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思いを通じ合わせる2人

〈王宮・中庭の小径〉


 夕暮れの空が、茜色に染まっていく。

 トアとへヨンは、人気のない中庭を並んで歩いていた。

 そよ風が吹き抜け、木々の葉がカサリと音を立てる。


 しばらく、沈黙が続いていた。

 けれど、それは居心地の悪いものではなかった。


「……トア様」


 へヨンがふと足を止め、視線を落としたまま言った。


「もし……もしもですが。

 信じていたものに、裏切られたとしたら……あなたなら、どうしますか?」


 トアは歩を止め、へヨンの横顔を見つめた。

 その目は揺れていた。けれど、涙はない。ただ、痛みがあった。


「それは……人でしょうか? 理想でしょうか?」


「……答えは、まだ私の中でも分かりません。

 ただ、信じていたはずのものが、少しずつ……崩れていくような気がして」


 トアはしばらく黙っていた。

 そして、静かに言葉を紡いだ。


「私はかつて、母を失いました。

 戦を止めようとした母は、裏切り者と呼ばれて、父に……」


 へヨンははっとして、トアを見上げた。


「そのとき私は、“優しさは国を滅ぼす”と教えられました。

 だからずっと、信じていたものが壊れていくのを見て、黙って耐えるしかなかった」


 トアの声は、まるで自分に言い聞かせるようだった。


「けれど、あなたと出会ってから……少しずつ、変わってきた気がします。

 “信じる”ことは怖い。でも……“信じてくれる人”がいると、人は強くなれるのだと」


 へヨンの瞳に、光が戻る。


「……ありがとう、トア様」


「もしあなたが、何かに傷つくことがあっても。

 私はあなたを責めません。

 ただ、あなたの隣にいさせてください。それが……今の私の、望みです」


 風が、二人の間を優しく撫でた。


 へヨンはそっと頷き、トアの袖を掴んだ。


「私も……あなたの隣にいたい。

 生まれも国も違っても、こんなふうに思えることがあるなんて、思いませんでした」


 その言葉に、トアは微笑んだ。

 互いの心が、少しずつ近づいている。確かにそう思えた。


 ――でも、まだ知らない。

 この温もりの裏で、戦の火種が燃え上がりつつあることを。

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