トリカブト国王の息子への歪んだ愛
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〈その夜、宮殿の塔の上にて〉
高い塔の陰、重厚な石柱の影から、一人の男が中庭を見下ろしていた。
トリカブト国王。
彼の目の先には、寄り添うように噴水の縁に座る、トアとヘヨンの姿があった。
遠くて言葉までは届かぬ。だが、王の眼は“感情”を見逃さなかった。
――微笑み。手を握る仕草。
それは明らかに、“戦略”ではなく“感情”の発露だった。
「……ふむ」
王はわずかに唇の端を吊り上げた。
「人の心というものは、こうも簡単に脆い」
その声には、呆れでも怒りでもなく、ただ冷徹な“興味”だけが宿っていた。
「息子よ……お前が“情”を持つというのなら、それすらも私の駒として使うまでだ」
月光が彼の瞳を淡く照らしていたが、その光には何のぬくもりもなかった。
そして背後に現れる、ひとりの影――王妃。
「見ていたのですね」
「当然だ。“王族の婚姻”とは、単なる夫婦の話ではない。国家を動かすための装置なのだからな」
「……あの子は、私たちよりも先に“愛”に染まるかもしれませんよ」
「それもまた“駒の役割”次第だ。…だが、もし“愛に溺れる駒”になれば――」
そこで国王は、ふっと笑った。
「捨てるだけのことだ」




