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兄とサエ  作者: 栗栄太
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7 再戦の報告



「 どうだった?・・・・・駄目だったんだな。まあ座れよ」 

仏頂面で現れた善太郎に一応確認はしたものの、結果は表情から明らかだった。

「 それにしてもどうしてこっちに来るんだ?清秋はどうした?」 

直接向こうに行けよと思いながら言うと、善太郎が低く答えた。

「 あいつも後で来る」 

「 ・・・・・私は勝手にお前達の仲間に入れられたんだな。一応本人に同意を取ってくれよ。面倒なんだよお前の相手は」

「 何だとてめえ。梅ん時俺がどんだけ相談にのってやったと思ってんだ」 

「 勝手に来て、人の傷をからかって笑ってただけだろう・・・。まあ、あれも相談と言えないこともないかな」

「 おい、そろそろ俺の話を聞け」

善太郎が給仕の運んで来た酒をあおって図々しく言い放った。

「 相変わらず勝手な男だな・・・・」 


「で、どうなったんだ?サエちゃんに伝えたのか?」

「おうよ。はっきり真剣に言ったぞ。お前が好きだ、嫁に来いってな」

「・・・・・お前のその真っ直ぐさは本当に羨ましいよ。で?断られたのか?」

「死ね。そうじゃねえ。本気だと信用してもらえねえ」

善太郎は椅子の背に寄りかかり、機嫌悪そうに腕を組んでいた。

「え?まだ駄目なの?・・・お前これまでの行いが悪すぎ、」

「黙れ。梅と同じこと言うな」

「ああ、梅ちゃんには言ったんだな。じゃあ梅ちゃんが上手く伝えてくれるだろう。心配するな」

「いや、自分で言う」

「言うって・・・。言うのはこれまでさんざん言ってきてるんだろう?梅ちゃんにまかせろよ」

「これまでの誤解をとくんだよ。だが、サエが聞く耳持たねえ。どうしたらサエが黙って俺の話を聞くか考えろ」

善太郎がまた私の言葉を聞かずに勝手なことを言い出した。

「お前が考えろよ。話を聞かない人間の気持ちはお前が一番分かるだ」 

「ああ来たな。よお!こっちだ!」

善太郎の視線の先には当然清秋がいた。

「・・・・・聞けって」


「どうだったんだ」

酒をあおり一息ついた清秋が尋ねた。

善太郎が仏頂面でこちらを促してくる。

「・・・自分で話せよ。はっきり告白したが結局聞く耳持たないんだとさ。もうこいつの自業自得だね」

「うるせえ」

「お前が伝えるのは不可能だな。梅かこいつに頼め」

清秋が私を顎で示しながら善太郎に言った。

「何故私なんだ。どう考えても適役は梅ちゃんかお前だろう。私はサエちゃんとは一度しか面識がないんだよ」

「ああ、そうなのか?じゃあ梅だな」

うんざりとした私の問いに清秋があっさりと答えた。

「青おめえ。随分人事じゃねえか」

「人事だ」

「違いないな」

「冬之助おめえはすっこんでろ。青おめえ、がきん頃から同じ女に惚れ続けてた俺の気持ちは良く分かるだろうが。自分が駄目だったからって俺に協力しねえとは言わせねえぞ!」 

清秋がいつにも増した仏頂面で、正面に座る善太郎の顔を見たまま私に言った。

「・・・・・冬之助、前言撤回だ。こんな人間と友人関係を続けている自分が哀れだ」

「同感だけどさ。お前も呼び捨てなの?年上だと言ってるだろう・・・」






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