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08.不確かな先行きだけれども。白銀の光が未来を拓く。

08.不確かな先行きだけれども。白銀の光が未来を拓く。


 ブラッディロード達と戦った後、フランとセイアのもとにブランシュからの通信が届く。

 やっとの通信での会話にセイアとフランに喜びの感情が湧いた。

〈───先程の対応、ありがとう。二人のおかげで、かなり町の人から話が聞けたよ〉

 ブランシュの感謝の言葉と、状況が少しでも掴めたことに、セイアとフランは安堵の表情を浮かべる。一歩、前進したような気がした。

「どうだったの?」

 フランがブランシュに訊く。この町で起こっていること、ブラッディロード達の目的。

 セイアもフランも気になっている。

〈────先ず、人質が数百人、どこかに監禁されている〉

 通信の向こうで聞こえたブランシュの悪い報せ。セイアとフランは少し、驚くが、すぐに落ち着きを取り戻す。平静心を保つこと、戦場においては必要な技術の一つだ

 けれど、人質がいる。それはとても悪い報せだ。

 救出任務は、ただ戦って勝利を得るよりも難しい。

「…………人質、とは……、穏やかな言葉ではありませんね。ブランシュ」

 険しい表情を浮かべたセイアが、通信の向こうにいるであろうブランシュに向けて言った。

〈……町長さんが言うには、連中の最終目標は西大陸の中央政府に喰らいつくこと。この町は足掛かりの一つであって、人質の若者達は奴らの餌のようだ。どんな扱いを受けてるかまでは分からないが、想像はつく〉

 ブランシュの声音は落ち着いてはいるが、険しい状態であることは話からも伝わってくる。セイアとフランはこの現状に厳しい面持ちとなる。

 西大陸の中央政府に喰らいつく前準備にされた、この町を救うにはブラッディロードを倒し、人質を救出しなければいけない。人手の入りそうな事態になってきたと通信をしている三人が思った。

「…………分かった。ブランシュ、私とセイアが囮になって連中を引きつける役をするわ」

 どの道、暴れた以上は連中はセイアとフランを警戒し、戦力を自分達に向けてくるだろう。フランはそう考え、ブランシュに言った。

 ブルーシアに援護も頼んでいる。

 フランはそれをブランシュに伝えることにした。

「ブランシュ、ブルーシアに援護を頼んだわ。私達なら、大丈夫だから」

 勿論、救出に向かうブランシュにだって危険はある。敵が人質のいる場所に警護を置かないような間抜けとは三人とも思っていない。

 だが、ブランシュであれば危険も打破出来るとフランもセイアも信じている。ブランシュの強さは二人もよく知っているのだ。

 通信の向こうにいるブランシュの決断は……。

〈承知した。私が救出に向かう。二人とも、気をつけてくれ。ブルーシアが来るなら、大丈夫だと思っているよ〉

「うん。ブランシュも気をつけて」

 方針は決まった。ブランシュが人質を救出し、セイアとフランは現在いる場所で敵戦力を迎え撃つ。

 フランは拳を強く握り締め、戦うために己を奮い立たせる。厳しい戦いになろうとも、この町を救う。

〈フラン、セイア、もし親玉と遭遇しても無理しないように。ブルーシアの判断に任せてくれ〉

 冷静なブランシュの言葉にフランとセイアは、この町を支配しているブラッディロード達にリーダーがいる可能性に気づく。

 どういう存在かは分からないがリーダーがいるのであれば、そのリーダーを叩く必要がある。

 ブラッディロードを束ねている者……、相当な実力者である筈。ブランシュはセイアとフランを心配し、そう言ってきたのだろう。

 フランも頷く。

「……うん。無理はしないよ」

 その言葉を聞いたブランシュは通信の向こうで安堵した様子を感じさせた。

〈また、連絡する。二人とも、よろしく頼んだ〉

「うん!」

「任せて下さい」

 ブランシュが二人に向けて言った頼む、という言葉にフランは頷き、返事をする。セイアは微笑み、ブランシュに返した。

 通信は切られ、フランとセイアはその場に留まり、敵を迎え撃つこととなる。

「気を引き締めていこう、セイア」

「はい、フラン」


 ⚫︎


 セイアとフランの二人に連絡を取ったブランシュは通信を切った後、ミシェルに声をかけた。

「待たせてごめん、ミシェルくん」

 ブランシュと少し離れた場所にプテと並んで立っていたミシェルは綺麗な髪を揺らし、ブランシュの方へと向く。じっ、とブランシュは無言で見つめたミシェルは数十秒ほど後に口を開く。

「……大丈夫だ」

 変わらず落ち着いており、無表情のミシェルはブランシュに答える。

 ミシェルの返答を聞いたブランシュは笑みを浮かべ、プテの方を見た。プテはすぐにブランシュの視線に気がつき、ニコッと笑顔を浮かべる。

「プテの出番?!」

「…………ああ、プテ、頼むよ」

「任せて! ブランシュ!」

 目が合っただけでブランシュの言いたいことを察したプテは嬉しそうにふよふよと浮きながら、路を進む。

 ブランシュとミシェル、プテは住民の避難シェルターを出て、今は外にいる。空は暗く、まだまだ夜であり、町の街灯が路を照らしている状態だ。ライフラインは生きているのだが、やはり住民の姿は無い。

 ブラッディロードの餌とされ人質に取られた者や避難している者。ライフラインが通っているゴーストタウンのような状態になってしまった、この町を元に戻すべくブランシュ達は人質を救出しなければいけない。

 そして、ブラッディロード達を叩かねばならない。

「こっち! ブランシュ、プテが先導するね!」

「──ああ、ありがとう。プテ」

 町長から借りた、この町のマップデータをプテは画面に表示し、ブランシュとミシェルの先頭を行く。

 ブランシュはミシェルに顔を向ける。

「行こう、ミシェルくん」

「…………ああ」

 プテを先頭に二人は路を歩く。

 人の気配が薄い町の中、そして不気味な空気に包まれた路を照らす街灯。プテの先導に従って、ブランシュはミシェルを連れ歩く。

 …………アルルに来てもらうべきだったかな。

 ブランシュは路を進みながら思った。プテと一緒に行動するつもりで予定を立てていた。ミシェルとの出会いは予想外のものであり、いざブラッディロードとの戦いでミシェルを守ると考える。そうなると、妹に来てもらっていたらブランシュは敵に集中できるのだ。

 今からでも通信を入れて来てもらうべきかとブランシュは考えたが、妹の手を煩わせて怒られるのもな……、と迷う。

 妹のアルルは心強いが、姉としてブランシュは頭が上がったことはない。

「ブランシュ、セフィーに通信する?」

 考えていることを察したのか先頭で進んでいるプテがブランシュに声をかけてきた。

 ブランシュは首を横に振る。

「いや、いい……。アルルに怒られたくない」

「え────、言えば来てくれるよ〜? アルルもセフィーも優しいのに〜」

「…………いざとなれば、察して来てくれるとは思うけど……」

「それもそうだねえ〜」

 呑気な口調のプテはブランシュと喋りながらも画面を見つつ、路を進む。

 そんなプテを凝視しているミシェルはプテの未知な生物感に疑問が多いが、口にすることはなかった。人の背丈はある大きくて白い体、触ると魅惑の感触がし、自分で考えて行動ができる謎の生物。プテという存在は一体、何者なのかという疑問がミシェルの心にあるのだが、訊いてブランシュとプテは答えてくれるのだろうか。

 …………はぐらかされそうな気がする。

 それにブランシュ本人も謎が多い。政府に見捨てられた町を救いに訪れ、ブラッディロードと戦うつもりでいるのだ。

 恐らく、ミシェルがいなければプテと行動をしていたのだろう。どことなく、ブラッディロード相手と分かっていても余裕めいた態度を見せている。

「…………」

 路を進みながら、ミシェルは何も言えずにいた。ブランシュに話しかけることもできない。

 何を話せばいいのか分からない。

「…………マップデータは把握しているし、移動魔法を使えばすぐなのだけど。ごめんね、ミシェルくん」

「────いや、大丈夫だ。移動魔法を使えば、勘づかれるのだろう?」

「…………ああ。一箇所だけじゃないからね。先ずは一つ目のポイントに向かって、……それから色々と考えるかな」

 町長達に付けてもらった予想されるポイントは、あくまで推測であり外れている可能性もある。そうなった場合は場合で、手もあるが、なるべくなら隠密で行動したい。

 一つ目のポイントへ行き、情報があれば御の字と思った方が良いだろう。

 ブランシュは先ずは行動だと、プテの後をミシェルと共についていく。

 その姿を見ている者がいた。


「…………」

 フードを目深に被り、外套に身を包んだ者が建物の陰からブランシュ達の姿を見つめ、進む路を足音たてずに尾行している。

 勿論、ブランシュは背後の気配を察知しているが、自分達に敵意が無さそうなので放っておいた。


 ●


 ────歩くこと、数十分。

 一番近いポイントは町の病院である。町の病院、と言えば小さなこじんまりとした病院なのだがスペースタウンは住民も多い、大きな町だ。

 ブランシュとミシェル、プテの前にある病院と思われる建造物は七階建て。プテは口を開け、病院を見上げる。

「お……、おおきい────」

 プテの感想は実に素直なものである。

「…………ふむ、病院か。確かに、この建造物なら大人数の収容は可能だが、一ヶ所での収容には不向きかもだね」

 見上げる程に大きな建造物を前に、ブランシュは考える仕草をする。金色の瞳を細め、ブランシュは病院の入り口と思わしき、透明色の大きなドアを注視する。

 赤く、細い線がドアに張り巡らされているのが見え、ブランシュは口角を上げる。

「…………とはいえ、結界らしきものが見えるところ、どうやらここは当たりのようだ」

「────見えるのか? 俺には、何も見えないが……」

「…………こう見えて、年季の入った魔法使いだからね……。見るのも、壊すのも、得意だよ」

 ブランシュの発言にミシェルは首を傾げる。見るのは良いが、壊してしまっていのか。

 無理に破壊すれば、敵に気づかれ隠密行動の意味が失われてしまう。

 ミシェルの危惧を察したのか、ブランシュは微笑みを消さずに答えを出す。

「見るのも、壊すのも、確かに得意だが、誤魔化すのもお手のものだよ。こういう、結界はやり方次第では書き換えも可能なんだよ」

「…………書き換えもできるのか?」

「勿論」

 その答えにはミシェルも流石に驚く。結界の書き換えとなると、それは壊すことよりも時として難しく、技術が必要なものだ。

 ブランシュは自分の前にふわふわ浮いているプテに声をかけた。

「プテ、いつものように頼むよ」

「は────い」

 プテはブランシュの頼みを快諾し、手を挙げてニコニコ笑顔を浮かべる。

 ブランシュは真っ直ぐに歩き、病院の入り口へ足を進める。結界の糸が反応するかしないか、その場まで行き、立ち止まる。入り口に向かい、腕を突き出す。

 ふわり、と微かなブランシュの魔力が外へと放出され、ミシェルにもブランシュの魔力が伝わってきた。白銀の光、優しく、暖かい魔力だとミシェルは感じた。

 ────ブランシュ? 君は────。

 何者なんだ。ミシェルは疑問を口には出せずにいるが、ブランシュの背中を見つめる。

 ────?

 ブランシュの姿がミシェルの視界には揺らいで見えた。揺らぎの一瞬、純白の衣装を身に纏った女性がブランシュと重なる。長い銀色の髪を靡かせ、横顔だけがミシェルの眼に映った。それは本当に一瞬。気がつけば、ブランシュはいつものブランシュの姿であった。

 …………今のは?

 ミシェルは瞬きを繰り返す。今、見えたものは何なのか、自分でも分からなかった。

 当然、ミシェルの疑問を解決できる答えなど見つかるわけもない。

 腕を突き出し、入り口に向かって手をかざすブランシュは両の瞼を下ろし、結界の書き換えを続ける。

 画面を起動したプテは丸い、指のない手で何やら操作をし画面と睨めっこしていた。

「お────、順調! じゅんちょー! 流石、ブランシュ〜!」

 表示された文字の羅列を見て、プテは上機嫌にブランシュを褒める。

 ブランシュにもプテの声は届いていたらしく、苦笑を浮かべ書き換えを続行。そこから、数十分と経たずに結界はブランシュによって全てを書き換えられた。

 ドクン、と脈打つような音が一度だけした後、ブランシュはミシェルとプテの方へ振り返る。

「書き換えは終わったよ。これで、結界は私達には反応しない」

 書き換えを遂げてしまったブランシュにミシェルは目を大きく開いた。

 本当に、もしかしたら……。ミシェルの探しているものはブランシュなのかも知れないのだと、秘めた想いをミシェルは感じた。

 ブラッディロードの結界を書き換えられる魔法使いは世界を探してもそうはいない筈だ。

「お疲れ様〜、ブランシュ〜」

「プテもお疲れ様。ありがとう。────さあ、ミシェルくん、進もうか」

 呑気なプテと互いに労いつつも、ブランシュはミシェルに進もうと告げる。

 ミシェルは秘めた想いを拳に握り締め、しっかりと頷き、ブランシュと共に病院の内部を目指す。


 ⚫︎


 ────ソルローアルの町にて。

 ブルーシアとロシェがフランの要請を受け、問題の町へと移動魔法を使ったのを感じ取ったアルルは町を仕切っているルーニオのもとを訪れた。

 ルーニオがいる建物にはフレーチェもいる。アルルはフレーチェに聞きたいことがあり、ルーニオの住む邸の一部を訪ねた。

「…………アルル?」

 ルーニオは予想外だったのか驚いていたが、フレーチェは驚かず顔色を変えずにアルルの訪問を出迎えた。

 アルルは床を歩き、真っ直ぐにフレーチェの顔を見上げる。

「お姉ちゃん本人はあんまり心配していないのだけど、状況が知りたくてね。フレーチェ、読めた部分を教えて」

「…………。…………ちょっと、待ってて」

 アルルの頼みにフレーチェは応えてくれるらしい。

 椅子に腰をかけている長い漆黒の髪の女性、セレエルがアルルに視線をやり訊いてきた。

「アルルちゃん、何か感じたの?」

「セフィーがプテからの信号を受け取ったみたい。私も、どことなく不安で……」

「兄様……」

 アルルの説明を受け、セレエルは不安そうな表情をし、ルーニオに顔を向けた。

 セレエルの兄であり、この町をまとめるルーニオは険しい表情を浮かべ、瞼を閉じる。

「…………何か、問題があるのか。フレーチェ、読めた部分を私にも共有してくれ」

「────はい、ルーニオ様」

 フレーチェは頷き、両の瞼を下ろして何かを感じ取る。フレーチェの内にある魔力が、白銀と黄金の光となって波のように、外へと放たれる。

 …………瞬く、星の光。軌道と道を結び、世界の道筋を────。

 紡がれた言葉を読み取って、フレーチェは瞼を開ける。その煌めく金色の瞳に映ったのは……。

「簡易なものですが、読みました。……どうやら、敵と思われる者達は人質をとっているようです」

 フレーチェの口から紡がれた言葉にルーニオは眉を寄せ、厳しい顔つきとなる。

 セレエルは眉を下げ、兄の答えを待つ。アルルは予想の範囲内に入っていたので、驚きはしない。

 あの姉が時間をかけて事を進めている状況、と考えると何らかの問題があったのだろう。アルルはルーニオの方へ身体を向けた。

「ルーニオ様、私は姉の手助けをしに行きます。ソルローアルの町はセレエルがいれば、十分でしょう」

 アルルの出した決断を聞き、ルーニオは大きなため息を吐く。

 数秒間、ルーニオは考え、答えをアルルに言う。

「ノエルとシュヴェートも連れて行くように。人質の負傷も考えられる。この町はセレエルとシュテルンがいれば、平気だろう」

「承知しました。すぐに二人に連絡を入れ、発ちます」

 アルルはルーニオに向かって深く頭を下げた。指示が決まれば、すぐに行動するのがアルルだ。

 早々にその部屋から出て行った。

 扉が閉まる音がした後、ルーニオは椅子に腰を下ろす。

「…………人質、か」

 ただの殲滅戦なら、ブランシュ達も手をかける必要がない。だが、人質がいるとなれば、時間はかかるだろう。

 セレエルは友であるブランシュの心配をしているのか不安そうな表情をし、フレーチェは複雑そうな表情を浮かべ窓の外を見ている。

「ブランシュ達は強いから大丈夫だと信じていますが、人質の安否は不安ですね……」

 恐らく、今すぐにでも兄の許可があれば、ブランシュのもとへと駆けつけたいセレエルが口にする。セレエルの気持ちに気づいていても、彼女を自由にしてやれないルーニオは目を伏せ、妹へ申し訳ないと思う。

 …………俺に、もっと戦う力があれば…………。

 もっと、妹のやりたいことをやらせることが出来ているというのに……。ルーニオは心の奥底でずっと思ってきた。

 セレエルの誰かを助けたい気持ちと優しい正義を縛り付けてしまっていること。罪悪感が胸の中にある。

「────大丈夫ですよ、御二方。ブランシュは白月の魔女を受け継ぐ者です。それに、彼女には隊長から受け取った大事な気持ちがありますから」

 セレエルとルーニオの気持ちを察したのか、重い空気を変えるようにフレーチェは笑顔を二人に向ける。

 …………当代の白月の魔女はきっと、諦めない。

 どれほど、涙を流そうとも、心に重いものを背負っても。フレーチェの信じる、当代の白月の魔女は、……きっと、諦めない。

「今は帰りを待ちましょう。打てる策を打って、補佐をするのが我々の役目です」

 フレーチェの言葉と笑顔に、セレエルもルーニオも元気付けられたのか微笑みを浮かべた。


 ⚫︎


 ソルローアルの町、外の道をアルルは歩く。

「セフィー」

 アルルが呼ぶと、彼女の背丈を超すプテとよく似ている生物が現れた。セフィーと呼ばれた不思議な存在はプテと同じように、魅惑の感触の白い身体を持っている。

 プテと違うのは帽子がプテよりも可愛らしく、ワンポイントを付けているぐらいか。クリクリの大きな目もプテとお揃いの金色である。

「はいです、アルル。移動魔法の準備ですね! お任せ下さいです!」

 しっかりと、元気よくアルルに返したセフィーはふわふわと浮きながら、アルルの先を進む。

「敵に悟られないギリギリまで近づいた座標に行くわよ。私達の目標はお姉ちゃんとの合流」

「はいです。了解しましたですよ」

 町の中には転移魔法用の広場がある。アルルはそこをノエルとシュヴェートとの合流場所にした。

 二人は準備が整い次第、来てくれる。それまでに移動魔法の準備を済ませよう、とアルルはセフィーと共に移動魔法の発動準備に取り掛かる。

 見た目は幼く、華奢で可憐なアルル。彼女は姉ブランシュの補助をするためにブラッディロードに支配された町を目指す。

「アルルちゃ────ん!」

 移動魔法の準備をしているアルルのもとへ男女が駆けてきた。

 ブルーシアの妹ノエルと、彼女の護衛騎士であるシュヴェートだ。ノエルは大振りに手を振って、アルルのすぐ近くまで駆けてきた。

 シュヴェートもノエルの後に続いて来た。

 三人とセフィーが揃い、移動魔法も発動準備が完了する。

「来て早々だけど、飛ぶわよ! 二人とも、舌を噛まないようにね!」

 アルルは声を上げる。それを聞いたノエルは驚き、隣に立っているシュヴェートの腕にしがみつく。

 シュヴェートはかけている眼鏡を片手で押さえ、眉を寄せた。

「行きますです!」

 セフィーとアルルを中心に白銀の紋章が広がり、大きな光が一瞬にして三人とセフィーを包み込む。

 その場にいた三人とセフィーの姿は消え、辺りは再び夜の静寂を取り戻す。


 ────こうして、ブラッディロードに支配された町スペースタウンを救うべく、戦力が町へ集うのだ。

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