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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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「つかれてる」と彼氏に拒まれる金曜の夜

作者: 唯崎りいち
掲載日:2026/05/15

 大好き天宮さんと付き合う事になったのは三ヶ月前から。


 ここ最近は素っ気なくて、「つかれてる」と拒否される。


 ずっと変だと思っていたけど……。


 ◆◇◆


 ピンクの苺の飲み物を買おうと手を伸ばすけど、買えなかった。


 最後の1本は、私と同じ境遇の女性が買って行った。


 私は、隣にあった紫のブドウの飲み物を手に持っていた。


 私こと、日比野まどか、20歳。


 工場の事務所で働いている。


 郊外の冴えない職場だけど、一人だけいい男がいる。


 天宮貴之、25歳。


 工場の現場の管理部門で働いている。


 見目も麗しく、有名大学出身で、有名一族の一員であると言う。


 なぜ、こんな冴えない職場に居るのだろう?


 そして、なぜ私と付き合っているのだろう?


 謎がつきない男だ。


 現場に向かう通路で彼が私に気づく。


 私は、笑顔を向ける。


 プイッと素っ気なく無視される。


 職場では話しかけないルールだ。


 それにしても素っ気なさすぎる。


 ……小さく右手を振ったのがいけなかったのか?

 

 素っ気なくて、付き合ってるのが本当かどうか分からなくなる。


 でも、今日は金曜日だから、彼が私の家にくる日だ。


 日頃の寂しさを埋めてちゃんと、付き合ってる事を確かめる!




 私の部屋で料理を作って待つ。


 彼は残業で遅い日も多いけど、金曜日だけはここ三ヶ月、ずっと早い。


 でも、今日は——。


 時計の針が12時で重なった。


「もう終わりなんだ……」

『絶対に諦めない!』


 深夜に扉がノックされる。


 私は笑顔で彼を迎え入れる。


 抱きつこうとして、


「つかれてる」


 冷たく言われる。


 笑おうとして、涙が溢れてた。


 泣くほど悲しんでいるなら、私は一人ベッドで眠りにつくはず。


 私は、涙を流していたけど、今はスースーと寝息が聞こえる。


 ——今日も失敗だった。


 たった一日、完全に宿主と同じ行動を取れたら、この身体は私のものになるのに!


 私は断罪されて死んだ悪役令嬢。


 この世界に魂だけ転移した時に、このルールを聞く。


 今日で五日目だけど、合わなかったわね……。


 でも、この子の行動パターンは把握しつつある。


 あと数日もすれば——。


「まどかは、寝たか……」


 ベッドに近づいてくる。


 せっかくこんないい男が彼氏なんだから、この身体を逃しはしない!


 天宮貴之がベッドにいったん腰掛けてから、身体をまどかに向けて、両腕をまどかの顔の脇に立てて顔を覗き込む。


 恋人に向ける甘い笑顔——その後に、私を見た。


「で、お前は誰だ?」


 !?


 私が見えてる!?


「まあいい。俺のまどかにとりつく奴は、誰でも消えて貰う」


 貴之が何かつぶやくと私の実態のない身体が締め付けられた。


『や……やめ……ろ!』


 私は声を搾り出した。


 けれど、貴之は止まらない。


 私の存在は消滅した——。


◆◇◆


 温かいものを唇に感じて目が覚めた。


 天宮さんが私にキスしてた。


「な、なん……!?」


 !?


「起きないからだ」


 起きないからキスって!?


「……つかれてるんでしょう?」


「お前がな」


 ?


「意味がわかりません」


 けれど、天宮さんがキスしてくれたからどうでもいいや。


 強く抱きしめられてる、身体がなんだか軽い。


「天宮さん、寂しかったです……」


「俺もだ……」


 布団をかぶって寝ていたのに身体が冷えてる。


 天宮さんの体温が気持ちいい……。


 スースー。


「寝るな、まどか。俺がいるのに、つかれて寝るなんて!」


「まあ、明日は休みか。仕方ない、今夜は、ゆっくり休め」


「明日は、つかれてるなんて言わせないから——」






作者が設定した、作中の行動のズレは5つあります。

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