表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

二口女とヒトデナシ

作者: 緋薇鵺 夢月

嗚呼、何故か分からないが、彼女に喰べられる私が見える。彼女の口からはみ出る片腕と、片足が見えている。

嗚呼、素晴らしい。素晴らしいことだ。こんな素晴らしいことがあるだろうか。こんな素晴らしい日が来ようなど、思いもしなかった。

彼女に喰べられひとつとなる。こんな素晴らしいことはない。

私の愛おしい彼女は二口女と言う妖怪だった。後頭部にもうひとつの口がある、女の妖怪。

二口女の唯一の愛情表現は、愛した男を喰べてしまうこと。二口女の本能。

愛してしまえば、喰べずにはいられない。

嗚呼、なんと哀しく狂おしいほど愛おしい妖怪だろう。

だから彼女は自分の正体を私に明かし、別れてくれと懇願した。喰べてしまうのは逃れられぬ哀しい性。貴方を愛しているからこそ、本能に負ける前に逃げてくれと。

私は彼女の思いを裏切り、言った。

私を喰べてくれと。私は喰べられて君の中で生きていたい。君の中で、永遠に一緒にいようと。

そして、その夜、私は彼女を抱いた。幾度も抱いた身体を狂おしいほど激しく。狂おしいこの思いをぶつけるように。

涙を流しながら彼女は、愛してると囁いた。

私は口付けで応えた。


嗚呼、彼女に取り込まれていくのを感じる。彼女の命の一部になっていくのを感じる。

嗚呼、私は彼女と真に一心同体となるのだ。

永遠に、誰にも邪魔されることはない。

彼女の優しい声が聴こえる。


貴方を感じるわ。永遠に私のもの。


嗚呼、とても素晴らしい気分だよ。


貴方に言ってないことがあるの。私ね、子供が出来たの。貴方の子供。それでね、お願いがあるの。私はね、貴方を産みたいの。


どういうことだい?


貴方の魂を子供の身体に移して、貴方を産みたいの。産まれれば貴方は二口男。同じ妖怪なら永遠に一緒にいられるわ。素敵でしょう?


ああ、とても素晴らしいよ。


嗚呼、本当になんと素晴らしい日なのだろう!




二口女とヒトデナシ-了-

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ