父の命日〜ジェヒョンside
ジェヒョンは、誰にも告げずに王宮の裏庭へ向かった。
ひんやりとした朝の空気。草を踏むたび、靴の下で水分を含んだ土がくぐもった音を立てる。
墓標の前に立ち尽くす。
その石は、父が死んだ翌朝、自分で静かに立てたものだ。名前も刻まれていない。
ジェヒョンは静かに跪き、頭を垂れた。
「父上……俺は……まだ答えを見つけられずにいます」
呟いた言葉は、風にさらわれ、空へと消えていく。
そのとき、足音が一つ。
振り返ると、ヘヨンが立っていた。
彼女の手には、小さな花束。控えめに咲く白い花が、朝の光を受けて揺れていた。
「ヘヨン様、どうしてここに?…ここには来てはなりません」
「ジェヒョンがそんな表情をしてどこかに向かったのが見えたから…もしかしてって。」
僕は、俯くことしかできない。彼女には、僕が護衛になった理由を明かしていない。
「もしかして、お父さん亡くなったの?」
「は、はい。」
「そうなのね…辛かったでしょう?…」
彼女の啜り泣く声が聞こえた。
「ヘヨン様…?どうして…?」
「あなたの気持ちを考えると辛くて…」
彼女は、僕の代わりに泣いてくれたように感じた。
彼女の表情を見ると、気づくと、僕も泣いていた。
僕は、あの日以来泣けていなかった。
彼女のおかけで泣くことができたのかもしれない。
二人の間に言葉はなかったけれど、沈黙は心地よく、温かかった。
父の死を通じて初めて、自分の痛みに誰かが触れてくれたような気がした。
僕は、小さく息をつき、ただ「ありがとうございます」とだけ呟いた。




