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05.嘆きを感じる者達

05.嘆きを感じる者達

 自分の視界に飛び込んできた第一印象は綺麗な髪だった。長く、艶やかで柔らかそう。薄めのピンク色で綺麗な髪が動作と共にふわりと揺れる。

 そして、惹きつけられる真っ赤な瞳。

 …………この人は…………?

 ブランシュは金色の両目を繰り返し瞬きする。色々と驚いてしまい、十数回と両目を閉じては開けてを繰り返してしまう。

 出逢ったその瞬間からお互いに見つめ合う。けれど、目の前の人物の人形めいた……感情を見せない表情にブランシュは戸惑う。

 それに────。

「……君は、この町の人かい?」

 ブランシュは目の前に立つ、彼なのか彼女なのか容姿では判断が出来ない人物に問いかける。スペースタウン、という名前のこの町は現在、ブラッディロードと呼ばれる強い力を持った種族に支配されている可能性がある。ブランシュはそれを確かめに高い壁を乗り越えて、町の中へと入ったのだ。

 町の人なら、話が聞きたいとブランシュは目の前の人物に話しかけたのだが、言葉を真似る鳥のような返答がされた。

「君がこの町の人じゃないのか?」

 表情は無だが、首を傾げて言われた。

「え…………」

「え…………?」

 ブランシュも目の前の人物もお互いに戸惑いの声を発する。目の前の人物と出逢った瞬間にブランシュの背後に隠れたプテが、ブランシュの肩越しにピンク色の髪の人物を見て頬を僅かに朱に染める。

 プテの顔は知ったことではないブランシュは数秒間、目の前の人物とお互いに見つめ合った後に自分の額に手を当てて考える。

 …………先ずは状況把握だ。

 ブランシュは気を取り直して目の前の人物に提案をする。

「どこかに隠れてお互いの話をしないかい? 最低限の話でいいよ。名前と、この町に来た目的を……。言いたくないことはお互いに非干渉するということで」

「…………」

 ブランシュの提案に目の前の人物は数秒間ほど、考えているのか顔を下に向けて無言だった。触れられたくない部分があることはブランシュは最初から気づいていたので、この提案にしたのだが……。

 …………飲めないなら、それまでだ。

 どう運命が転ぶかは分からないがブランシュはそれでも構わないと判断した。

 例えば、敵対する関係になったとしても……。

「…………分かった」

 ブランシュの思惑を余所に目の前の人物は頷く。答えにブランシュは安堵した気持ちを感じ、隠れられそうな場所を探して辺りを見回す。

「プテ、探れそう?」

「ほいほ──い。辺りを探ってみるね〜」

 安全そうな場所をプテに探ってもらおうと声をかけると、プテからは呑気な返事がされた。

 プテは画面を起動する。四角い画面がプテの前に現れて、プテは周囲の建物の細かな配置や気配を探り出す。

「…………」

 ブランシュと出逢った人物はプテと画面を興味深そうに凝視している。プテのよく分からない生物っぷりは確かに気になるだろう。あとは、画面のことなども。

 プテは視線に気づいているのか、ほんのり頬を朱に染めて照れながらもブランシュに頼まれたことの作業を続ける。

「…………まあ、確かにプテはよく分からない生き物だもんね」

「聞こえてるよ! ブランシュ!」

 小さく呟いたブランシュの言葉をしっかり拾っていたプテが怒る。

「…………そもそもプテは────、まあいいか〜。あ、出たよ! ブランシュ」

 プテは明るい笑顔を浮かべてブランシュに報告してくる。プテが開いていた画面を、ブランシュは横から覗き見る。

 画面には生命反応もちらほら映っており、これは町の人達だろうと予想し、ブランシュは建物の中で生命反応が無い場所を選ぶ。出来れば、窓が複数あって扉もある建物が望ましい。

「────ここにしようか」

 生命反応がある場所や住宅はなるべく避け、オフィス系の建物をブランシュは選ぶ。画面に映し出されている建物の立体画像。

 技術の進歩はこういう時に便利だ。

「ついてきてもらっていいかい?」

 隠れる建物を選んだブランシュが声をかけると、ピンク色の髪の謎の人物は無表情のまま頷く。


 ────高さ的にはまずまずのオフィス系の建物だ。おそらくは事務所が複数入り、三階建てぐらいの建物だ。

 エントランスに入れば、受付も無人であり照明のほとんどが落とされている。警備員などを置いている様子もない。玄関扉も簡単に開くなど不用心で気になるところはあるがブランシュは休憩することを選ぶ。

 事務所などを荒らす気も、そこまで入り込んで休憩するわけではない。奥に入れば入るほど逃げる時に面倒なこととなる事もある。

 ブランシュは一先ず、とエントランスに置かれた椅子に腰を下ろす。まだ名前が訊けていない謎の人物に違う椅子へ座るように手で促す。

 二人とプテがそれぞれ、椅子に座り落ち着いた数分後、ブランシュは名乗ることにした。

「────私はブランシュ。この町とは違う、別の村からここに来たんだ。ここの町が何やら不穏な状況と聞いて、魔法使いとして何かこの町の役に立てないかと思ってね。今は町の状況を確認したいんだ」

 ────嘘は言っていない。

 一応、魔法使いではあることだし。この町の状況が知りたいのも事実だ。

 ブランシュは自分の名前と、この町に来た目的を明かした。次は彼の番だ。

「俺はミシェルという。ただの旅人で、ここに来たのは……偶然だ。旅をしている途中で休憩のためにこの町へ寄らせてもらったのだが、町は不穏な気配に包まれている感じがする……」

 ピンク色の長い髪の人物はミシェル、と名乗った。

 ブランシュは彼の話を聞いて、引っかかる部分があるが追及する気はない。今はそれで十分だと納得し、ブランシュはミシェルの表情を見つめる。

 落ち着いているようで、感情が見えないだけの無表情。あまり、自分を出す……ということが得意ではないのだろう。

 ブランシュは数分程、黙って身体を休める。壁登りをしたので体力回復をしようとブランシュは思うが、不穏な気配はずっと付き纏ってきている。

 プテは疲れる、というのを滅多に感じない身体なので楽しげにエントランスを探検。受付のカウンターテーブルを小さく叩いたりと好奇心のままに行動していた。

 ミシェルはブランシュとコーヒーテーブルを挟んだ向かい合わせの椅子に座っており、プテに視線を向けている。

「ミシェルくん、君はこれからどうするんだい? 今の状況だと、この町から抜けるのは少し難しそうだ」

「…………俺が町に入った時は壁も通れたのだが、今はどこもセキュリティロックがかかってしまっている。抜けたいところだが、壁を登らないと無理そうだ。……ブランシュ、君はどうやって町の中に?」

「壁登りを…………」

「あの壁を…………? 君は凄いのだな」

「そうかな……う、ううん……」

 ミシェルに感心されてブランシュは何とも言えない複雑めいた気持ちを声に出す。己の過去と経歴を考えれば、その結果のこと。誇ってもいいことなのかも知れない、という気持ちもあれば結果に至る積み重ねを考えてしまうとどうにも……、凄いと言われても嬉しさが出て来ない。

 これは自分自身の問題なのでミシェルには関係のない話だ、とブランシュは考えを切り替える。

「ミシェルくんはどのくらいの期間、この町にいるのかい?」

「一週間ほど……」

「その時はまだ町は機能していたのか……?」

「……どうにか、という感じだった。町に足を踏み入れた時に妙な違和感があった」

「────そうか。話をしてくれてありがとう。ミシェルくん」

「少しでも役に立てたなら、俺も嬉しい。ブランシュ、君はどうするんだ?」

「魔法使いとして動くつもりだよ。……ミシェル、君は安全なところで隠れていてくれ。抜けられそうなら、町から抜けてくれて構わない」

 ブランシュはどうということもないと平然とミシェルに言った。

 魔法使いとして、この町の不穏な気配の正体を見極める。戦いになったとしても、戦い抜くまで。

 ブランシュの意志に、ミシェルが察しているかは分からない。彼の表情が動かないのでブランシュは答えを待つしかないのだが……。

 ミシェルは数分間、無言で考えてブランシュの顔を見つめる。

「…………いや。すまないが、ブランシュ……君と共に行きたい」

 数分間、無言で考えた彼の出した答えにブランシュは驚いて、目を見開いてしまった。

 …………そ、そうなの?

 ブランシュとしては驚嘆でさえある。魔法使いとして動く、という言葉から戦闘になれば勿論、対応する。それが分かっていて、ミシェルは言ってるのだろうか。

 危険を伴うのだ。

「戦闘になれば、私は戦う。……それでも?」

 はっきりと言って確認しておかなければいけない、とブランシュはミシェルに問う。

 二人の視線が互いの意志を示すように交差する。

 問われたミシェルは今度は考える素振りすら見せずに答えた。

「危険は承知だ。……君に少し、迷惑をかけるかも知れないが連れて行って欲しい」

「…………ミシェルくんは私を信じるというのかい?」

 まだ、知り合ったばかりだというのに。しかも、出逢い方も特殊な状況下ではない。ミシェルは連れて行って欲しい、とブランシュに言ってきたのだ。

 それは少しでもブランシュに対して、信頼を置くということでもある。ミシェルがこの町を支配していると思われるブラッディロードと繋がっているなら別だが。

 今の所、ミシェルの真意は分からない。それはミシェルから見たブランシュもそうだろう。

 …………どういうつもりなのか。

 出逢ったばかりの人物を無条件に信じるようなブランシュではないのだが……。

「──分かったよ。戦闘になったら、ミシェルくんのこと守るよ」

「…………。……出来れば、俺が君を守れたらいいのだが……」

「…………」

 ミシェルの言葉にブランシュは何度目かの驚愕の感情を味わう。

 …………私を、守る?

 今まで隊長ぐらいにしか言われなかった言葉を、出逢ったばかりの人に言われてブランシュの心に大きな衝撃が……。衝撃が心に直接体当たりをしてきたようだ。

 意識、したこともない言葉を言われた衝撃は本当に大きい。

「……ブランシュ、どうした?」

 ミシェルの言葉に呆然としているブランシュ。その様子を見て、ミシェルは不思議そうに首を傾げた。

 一応、ミシェルはブランシュに声をかける。

 …………あ。

 ブランシュは我に返ってミシェルの赤い瞳を見る。

「ごめん、ミシェルくん。……あ、ああ! そうだ、戦闘になったら私からなるべく離れないようにして欲しい」

 我に返ったブランシュはミシェルに謝罪し、戦闘になった時の頼みをした。

 彼が何者であろうとも、守ろうと決めたのであればブランシュは守る。

「……ああ、分かった。なるべく、君の足手纏いにならないように動く」

「──もしかしたら、激しい戦いになるかも知れない」

「…………君は、この町の不穏な気配に心当たりがあるのか?」

「…………」

 ブランシュの発言にミシェルは直球で質問をしてきた。無言のブランシュは両目を閉じる。

 …………ずっと、感じている。血の匂い。

 嗅ぎ慣れた血の匂い。それはブラッディロードの気配のようなもので、ブランシュにとっては珍しくもない。

 ミシェルはどうか分からないが……。

 今のところブランシュが見て、ミシェルからブラッディロードの気配を感じない。上手く隠している可能性はあるだろうけれども。

 …………何にせよ、二人との連絡は慎重にした方が良さそうだね。

 ブランシュの中にはまだミシェルへの疑念がある。それは相手もそうなのだろう。

 一緒に来たセイアとフランのことは現状、ミシェルには黙っておこうとブランシュは判断をする。

 だが、それとは別に聞いておこうと思い、ブランシュはミシェルに訊く。

「ミシェルくんは……ブラッディロードを知っているかい?」

「…………ブラッディロード。不老であり、永遠に等しい寿命を持つ不死に近い種族……、そして、強い力を持っている」

「──そうだね。それがブラッディロードと呼ばれる種族の主な特徴だね」

 一般常識で教わるブラッディロードという種族は不老の肉体、永遠に等しい寿命を持って長い年月を渡る。そしてミシェルの言う通り、ブラッディロードは強い力を持って世俗に縛られずに生きている。ブラッディロードは他の種族から脅威だと危険視されている。

 実際、かなりの問題を起こしているので擁護しようがない。

「……それが、この町の違和感の原因なのか?」

 ミシェルは素直にブランシュに訊く。ブランシュは小さく頷いて肯定する。

 一緒に来るというのであれば、ミシェルに知らせても良いだろう。

「原因は別、もしくは違う者が黒幕……という可能性もあるが、ブラッディロードが関与しているのは間違いなさそうだね」

 ブランシュの話を聞いて、ミシェルは短く。

「そうか」

 と、呟く。

 ブランシュはミシェルの表情や動作、目の動きを逃さずに見るが現在のところミシェルに不審な動きはない。それに敵意も……。

 …………不思議な人だね……。

 雰囲気もどこか神秘的で掴み所がないミシェルにブランシュは苦笑する。

「……ブランシュ?」

「ん……? ──ああ、気にしないでくれ。ミシェルくん、そろそろここを出ようかと思うがいいかい?」

「大丈夫だ」

「……よし、じゃあ行こうか」

 ブランシュは椅子から立ち上がる。

 ミシェルの前に歩き、ブランシュは手を差し伸ばした。その手をミシェルはじっくりと無表情で見つめ、どうしようか悩んでいるのが見て明らかだった。

 表情の変化は少ないが声を落とし、どこか哀しそうな眼差しをしたミシェルはブランシュに言う。

「────すまない」

 出来ない、手を握ることは……、と謝罪と共に断ってきたミシェルにブランシュは金色の目を細め、優しく微笑む。

「……私も無神経だった。気にしないでくれ」

 伸ばした手を引っ込めてブランシュは落ち着いた声音でミシェルに言った。

 互いにまだ、出逢ったばかりだとブランシュも内心で反省する。

 ミシェルは落ち込んでいるのか、下を向いて無言。気まずくなりそうだったのでブランシュはプテを呼ぶことにした。

「プテ」

 ブランシュに名前を呼ばれたプテは探検を楽しんでいたが、ブランシュの呼び出しに気づくとふよふよと飛びながら、ブランシュの目の前に来た。

 プテは身体を伸ばして能天気な声を出す。

「うにゃあ~? ブランシュ、出発するの?」

「────ああ、行こうと思う」

 ブランシュは自分よりも頭一つ分は背が低い、プテが頭に被った帽子を触る。ちょっと帽子がずり落ちているので直してやる。

 プテは嬉しそうな声を発する。

「ぷきゅ~! ありがとー! ブランシュ」

「プテ、全てを口にせずとも分かっていると思うけど、戦いの時はミシェルくんのことお願い」

 帽子を直してもらったプテは機嫌良さそうにブランシュに礼を言い、ブランシュはプテにミシェルのことを頼む。

 プテは目をぱちぱちと瞬きを繰り返して、すぐに理解したらしくにっこりと笑顔を浮かべた。

「は────い」

 手も挙げて、プテはブランシュに了承した。

 ブランシュはプテの手を握って、柔らかくてもちもちした感触を楽しむ。

「やめてよ────」

 僅かに放したり、握ったりをブランシュは繰り返しているのだが、プテは身体を左右に振って嫌がり抗議する。

 ブランシュは苦笑して止めると、ミシェルに声をかける。

「……行こうか」

 声をかけられたミシェルも小さく頷く。


 ●


 遠くを視るために作られた遠視用スコープを片目に着けたフランはセイアと共に町を囲う壁の頂上で町の全景を見ている。商業用の建物や集合住宅など町並みを視界に入れるとソルローアルに比べたら近代的である。フランは金色の目を細める。

「セイア、ここは……凄く明るいね。だけど、ブラッディロードの気配が濃い……」

「壁の頂上に来ると、ブラッディロードの気配と血の香りを強く、濃く感じます。フラン、ここからどうしますか」

「そうね……。ブランシュから連絡は来ていない……わよね」

「私の方にも、通信は……」

「…………、……あら? ブランシュとプテと────?」

 遠視用スコープでフランは建物から出てきたブランシュとプテ、ミシェルを確認して首を傾げる。

 …………あれ、誰かな?

 フランはブランシュが連れて歩いているピンク色の髪を鋭い眼差しで見つめた。

 ……………。

「…………私が何か言わなくても、ブランシュは気づいてるか」

 フランは呟く。フランの背後に立っているセイアは距離が離れすぎていると分からないので、フランに訊く。

「何か変化がありましたか?」

 セイアから訊かれたフランは答える。

「ブランシュが客人を連れているみたい。ここから見ると性別は不明、年齢も判別不可能、横顔がちらっと見えたけど綺麗な人だわ」

 フランの説明を聞いたセイアは首を傾げる。

「……つまり、町の人かどうかも分からない、ということですね」

「町の人……、そうね……」

「フラン?」

 何やら意味深げのフランの言葉にセイアは不思議そうな表情をする。

「セイア、ブルーシアに一応……連絡だけしてもらっていい?」

「……はい。ブランシュに同行者がいるってことだけで良いですか?」

「あと、町に入れた……ってことも」

「承知しました」

 画面を起動してセイアは慣れた手つきで操作してソルローアルの町にいるブルーシアへメッセージで報告する。

 送信されたメッセージを見てブルーシアがどういう反応するか分からないが、セイアは送信完了をフランに伝えた。

「フラン、完了しましたよ」

「ありがとう、セイア」

 完了と聞いてフランはセイアに向けてにっこりと微笑む。

「──さて、私達はどう動こうかな」

「現状、敵影は見えませんし感じられませんね……。息を潜めているのか、我々の存在がまだ気づかれず警戒されていない状態なのか……」

「出てくるなら叩くのみ……って思ってたんだけど、まだ時間がかかりそうね」

 フランは真剣な表情で静かな町並みを見つめる。灯りは点いているが人は見かけない。

 …………怯えているような感情が町のあちらこちらから…………。

 感じる。足下に誰かが縋りついているような……。深く思考すると、フランの周囲が真っ暗な闇に包まれる。

 …………あ。

 真っ白な腕が幾つも、闇の中から生えてきてフランの足に伸びていく。

 ……助けて……。

 ……たすけて……。

 苦しそうな声、悲しみに満ちた声。助けを求める誰かの声がフランの頭に直接聞こえてくる。

 フランはその声達を聞き、受け止めようと両目を閉じた。

 …………うん、終わらせるから。だから、待ってて。

 心に深く思うと、声と腕は見届けるつもりか引いていった。

 フランは両目を開く。視界に映っているのはスペースタウンの町並み。綺麗な灯りが点いている。

「…………フラン」

 セイアがフランの名前を静かな声音で呼ぶ。

 目尻に涙を浮かべたフランはその涙が一筋、頬を伝う。

「──大丈夫。戦闘になった場合は臨機応変に行こう。さ、私達も町の中に降りよう」

 フランは明るく微笑む。

 …………悲しみと寂しさ、嘆きが満ちたこの町の運命を、変えなければいけない。

 金色の瞳は町を射抜くように、その強い意志を秘めて。

 フランは拳を握り締めた。

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