新たな時代と想いの余韻
それから数年が経った。
カルミヤ王国は、長く続いた専制と戦争の時代に幕を下ろし、新たな時代を迎えていた。
祭囃子が響く市場。農民たちは笑いながら収穫した作物を売り、子どもたちは泥だらけになって走り回る。
「聞いたか? 今年の年貢、また減るらしいぞ。」
「ほんまか? まったく、今の国王様は村人の声をよう聞いてくださるからなあ。」
「戦もないし、税も軽い。ええ国になったもんじゃ。」
人々の口から漏れる言葉は、喜びと穏やかさに満ちていた。
そんな中、農作業の手を止めた一人の青年が空を見上げた。
ウヨン――ストレリチア王国の生き残りにして、今の王。
しかしその表情には、笑みはなかった。
彼の心にあるのは、たった一つ。
(果たして、僕がしたことは正しかったのだろうか――)
「父の仇を取るために、僕は唯一の家族だった兄を失った。そして……兄を愛していたへヨン様も、後を追ったと聞く。僕が選んだ道は、誰の幸福も守れなかったのかもしれない。」
彼は街の外れにある小さな丘に立ち、目を閉じた。風が静かに髪をなでていく。
(それでも、この街で暮らす人々の笑顔を見て思うのだ。僕がしたことは、間違いではなかったと――そう信じたい。兄上……どうか、あの世で穏やかに暮らしていてください。)
彼の心の奥に、静かに響く歌があった。
ジェヒョンが好きだったあの旋律。どこからともなく、その歌声が響く。
――舞台が変わる。
花びらが舞う幻想の中、亡きジェヒョンとへヨンが並び、手を取り合って踊っている。
ジェヒョンは白い衣を纏い、微笑みながらへヨンに小さな花を手渡す。
へヨンはその花を両手で受け取り、そっと胸に抱く。
光が差し込む。2人の姿は、ゆっくりと空へ溶けていった。
ウヨンは静かに目を開ける。
「あの時、何が正しかったのか、今も分からない。けれど……これからの未来を作っていく。それが兄上と、へヨン様への贖いなのだと思う。」
そして彼は、再び土に手を伸ばした。
小さな芽が彼の手の下から顔を出す。
(生きていこう。僕の罪を、僕の願いを、未来に繋ぐために。)




