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トリカブト王国も動き出す

〈王宮・玉座の間 夜〉


 壁に掛けられた大地図の前で、トリカブト国王は腕を組み、静かにつぶやいた。


「皇太子と皇太子妃は、仲睦まじくやっておるようじゃのう」


 すぐ横に控えていた左大臣が頷く。


「はい。最近では、宮廷内でも“おふたりは本当にお似合いだ”という声が広まっております」


「……良いことではある」


 国王の声は一見穏やかだった。だが、その目は、冷たい炎を湛えていた。


「良いことではあるが、弊害も出てきそうな気がするのう」


 壁の地図を指でなぞる。カルミヤ王国と接する国境線。その向こうに広がる肥沃な平地を見据えながら、王は低く語った。


「我が軍の兵数は三万五千。新兵の訓練も順調に進んでおる。あと一歩――あと一歩でカルミヤ王国の土地を、我がものにできるかもしれぬ」


「……誠でございますか」


 左大臣の声が低く震える。


「では、やはりこの婚姻は“時間稼ぎ”――」


「そうだ。しかし――」


 国王は、ふと地図から目を離した。


「トアは反対するだろう。かの王女を、もはや“人質”ではなく、“妻”として見ておる」


 左大臣がわずかに眉をひそめる。


「しかし、トア様はこれまで、陛下と共にこの国の繁栄を目指しておられたはず。反対など……」


「以前のトアなら、な」


 国王は、ゆっくりと玉座に腰を下ろした。


「……ヘヨンという女の“笑顔”に、あやつは心を許し始めておる。それが、“弱さ”を生むかもしれん」


「…………」


「何か、良い手はないかのう。ヘヨンがいる限り、戦は始められぬ。あの女を……どうにかして排除せねばならぬかもしれん」

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