6 兄の真実
「 兄さんどうしたの?」
「 ああ?何が?」
「 何がって・・・。そんなにしょぼくれてたら聞かなきゃいけない気がするでしょ・・・」
お使いで私の水茶屋に来ていた兄さんは、今までに見たことがない程元気がなかった。
「 そこでサエに会ったんだけどよ・・・」
「 またサエなの?」
兄さんはついに溜息を吐いた。信じられない。この兄さんが溜息!
「 あいつは。人の言うこと素直に聞きやしねえ・・・」
「 ・・・・・・まさか兄さん」
「 なんだよ」
「 ・・・・サエが好きなの?」
兄さんはじとっと私を見て恨みがましく言った。
「 お前もやっぱり今更かよ・・・」
「今更って何なの!?え。・・・・・・もしかして昔からずっと?」
兄さんは今日もきらきらと日の光を映す川のほうへ視線を向け、遠い目をした。
「 あーあ、何でなんだろうな。隠したつもりもねえのによ」
そうと聞けば思い当たる節はたくさんあった。
「 じゃ、じゃあ。サエに会う度に、嫁にはいつ来るんだとか、俺に会いたかったのかとか言ってたのは?」
「 あ?言ってたのはなんだよ?」
「 まさか本気だったの?」
「 あったりめえだろ。冗談でそんなこと言うわけねえだろうがよ・・・」
兄さんは私をにらんだ。
「 あ!じゃあ嫁を検討してるって言うのは?」
「 ああ?なんだそりゃ」
兄さんは物凄く怪訝な顔をした。
「 サエが、兄さんが店を継ぐために嫁を検討してるって、手当たりしだい女の人に声かけてるって言ってたわよ」
「 はあ!?ふざけんな!誰が手当たりしだいだあの女。俺はサエに言ったんだ!」
「 怒鳴らないでよ!全くサエには伝わってないわよ!ていうか怒ってたわよ」
珍しく笑いを含まない怒鳴り声を出した兄さんは、縁台にどっかりと座り込み頭をかかえた。
「 手当たりしだいって何なんだよ。好きなのも伝わってねえうえに、俺はそんな風に見られてんのかよ」
兄さんはもう一度溜息をついた。
「 なんだってお前にこんな話しなきゃならねえんだ。俺はサエに説明してえんだ・・・」
「 すりゃ良いでしょ、サエに。きっちり説明しないとあの子兄さんのことすっごく誤解してるわよ」
サエは兄さんのことを女好きのちゃらんぽらんだと思っている。
正直私もそう思っていた。あの軽い発言がサエだけに対するものだとは知らなかったからだ。
「 ・・・・・・聞く耳持たん」
「 ・・・・・・今までの行いが悪すぎたのね」
「 行いが悪いってなんだよ。俺は気持ちを伝えてただけだ・・・」
「 ・・・・伝え方と人間性の問題だね。私から説明しとこうか?」
確かに、サエは兄さんの言うことでは信用しないだろう。
ろくに聞きもせずに喚いて立ち去る姿が目に浮かぶようだ。
「 いや、俺が言う。お前は黙ってろ」
「 大丈夫なの?」
「 どうにかする」