は神に誓ってもありえない事だけどお姉ちゃんはいつも私の心を包み込んでくれる。

 そんなお姉ちゃんだから好きになれたのかな……お姉ちゃんが私より好きな人が出来る訳無いけど、いつまでもこのままじゃ……


 私はお姉ちゃんの手を握ってからこう言う。

「今日の晩御飯は初デート記念だからすっごく張り切っちゃうから」

 勝てもしない競走をお姉ちゃんに吹っかけて私とお姉ちゃんは一緒に家まで走った。

「お姉ちゃん……私、とっても幸せだよ」

「ん……私も」


 こうして私の日曜日デートは終わりを迎えるのでした。

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