魔法の言葉
「知ってる人ですか?」
ハーメルン市を出てヴェーゼル川の橋を渡った先の三叉路を南に向かい、しばらくしたら川を離れ西に折れる。アェルツェンに向かう道すがら、イルゼが尋ねてきた。もちろん、件のホーエン老人の話だ。
「うん。知ってるって言っても、何回か会った程度だけどね」
もっとも、その何回かの訪問とそれにともなう贈り物で、ネオがどれだけ助けられたのかは言うべくもない。なにしろ叔父のよこす服などは、すべて従兄のお下がりだったからだ。新品の服をよこせとまでは言わないが、ボロボロにすり切れて雑巾と見紛うほどのお古をどうにか着れるように修繕するのにも辟易していた。そんな中で、青色に染めた新品のバルヘント織りや革細工道具など、とびきり上等なプレゼントをしてくれたホーエン老人には、感謝の言葉がいくらあっても足りない。たとえその裏に、「いずれは優秀な靴屋をアェルツェンに引き抜こう」という下心が見え隠れしていたとて、数々の贈り物はすべてネオの宝物だった。
それにしても、おそらくアェルツェンの豪商だろうと見当はつけていたものの、市参事会の隠居とは驚いた。商人どころか領主やその家柄に連なる、やんごとない立場の老人なのだろう。それならばツンフトに顔が利き、また腕の良い職人を集めたがるというのも納得がいくというものだ。
しかし、ネオの方から訪ねてきたとなると、かの老人も驚くことだろう。加えて、事情が事情だ。引き抜こうとしていた靴屋の徒弟が突然向こうから訪ねてきて、しかも、二十四年前のハーメルンでの事件について教えて下さい、などと言うのだ。老人の驚きの顔が目に浮かぶ。
「アェルツェンまでは、あとどのくらい?」
「このペースなら、明るいうちには着くと思います」
そう遠くはないとは聞いていたが、まさか一日足らずで歩ける距離だとは思わなかった。森に挟まれて見通しが悪いとはいえ、ハノファーレに向かった畑の真ん中の泥道に比べて、しっかりと踏み慣らされた街道は歩きやすい。加えて、今回は二頭のロバが一緒に歩いていた。どうやらシュタイナウが「二頭のロバはイルゼの親から奪った」と証言したとかで、アレクサンデルとアルブレヒトの二頭は突然イルゼのものになってしまったのだ。
旅籠に置いて出かけるわけにも行かず、そのまま連れているわけだが、昨日までは食べ物や着替えに革細工道具、とどめに巨大な聖書を詰め込んでパンパンに膨らんだ鞄をいくつもぶら下げて、しかもバグパイプを吹き鳴しながら歩いていたのを思うと、こんなに楽なことはない。ロバに申し訳ないくらいだ。
それにしても、ホーエン老人はいったいなにを知っているのだろう。確かに余所の街とはいえ市参事会の関係者ともなれば、その証言はそこいらの放浪楽師や靴屋の徒弟などよりも遥かに重いものになるだろうが、そもそもの事件はハーメルン市で起きているのだ。つまり、ホーエン老人はハーメルン市となにかの関わりがある人物なのだろうか? そして、二十四年前の事件にも深く関わっており、その真相を知っているのだろうか?
「イルゼは、なにか聞いたことない?」
「アマラさんが言うには、八年前……私を拾って間もないころ、アェルツェンに行ったみたいです。……でも、そのときの私は、右も左もわかんなくて、ぜんぜん覚えてないんです」
申し訳なさそうに言うイルゼだが、八年前と言えば、ネオでさえも六歳になって父親の靴作りを手伝いはじめたばかりである。イルゼは当然四歳前後ということになる。しかも、父親を殺され、それをした張本人に――シュタイナウの言葉によれば――さらわれた直後だったのだ。文字通り、右も左も分からないというのが実情だったろう。そんなイルゼに正確な記憶を求めるほうが無茶というものだ。
いずれにせよ、あと少しでわかることだ。アェルツェンまで行けば、すべてが明らかになるはずなのだ。もっとも、それでなにがどうなるのか、まだまったくわからない。しかし、なにも知らないうちにすべてが解決したということになって、もやもやとした得体の知れぬ気持ち悪いなにかを抱えたまま過ごしていくよりは、はるかに良い。そんな期待と希望を込めて、アェルツェンへと急いだ。
本当に近かった。そろそろ休憩を、などと考えているうちに九時課の鐘が聴こえてきたのだ。もちろん、ハーメルンの鐘ではない。ミンデンといい、ハノファーレといい、今までの旅は何日もかかることが当たり前だったために、ほとんど拍子抜けですらあった。
ハーメルンがヴェーゼル川と水車の街だというのなら、アェルツェンは森の街というのが相応しい。それが、この街を最初に見て思ったことだった。事実、森の中に突然、石造りの壁がのっそりと顔を出したのだ。壁一枚を隔てて森と街が隣り合っている。森には背の高いブナの木がたくさん生えていて、そのうちの何本かは街の壁よりもはるかに高い。まるで森に街の中を見張られているような薄気味悪ささえ覚えた。
しかし、もはや動じることはなかった。きっと、街というものはどこでも多かれ少なかれこういったものなのだろう。ハーメルンは水に住む水妖と、バート・ミンデネアではお湯を沸かし続ける火蜥蜴と、それぞれ折り合いをつけながら、誰もがそれを当たり前として暮らしていたのだ。この街の住民も、森に住むという木の精や狩魔王と折り合いをつけながら暮らしているのだろう。
そんなことよりも、街に入るのにロバに積んだ荷物を改められただけで、お金を取られないという事実のほうがネオを驚かせた。
「アェルツェンには、橋がないですから」
イルゼの言うとおり、確かにハーメルンでも橋のない東門では、商売を持ち込まない限りはお金を取らない。逆にいえば、橋というものは、ただそこに橋があるというだけで、とんでもない収入源になるのだ。
門で荷物を改められたのは、隠れて勝手に商売をしないためだという。もしも二人で作った大量の靴などを持ち込みでもしたら、かなり高額の税金を取られるものだそうだ。そういえば、三叉路でそれを売りさばいたティルも、ヴェーゼル川を渡るときに橋渡し賃を支払ったと言っていた。街に入るということ。それは、そこに商売が絡むかどうかで、まったく異なる意味合いを帯びてくるものなのだ。
ただ街に入るだけでこれだけの話になるのだ。もしもネオが引き抜きに応じていたら、それはネオがアェルツェンの住人になるということを意味する。しかし、ハーメルン市がそうであるように、どこの街でもその住人として定住するのは簡単ではない。普通は相手の市参事会に大金を払い、その上で街から一歩も出ることなく一年以上の期間を過ごさねばならない。場合によっては人付き合いも制限される。これは敵対勢力によって送り込まれた間諜者から街を守るために絶対に必要なことでもあるのだが、老人の引き抜きに応じていたら、ネオはそうした手間をすべて飛び越してアェルツェンの住人としての権利を手に入れていたのだろう。それができるホーエン老人は、やはりこの街の大物なのだ。
ともあれ、番兵に教えてもらった市参事会館に赴いて、ホーエン老人に会いたいとの旨を伝えた。ハーメルンのネオ・シューマッハと名乗ったが、おそらく老人にはそれで通じるだろう。
しかし、市参事会の役人らしき男は、にべもなく言った。
「ホーエン殿は、いません」
確かに、そろそろ晩課の鐘も近いだろう。既に帰宅しているのかも知れない。いや、隠居しているのであれば、市参事会には顔を出していない可能性もある。ならば、自宅はどこかを聞こうとしたが、
「だから、ホーエン殿はいないんです」
困り顔でそう言われ、ネオの脳裏に嫌な考えが浮かんだ。そして、それを裏付ける言葉が、男の口から飛び出した。
「ホーエン殿は、去年の夏にホルティスミンネの生家へと帰られたんです。だから、今はもう、この街にはいないんですよ」
「…………」
頭が真っ白になった。なにかの間違いではないのか?
「…………ミン、ネ?」
かろうじて、そう聞き返した。
「ホルティスミンネです。ご存知ないですか?」
ご存知もなにも、ここにいないのだとしたら、どうすれば良いのだ。いや、ホルティスミンネとかいう街が近いのなら、そこまで行けば良いだけの話だ。
助けを求める心持ちで振り返り、イルゼに知識を求めるが、
「南にある関所の街です。ここからだと、たぶん、三日くらい。……シュタイナウさんがいたら、ですけど……」
シュタイナウの脚で三日。往復で六日。シュタイナウが処刑されるまでの期限と、ちょうど同じ日数である。自分の脚で歩ききれるのか。そんな考えを叩き壊すように、
ごーん……ごーん……
アェルツェンの街に、晩課の鐘が鳴り響いた。今日は、もう終わるのだ。これで、残りは五日だ。シュタイナウの死刑を告げる音としてネオの耳に響いていた。
脚から、かくんと力が抜けた。地面に膝をついてしまった。
「……ネオさん」
なにもかもがぼんやりとして、遠い夢の彼方の話に思えた。思えば、自分はここにたどり着きさえすれば、そして真実を確かな口から聞きさえすれば、シュタイナウを助けられると思っていたのだ。しかし、その唯一の手がかりはネオの手からするりと抜け、更に遠くへと去ってしまった。
自分には、なにもできない。
意気込んで東方植民に向かっても、結局失敗してのこのこと帰ってきてしまった。そして今度はシュタイナウを助けようと歩いたが、それすらも手の届かないところへと消えてしまった。
自分には、なにもできない。無力感に身体がふらつくが、しかし倒れることはなかった。確かな力で肩を支えられていた。
「ネオさんッ!!」
耳元で叫ばれて、我に返った。見上げると、イルゼが両手でネオの肩を掴んで、必死にネオを呼んでいた。
「ネオさん、諦めるんですか? ここまで来て、諦めるんですか?」
「だって。もう、どうやったって間に合わないもの。それに、僕は、もう……」
立て続けの挫折に打ちのめされたネオには、巨大な疲労が襲いかかっていた。普段通りなら気にならない程度の疲労だったが、それが重なって、重なって、いつのまにか山のようにどっしりとのしかかっていた。もう駄目だ、間に合わない。そう思った途端にそれは形を持って、ネバネバしたピッチのようにネオの脚にまとわりつき、鈍らせた。
こうなると、地面についた膝を持ち上げるだけでも、大変な苦労になってしまう。しばらくの間、こうして休んでいたかった。
これから、どうしよう。なにか大きなものを掴もうと手を伸ばしてみたが、すべて夢だと思い知らされた。結局、靴屋は靴屋以外のものにはなれないのだ。……仕方ないから、靴を作ろう。そんな弱気で後ろ向きな考えが湧き上がった。しばらく休んで、身体が動くようになったら、のろのろとハーメルンに帰って、靴屋のツンフトに顔を出して、大きな工房の片隅にでも加えてもらって、もぐもぐと靴を作ろう。
そうすれば、なんとか生きていける。イルゼのことも、なんとか頼み込んでみよう。なにしろ、子供たちの恩人なのだ。必死に頼み込めば、イルゼもお手伝いとして雇ってくれるかも知れない――。卑屈な考えが、頭のなかにどろどろと拡がりつつあった。
「ネオさん」
「……うん」
ゆっくりと呼びかける顔を見上げた。きっと、情けない顔だっただろう。こんな顔を見せるのが申し訳なかったが、しかし、イルゼの顔は優しかった。きちんとネオのほうを向いて、柔らかく微笑んでいた。
「ネオさん? 魔法の言葉って、知ってますか?」
「……っ!?」
突然だった。まさか、イルゼの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。いや、しかしイルゼもまた他ならぬジョングルールの一員だったのだ。
かつてシュタイナウが、まめの痛みに挫けそうだったネオにかけた、魔法の言葉。そして、東方植民に向かう途中で、やはり挫けそうな子供たちにティルがかけた、魔法の言葉。確かに、そうした言葉には理屈を超えた魔法がこもっている。そのとき、その相手にしか効かない魔法の言葉。そして今、イルゼがネオに、魔法をかけようとしているのだ。
しかし、今までに経験したまめの痛みや、子供たちの行進とは違うのだ。シュタイナウを助けられない。これほどネオを打ちのめし、その身体を錆びつかせる重さは、かつて体験したことがなかった。多少の言葉をかけられたとて、この錆びが落ちるとは、到底思えない。
しかし、それをこそ可能にするのが、魔法の言葉なのだ。
「偶然じゃ、ないんです」
「……?」
なんだろう? イルゼはなにを言いはじめたのだろう? 怪訝な顔を向けるネオに、イルゼはまるで記憶を手繰っているように目を閉じて、少しだけ口元を柔らかくして、優しくネオに語りかけていた。
「わたしも、はっきりとわかってる訳じゃないんです。でも、なんとなくわかるんです。きっと、偶然じゃないんです」
「……なんの、話?」
「全部、です」
「ぜんぶ?」
まったくわからない。さっぱりわからない。なにが偶然じゃないというのだろう。確かに、ネオがミンデンに向かったのも、東方植民に向かったのも、エーリッヒが裏で糸を引いていた。確かにそれらのすべては偶然ではなく、意図されていたものだった。しかし、それを改めて言って、なんだというのだろう?
「シュタイナウさんは、よく嘘をつく人ですけど……。でも、意味のない嘘なんて、ひとつもつかないんです。『街で最初に会うものには礼を尽くすってのがうちの流儀だ』なんて、嘘です。ジョングルールには、そんな決まりはひとつもありませんでした。私も、あのときはじめて聞いたんですよ?」
一瞬、なにを言われているのかわからなくて、記憶をたぐった。確かに、そんなことをシュタイナウに言われた気がする。それは、いつだったろうか。
――ひとつ、自己紹介といくか。街で最初に会うものには礼を尽くすってのがうちの流儀なんでな。……ごほん。俺たちゃしがない放浪楽師、その名もレ・ジョングルールだ――
思い出した。それは、はじめてネオにあったときの言葉だった。突然取り囲まれて怪しんでいるネオに自己紹介をしたときの言葉だ。それが、嘘だった? つまり、シュタイナウは「街で最初に出会うものには礼を尽くす」ような決まりを身内で定めているわけではなかった? いや、それが嘘だったとして、いったいなんだというのだ? それのなにが魔法の言葉だというのだ?
「わかりませんか?」
イルゼは落ち着き払っていた。まるで、自分の言葉に魔法の力が宿っていることを微塵も疑っていない様子で、ネオに説いていた。
「シュタイナウさんがついたその嘘には、必ずなにかの意味があるんですよ? 必要がないのなら、決してあんな嘘をついたりしません。シュタイナウさんは明らかに……ネオさん、貴方と関わりを持とうとして、貴方とつながりを作ろうとして、あの嘘をついたんです」
「でも、それは、靴が必要だったからじゃ……。アマラさんも世話になるかもって言ってたし、ティルさんも靴を買ってこいって言われたって……」
「靴が必要なら、靴屋さんに行けばいいだけです」
「……っ」
あまりにも当たり前すぎて、返す言葉もない。それこそ橋の上で番兵に睨まれてまで、靴屋の徒弟と無理やり懇意になる理由など、欠片もないのだ。
「初対面の人に、それも、ネオさんみたいな若い人に、あんなふうに話しかけるシュタイナウさんは、はじめて見ました。……私が言うのもなんですけど、人相も、口も悪い人ですよ? すごく不器用で……。そんな人が、苦しい嘘をついてまで、無理にでもネオさんと関わろうとしたんです」
では、いったいなんだというのだ。シュタイナウは、どうしてあの橋の上であんな嘘をついてまでネオに話しかけたというのか。
「私には、なにも教えてくれませんでしたが、ずっと、ずっと一緒にいたんです。わかっちゃいます。私はあのとき、ネオさんに話しかけるシュタイナウさんを見て、こう思ってたんですよ? ……ああ、ハーメルンに来たのは、この靴屋さんに会うためだったんだな……って」
「…………っ!?」
耳を疑った。なにを言われているのか、イルゼがなにを言っているのか、咄嗟にわからなかった。シュタイナウは、ネオに会うために、わざわざハーメルンの街までやってきた? 今、イルゼはこういったのか?
「ま、」
まさか。まさか。あまりにもあり得なさすぎて、その言葉すらも口から出てこない。それほどまでに、現実感がなかった。しかし、イルゼは更にネオの想像を超えた言葉を口にした。
「あの神父さまも……ずっと昔から、ネオさんを植民請負人にしようって、考えてたんでしょう? それを聞いたとき、私は思いました。……ああ、きっと、神父さまも同じなんだな……って」
「同じって……?」
「シュタイナウさんと、同じなんです。神父さまにとっても、ネオさんじゃないと駄目だったんです。……ただ条件が揃ってる、都合のいい靴屋さんってだけじゃなくて……きっと、他の人ではいけない、ネオさんでなければならない、なにかの理由があったんです。だって、植民請負人が必要ってだけなら……ネオさんよりも、もっと都合の良い人は、いくらでもいたはずですから」
「……っ!」
言われてみれば……確かにその通りだ。夜の世界を怖れない、旅の経験がある、読み書きができる。その条件がピタリと一致していたから、自分が植民請負人に選ばれた。そう思っていた。しかし、何年も前から計画していたとなると、話は別だ。なぜなら、ネオがそんなふうに成長する保証など、欠片もなかったからだ。
ただ植民請負人に仕立てあげるだけなら、わざわざ靴屋を一軒つぶしてまで、靴屋の徒弟を選ぶ必要なんて、どこにもない。何年も前から計画していたというなら、なおさらだ。それこそ、お金持ちの次男でも三男でも、時間をかけてきちんと育て上げたほうが、ずっと確実だろう。
「ネオさん。……貴方は、シュタイナウさんと神父さまの計画に、巻き込まれた……そう思ってますよね? でも、私は、そうは思いません。シュタイナウさんも、神父さまも……、ネオさん、貴方を中心に動いていたと思うんです」
「そんな、こと……。いったい、どうして? 僕は、ただの靴屋なのに」
あり得ない。いくらなんでも、飛躍しすぎている。だって自分は、どこにでもいる、ただの靴屋の徒弟だったのだから。それ以上でも、それ以下でもない。強いて人と違う点を取り上げるとするならば、読み書きができるという程度だ。水車小屋の前で聖書を読んでいただけの、ただの靴屋の徒弟だったのだ。
現実の世界にすがりつこうとばかりに、必死にそう思うネオだが、まさしくそう思っているところに、次のイルゼの言葉がするりと滑り込んだ。それは、本当に、魔法だった。
「――――靴屋さんは、聖書なんて読みません」
「ッッ!!」
魔法の言葉どころか、それは落雷だった。ネオの頭を真っ白にするほど、なにも考えられなくするほど、今までの自分を一瞬にして木っ端微塵に消し飛ばすほど、巨大な衝撃をともなう魔法だった。
「物心ついたときから、ずっと旅をしてきました。……たくさんの街を見て、いろんな人に会いました。……でも、聖書を読む靴屋さんなんて、見たことも、聞いたこともありません。最初に会ったときから、不思議に思ってました。ネオさん、貴方はあまり気にしてないみたいですけど……。貴方は、どこからどう見ても、ただの靴屋さんなんかじゃ、ないんですよ?」




