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兄とサエ  作者: 栗栄太
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5-2 友人達の確信と再戦


横を向いて、善太郎と清秋が無理なく見えるようにし様子を窺った。

「 お前、好きだと言ったことはあるのか」 

清秋がとても基本的なことを尋ねた。

「 言ってねえつもりはねえ。でも覚えてねえ」 

「 はあ?」 

いけない。口を挟んでしまった。面倒だから静かに見ているつもりなのに。 

「 けどよ、まだ嫁に来ないのかとはしょっちゅう言ってたぞ!」

「 今回が初めてではないのか。サエはどう言ってたんだ」 

「 まあ、大抵は無視だな。たまに、怒り狂う」 

「 それを、羞恥のためと考えていたのか。気楽な奴だな」 

同感だ。善太郎は忌々しげに椀の酒を飲み乾した。


「 それで、今回は何が違ったんだ」 

清秋が落ち着いた太い声で質問を続けた。

「 ああ?どういう意味だ?」 

「 求婚を断られるのが初めてでないのなら、何か他におかしいと気付く切欠があったのだろう?」 

「 ・・・分からん。何となくだ。それで、他に好いた男でも出来たのかと思って梅に聞いた。ああ、思い出したぞ!昨日は真面目だったんだ」

「 どういうことだ」 

「 だからよ。昨日は、お互い家業もあっからゆくゆくのことを考えてそろそろどうすっか決めねえとと思って、嫁に来る気はあんのか真面目に聞いたんだよ」 

「 真面目か。それまではそうじゃなかったんだな・・・」

ふざけて言ってたんだな。

「 いつもの反応は照れてんだと思えるような可愛いもんだったんだけどよ。昨日のはちょっと頭にきてよ。言われたことは普段と対して変わらねえが、やっぱ真面目に言ってんのにそんな言い方する奴じゃねえはずだろ?それで何か変だと思ったんだよな」 

善太郎は話しながら自分も納得したようだ。

そして多分、私と清秋のふたりは気付いたことがあった。

「 お前・・・」 

清秋が呆れたように言って言葉を切ったので、引き継いだ。

「 お前もしかしてこれまで、ようサエ!まだ嫁には来ねえのか!がはは。とか言ってたんじゃないだろうな?」 

善太郎は当然だという顔をして頷いた。

「 まあそんな感じだな。それがどうした」 

「 ・・・・・」 

今度は私が黙ったので清秋が続きを引き受けたようだ。

「 それではサエもからかわれているとしか思わんだろうな」

善太郎が一瞬考え、焦った様子で否定した。 

「 なんだと!そんな訳ねえ」 

「 そんな訳なくないだろ・・・。反応が可愛いからって毎回からかってたんだろ?お前のやりそうなことだよ」

完全に呆れた口調の私に、次第に元気をなくしていく善太郎が答えた。 

「 そりゃまあそうかもしれねえけど、嘘は言ってねえ。早く嫁に来いと思って言ってたんだよ」 

「 伝わってないんだよ・・・。まさかそれを長年続けて来てたのか?」

今度は黙った善太郎のかわりに清秋が答えた。

「 そうだろうな。少なくとも五年は言ってるはずだ」 

善太郎が一度口ごもり、慌てて反論した。五年は確実の様だ。

「 嫁の何のを五年も言ってるわけねえだろ!五年前はまだあいつは十二だぞ!」 

「 ずっと好きなんだろう。嫁に来いとは言わなくても何か他のことでからかってたんだろう。俺に会えなくて寂しかったろ、がははとか、梅じゃなくてほんとは俺に会いに来たんだろ、がははとか会うたびに言ってたんじゃないのか?」 

「 うるせえ!」 

図星の様だ。

「 信じられないな。それなら良い子なのにお前だけ邪険に扱う気持ちもわかるよ。しつこくからかってくる面倒な男じゃ好き嫌いにかかわらずそうなって仕方が無いじゃないか・・・」 

善太郎はまたもやがっくりとうなだれた。


「 善太郎。お前以前私に言った言葉を覚えてるか?」

善太郎がどうでもいいという風に投げやりに答えた。 

「 背が低いことは気にすんなってあれか」 

「 違う・・・。好きだ付き合ってくれって言えってやつだよ」 

善太郎は再び沈黙した。

「 ・・・覚えてないんだな。梅ちゃんの気持ちを量りかねていた時にお前に言われたんだよ。そうすりゃはっきりするって」 

「 確かにお前がさっさとそう梅に言えば、梅が泣く事もなかっただろうな。何故言わなかったんだ」 

清秋が私に向かって発言した。

「 今私の話は関係ないだろう」 

脱線する清秋を黙らせようとすると、善太郎が今日一番の元気な声で割り込んできた。

「 こいつ、そん時梅に好きだって言いに行ったら女だと思われてたんだよ!がっはっは!」 

「 お前も人のこと笑ってる場合じゃないだろう!しかも覚えてるじゃないか!というかお前ら、人のことをお前だこいつだって。私が年上だってことをたまには思い出せよ・・・」 

「 だが、今更善がサエにそう言ったところで、また同じことだろう。からかったと思われて暴言をはかれて終いだ」 

清秋が私の言葉を無視して話を戻した。

「 ・・・・確かにな。お前真面目にしゃべれるの?昨日も大して真面目には言えてないんじゃないのか?」 

「 ふざけんな。馬鹿にすんじゃねえ!じゃあ今から行ってはっきりさせて来てやらあ!サエに俺はお前が好きだって分からせればいいんだろ!」

私を笑いものにしたせいか少しは調子が戻った様だ。 

「 明日にしろ。何時だと思ってるんだ・・・。あれ、これもどっかで聞いたことあるな?お前に言われたのか?」 

私が首をかしげていると、清秋が言った。

「 お前たち仲が良いようだな」

清秋に向かってひらひらと手を振る。 

「 親友の座は譲ってもらわなくて結構だよ」 


 


「何よ?」 

「 おうサエ。よく聞けよ。俺はお前が好きだ。嫁に来い」 

「 ・・・・・・・まだ言うか!他の女んとこ行けー!!!」 


「 ・・・・なんでなんだ・・・・」 








むさ苦しくてすみません。次話から女の子も出てきます。

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