表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

6.やって来た婚約者

 ラリエットは一人朝食を取りながら、部屋を取られた時のことを思い出していた。あの時は、異母妹の父に対する態度に驚き過ぎて声が出なかった。そして、父の異母妹に対する態度にも。自分は父にこんな風に我儘を言ったこともないし、父にこんな風に甘やかされたこともない。いつも不機嫌で傲慢な父しか知らない。


 言葉を失ったまま、ボケッと二人を見つめていると、父に抱き付いている異母妹がチラッとラリエットを見た。その顔は勝ち誇った顔だった。


 ラリエットはすぐに分かった。アリエルは別にこの部屋にこだわっていたわけではないのだろう。早速、父に自分の我儘を聞いてもらい、ラリエットよりも自分の方が優位だと知らしめたいだけだったのだ。


 小説の中だって、父はアリエルの為にもっといい部屋を用意していたのだ。それなのに、アリエルはラリエットの部屋がいいと言い、父にせがむ。そして、結果、ラリエットは元祖母の部屋へ移動することになるのだ。


(結局のところ、何処でもよかったのね、私の部屋でさえあれば・・・)


 お陰で現実のラリエットは本来の自分の部屋へ戻ることが出来た。異母妹の我儘のせいでこの二週間、部屋の引っ越しでバタバタだったが。


 どうやら、全てが完全に小説と一致するわけでは無さそうだ。それでも、最終的にはこの部屋を追い出されて屋根裏部屋に行くことになるだろう。それまでは、居心地の良いこの部屋で過ごす日々を大切にしよう。

 ラリエットはそう思いながら窓の外の景色を眺めた。



☆彡



 気楽な一人飯を終えた後、ラリエットはまた大切なことを一つ思い出した。


「そうだ! エドガー様に連絡しなきゃ!」


 エドガーとはラリエットの婚約者だ。彼はラリエットと同じ年齢で、オブライエン伯爵家の次男坊。将来、マーロウ子爵へ婿入りすることになっている。

 

 彼との婚約が決まったのは十五歳の時。僅か二年前だ。この国では貴族は幼い頃から婚約者がいることが珍しくない。しかし、ラリエットに関心のなかった父は億劫がって彼女の婚約者を探すことをしなかった。身体が弱く、自分の未来に不安を感じていた母は、せめて生きている間に娘を守る存在を見つけたいと、実家や親戚を頼って掴んだ縁談だった。


 家が決めた縁談と言え、エドガーとラリエットの関係は良好だった。今日も、本当ならばエドガーと街へ出かける約束をしていたのだ。その逢瀬を小説のラリエットはとても楽しみにしていた。もちろん、現実のラリエットだってとても楽しみにしていた。怪我をする前までは―――いや、前世を思い出す前までは・・・。


 ラリエットはエドガーに足を怪我したので会えないという内容を手紙にしたため、使いの者に託した。


 小説通りだったら、エドガーは二日後に花束を持って見舞いにやって来るはず。そして、異母妹のアリエルと初対面を果たすことになる。その時にエドガーの容姿にアリエルは一目惚れしてしまうのだ。

 元々、異母姉の物なら何でも奪いたくなる性分の彼女は、当然のごとく婚約者も奪おうと画策する。エドガーも最初こそはラリエットに義理立てし、彼女の誘惑から逃れようとするが、天真爛漫で可愛らしいアリエルの魅力には抗えず、結構あっさりと陥落する。その後すぐにラリエットとの婚約は破棄し、アリエルの婚約者になるのだ。父はこれを機にラリエットをマーロウ家の後継者から外し、アリエルを後継者としてしまう。

 そして、ここからが本番とばかりに、ラリエットの人生はコロコロと階段を転がり落ちるように転落していくのだ。


「はぁ~・・・」


 事前に分かっている転落人生。相変わらず気が重い。ついつい溜息が漏れてしまう。とにかく、今後襲い掛かる不幸に対して、出来るだけ心も身体も傷つかないように覚悟して臨まなければ。


 そんなことをぼんやりと考えていると、部屋の扉を激しくノックする音が聞こえたと思ったら、返事をする前にレイラが息を切らして入ってきた。


「お嬢様!」


「どうしたの?! レイラ?! 何かあったの?」


 慌てた様子のレイラを見て、ラリエットは驚いたように尋ねた。


「お嬢様! エドガー様がお見えになりました!」


「はい?」


「エドガー様がお嬢様のお手紙をお読みになって飛んでいらしたようです!」


「へ?」


 レイラの話だと、手紙を読んだエドガーは使いの者に返事を託すことなどせず、そのまま一緒にこの屋敷にやって来たとか。


「どうしましょう? ロバートさんには何と?」


 ロバートとは当家の執事だ。


「・・・。客間にお通しするように伝えて。私も着替えないと・・・」


「はい!」


 レイラは勢い良く返事をすると部屋から飛び出していった。


「何でエドガー様が・・・? 来るのは明後日のはずなのに・・・?」


 一人になったラリエットはポカンと独り言を呟いた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ